お茶の水で音源を物色し、ぶらぶら街を歩きながら人の流れなんかを眺めたりして、疲れると喫茶店に入りコーヒーを飲む。まさにエセ文化人な生活を送ってみたりしたわけですが、最後に行き着く喫茶店メイド喫茶では、どうにも格好がつかない。
秋葉原には多数の怪しい店があって、そこではゲームやら本やらオーディオやら宅録機材やらいろいろ興味深いものがたくさん売られている。でも僕はそこに進んで足を踏み入れようとは思わない。客層が気持ち悪すぎるからだ。そしてその気持ち悪すぎる客層に微塵の違和感もなく溶け込んでしまいそうな気持ち悪すぎる自分を確認するのが嫌なのだ。なのにメイド喫茶とは、どうも矛盾が生じているように思える。
しかし、僕が行った「キュアメイド」というお店は、純粋に良い場所だと思う。もちろん秋葉原のちょっと入り組んだ路地にあるし、いかがわしい店舗が多数含まれるビルの六階に位置しているので、多少の偏見をもたれるのは仕方ないと思うけれど、僕はあの店の雰囲気がとても好きだ。今日は平日ということもあって、客は僕とあと一人くらいしかいなかった。観葉植物に囲まれ、控えめの音量で流されるジャズやソウルが心地よく響き、落ち着いた物腰のウェイトレスが黙々と仕事をしている。内装も趣味の良いシックな色で統一され、ビルの六階という位置も幸いし、窓からはドロドロしたヲタクたちなど全く見えず、ただ青い空が広がるばかりである。僕はそこでコーヒーを飲み(無論、味は悪くない)、アーヴィングの「スケッチ・ブック」を読みながら時間を潰す。メイド服に身を包んだ女性が何も言わずに灰皿を取り替えてくれる。僕はそこでしばし物語の世界に体をまかす。とてもリラックスできる。


何が言いたいのかというと、「キュアメイド」に限ってはヲタ御用達ではなく普通の人も楽しめる普通の喫茶店なので、僕のことをオタクよわばりしないで下さい、というごく自己中心的な主張なのであった。興味のある方はどうぞ。言ってくれれば案内しますよ。ちなみに中野にある「クラシック」という喫茶店(あれは喫茶店といっていいものか判断がつきかねるが)もオススメです。死ぬまでに一回は行くべきだと思います。人生観が変わりますよ。