HUMMING BIRD 『 UNSWEET 』

mikadiri2004-06-04

2000年に惜しまれつつも解散してしまったHUMMING BIRD、オリジナルアルバムとしては最後の作品です。このはてなダイアリーを昔から読んでくださっている方はご存知かもしれませんが、彼らは不遇のバンドでした。いい曲を書いているし、演奏力もしっかりしているし、ボーカルも素晴らしい――でも売れない。不思議ですね、この国は。まあそんなバンドは山ほどいるんでしょうけれど。
メンバーはVo.Gの福山芳樹、Vo.Baの古屋敏之、Dr.の麻生祥一郎の三人。60〜70年代ロックの影響がうかがわれるハード・ロックサウンドを聴かせてくれます。それだけならばそれこそ凡百のバンドと変わりありませんが、HUMMING BIRDは一味違って、「歌」というものにかなり意識的な音作りをしています。フェイバリット・アーティストにクイーン、ビーチ・ボーイズザ・フービートルズなどをあげるだけあって、そのハーモニーは美しいの一言。そしてメイン・ボーカル福山芳樹の少年のような、しかし大人の落ち着きも同居した伸びのある歌声。この二つがドッキングしたら? ええ、素晴らしいに決まってます。
M1「DYNAMITE EXPLOSION」はアニメ「マクロス7」に提供された曲です。ダイナマイトの爆発なわけですから、とにかくバンドサウンドが気持ちいい一曲。
M2「STARLIGHT DREAM」。これもハミングバード節全開の、ポップなメロディー&ロックなサウンド。「どこかで聴いたことあるような、でもやっぱり聴いたことのないような」メロディーなんですが、こういう曲を作るってのはなかなか出来るもんじゃありませんよ。
M3「To Heart」。これも「マクロス7」提供曲。スロー・テンポのバラードです。この曲のメロディーがとんでもなく好きで、いつかは自分もこんな曲を作ってみたいなあ、といつも思います。歌詞は「マクロス7」版のほうが数段良かったような気がするんですが、まあそれは置いておいて。決してエロゲーの歌じゃないですよ?
M7「LOOKIN' FOR THE RAINBOW」。半ばあたりで聴こえてくるシンセサイザーの使い方は、まんまザ・フーの「WON'T GET FOOL AGAIN」のアレですな。ニヤニヤできます。こういった「ロックの定番」フレーズがちらほら出てくるのも楽しい。
M8「しあわせな男」。この曲はベースの古屋さんがボーカルをとっています(基本的に作曲した人が歌をうたう。ビートルズ方式ですな)。そのビートルズ「GET BACK」で聴けるようなリズム(ダッダカダッダカって感じのスネア・プレイ)にパワーコードのリフを載せ、ずんずん突き進む。美しいコーラスも忘れない。これは名曲です。
M9「名もなき果ての街で」。これまた古屋さん作曲&ボーカル。そしてこれまた名曲。ギターがアルペジオでフェイド・インし、ベースが絡んでくるイントロは、「これから始まるぞ」的雰囲気がぷんぷんにじみ出てきます。ゆっくりと、ゆっくりと盛り上がっていき、中盤あたりで轟音ギター&ドラム爆発。震えますよ。こういっちゃあなんですが、クイーン方式のハード・ロック・バラード。だがそのやり方って、やっぱりカッコイイんですよね。



とまあ長々と書きましたけど(いつも長々と書いてますけど)、このアルバムは多くの人に聴いてもらいたいですね。捨て曲のない、素晴らしい一枚です。ただ惜しむらくは、歌詞に若干の難点があること。歌詞に重きを置いて音楽を聴く人(なんか『茶菓子を食うために抹茶を飲む人』みたいな違和感)は、引っかかる部分もあるかもしれない。しかしそれ以上にサウンドが魅力的なので、僕はあまり気にならないんですけどね。唯一無二といっていい福山芳樹さんの歌、三人のハーモニー、そして爆音バンド・アンサンブル。これらが融合した、まさに『UNSWEET』――一筋縄じゃいかないハミングバードサウンドを、是非是非一回聴いていただきたい。

参考までに、アルバム全曲が試聴できるページを。
http://www.jvcmusic.co.jp/m-serve/artist/hum/hum-cd.html#60350