MO'SOME TONEBENDER『 HELLO 』(ASIN:B00005NS1T)

mikadiri2003-11-24


周りがファイナルファンタジー7の話で盛り上がっている中、僕はFF5ジョブチェンジシステムの素晴らしさについて滔々と語っていた。皆がくるりの『図鑑』についていろいろ論議を交わしている横で、僕は「さよなら〜ストレンジャ〜」と鼻歌を口ずさんでいた。何が言いたいのかというと、僕は基本的に人より出足が遅いのだ。
で、モーサムトーンベンダーの『HELLO』である。つい先日に新作『triggar happy』が出たばかりだというのに、二年前のメジャーデビュー作について文章を書こうとしている僕。冒頭の言い訳に免じてどうか許して欲しい。
そもそもモーサムを知ったのは僕が高校時代のロッキング・オン信者だった頃のことだ。山崎洋一郎か誰かが『DAWN ROCK』についてのレビューを書いていて、それは「ヤベー」という一言で事足りるくらい内容の薄いものだったのだけれど、若かりし頃の僕はロッキング・オン流の編集者主観丸出しレトリック文章に感化されてしまい、タワーレコードで売られているのを見て大して躊躇せずに購入したのである。再生して5分くらい経つと、そこには「ヤベー」と呟く僕がいた。
とにかく「ヤベー」という他ないのである。ロッキング・オンの気持ちが良くわかった。モーサムは「ヤベー」奴らだ。ただギターのディストーション具合が、とか、ボーカルの叫び具合が、とか、ベーシストの股間が、とかそういう話ではない。空気だ。ギター、ベース、ドラムという三つの楽器の間に生じる空気が僕を「ヤベー」状態にさせる。ある寒い冬の朝、髪の長い根暗な男がブツブツ世迷言をほざきながら道を歩いていて、急に「寒いじゃねえかクソ!」と逆ギレする瞬間、それをこのバンドは捉えている。
で、やっと本作の話になる。メジャーデビューしたクレイジーバンドの多くが角を削り取られてクレバーバンドに様変わりする中で、彼らは違った。M1の「冷たいコード」を聴いただけでそれはわかる。三人が三人とも狂っている。元の音がわからなくなるほどゲインをあげた百々のギター、有り得ないほどの速さで刻まれる武井のベース、ライドシンバルやフロアタムを力任せにぶち叩く藤田のドラム。メジャーに進出したバンドのアルバムを聴くとだいたい期待はずれに終わるものだが、『HELLO』を聴いて2分くらい経ったあと、僕はこれまた「ヤベー」と呟いていたのである。
他にも「HigH」というとんでもない曲もあり、全体的にメロディーも聴きやすいので、モーサムを聴いたみたい人には入りやすいアルバムかもしれない。ここまで文章を読んだ猛者の人たちは僕の作為的な、かつ作り話的な語りに不信感を抱いているかもしれないが、変に先入観を持たずに聴いて欲しい。きっと貴方も「ヤベー」と呟くはず。そして願わくばライブを見に行って欲しい。きっと貴方は「ヤベー」と呟く暇すら与えられないはずだ。モーサムトーンベンダーに予定調和は無い。