THE KINKS 『 THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY』(ASIN:B00000899Z)

キンクス通算7枚目、1968年に発売されたアルバム。レコーディング中のどたばたやプロモーション不足のせいで商業的に大失敗したらしいです。イギリス・アメリカともにチャート・インしてないとか(アメリカのトップ200にも入ってないっつーのはひどすぎる)。なんと勿体無い。一回聴けばこのアルバムがレイ・デイヴィス丸出しの名盤であることはすぐわかるというのに。
「村の緑を守ろうぜ委員会」という、和訳するとこの上なくダサくなるこの作品は、その名のとおり「緑を守ろう」というメッセージを発するコンセプト・アルバムで、「英国の片田舎で暮らす人々の生活や自然の美しさ、失われつつある古き良き時代の慣習や情景などを歌」っています(加藤ひさし氏のライナー・ノーツから抜粋)。このことを念頭に置いて、軽快なフォーク・サウンドにのせた優しいメロディーラインを聴いてると、確かにイギリスの田園風景がアタマに浮かんできます。まあその映像はうろ覚えのイメージによって構築された適当なものなんですけどね。とにかく、そのようなコンセプトにのっとって作られたわけですから、音や歌詞なんかは全て英国的。ブリティッシュ、という言葉はあんまり合わないな。英国的、という言葉がこのアルバムには似合う。なのでアメリカン・ハード・ロックが好きな人には120%向きません。
「You really got me」などに見られるハードさはなりを潜めてますが、僕はこういう柔らかい雰囲気のキンクスも好きです。おとといの日記で書きましたが、キンクスザ・フーと同じように初期のモッズ的なノリノリ音楽ばかりに評価が集中してしまい、コンセプトアルバム時代に関しては「あんなのキンクスじゃない」なんて声もたまに聞こえてくるほど敬遠されちゃっています。もしあなたがキンクスの1stだけ持って満足してしまっているとしたら、それは勿体無いですよ。まだまだ素晴らしいアルバムが沢山あるのですから。未聴の名盤があるということは、この世で一、二を争うくらい幸せなことだと思います。僕はまだまだ駆け出しの音楽ファンですから、楽しみがいっぱい残っていて幸せですよ。

余談。キンクスにしろフーにしろ、活動期間が長いロックバンドは最初に何を聴いていいのか困りますよね。キャリアが長いということは、音楽性も当然変わっているわけで。最初に買ったアルバムが性にあわなくても、他の作品は大ヒットだった、なんてこともザラです。中古屋に行くと様々なエディションでアルバムが出ているし、何より中古だから全ての作品が網羅されてるとは限らない。その辺にこれらのバンドが敬遠される一因があるのかな、と思っています。その点ビートルズは7年足らずですから、集めるのが楽々。