卒論狂騒曲、あるいは「秒速40メートルで母は」

おお、はてなダイアリーの更新を休んだのは相当久しぶりではないでしょうか。こんな暇人に見える僕にも忙しい時というのはごく稀にですがありまして、昨日一昨日とその忙しさがタッグを組んでクロス・ボンバーをかましてきやがりまして、僕は息も絶え絶えに「コー・ホー」と各地を駆けずり回っていたのであります。
それにしても卒業論文の口頭試問の日時を忘れていた、というのは僕自身驚きでありました。昨日のことです。夜間のアルバイトが終わり、朝の七時半に連続テレビ小説を見ながらごはんを喰らっていると、そのとき思い出したかのように母が「そういえばアンタ、学校があるとかなんとか言ってなかった?」と言いまして、寝不足で機嫌の悪かった僕は「あ? うるせえな」などと第二次反抗期にある中学生のような返答をしていたのですが、ふ、と何かを忘れているような気がして、鮭フレークを混ぜた米飯を頬張りながら考えてみると、なんと今日は卒論の口答試験の日だったのです。「アバー!」叫ぶとともに、鮭フレークと米粒の混じった物体が秒速40メートルの速さで口から飛びだし、正面にいたママンの顔面に直撃、「アンタあ何しやがるのよ! 目に入ったじゃないの!」とまあ当然彼女は怒りました。怒りましたがそんなのは聞いていられません。現在七時三十五分、大学集合は九時ちょうど、そして自宅から都内某大学までの所要時間は約一時間二十分。遅れれば、卒論の単位はなし、必然的に卒業は無理、ということは留年、つまり「留年したらアンタの鼻を潰すわよ」と常日頃から呪詛のように呟き続けてきたママンに鼻を潰される。
急がねば! 僕は残った味噌汁を一気飲みし、あまりの熱さに舌が火傷しそうになってブハアと吐き出し、ワカメの絡まった豆腐が秒速40メートルの速さで口から飛び出し、正面にいたママンの顔面に直撃、「いい加減にしなさいよコノヤロウ!」とまあ当然彼女は怒りました。怒りましたがそんなのは聞いていられません。「ごちそうさま!」と食事を打ち切るやいなや顔を洗い、コートを羽織り、マフラーを巻き、強く巻きすぎて窒息しそうになり、ニ、三秒呼吸を整え、家を出たのであります。


で、なんとか試験には間に合い、事なきを得ました。口頭試問自体はデッチ上げで乗りきりです。評論ならばともかく、僕の場合卒論が小説ですから、そう深くは突っ込まれませんでした。「これはなんのメタファーなのか」とか「何を書きたかったのか」とかいうお決まりの質問を投げかけられ、その場で考えた設定を並べ立てるだけ。教授は煙に巻かれたような表情を浮かべていましたけど、「うーん、わけがわからない」とおっしゃっておりましたから、おそらく卒論は通ると思います。


いつもは鬱陶しいだけの母のお節介に、今日ばかりは感謝しなければいけませんね。今夜、思いっきり豆を彼女めがけて投げまくり、僕の感謝の気持ちを伝えようと思います。