非常に、完全に私的文章観

村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を読み返しているのですけど(特に深い意味はなく、夏になると読みたくなる。もしくはストリーキングの資料用)、登場人物の一人がちょっと面白いことを言ってて、それが僕の文章を綴る姿勢と妙にマッチしていたものですから、ちょっと引用します。

「別に特に滑稽なことはやらなくていいんだ。ごく普通に振る舞っていればいい。それだけでけっこうおかしい。そういう演技には興味があるよ。そういうタイプの俳優は今の日本にはいないからね。コメディーとなると大抵の人間はオーバー・アクトする。僕のやりたいのはその逆なんだ。何も演じない」

これですよこれ。オーバー・アクトする必要なんてないんですよ。真顔で突っ立ってればそれだけで笑えるのです。この台詞は喜劇について冗談めかして言及したものですけど、まさに僕が文章においてやろうとしていることを言い当ててます。何も演じない――つまり何も書かない。もちろんそれは比喩的表現ですが(何も書かなかったらそれはただの白紙だ)、僕は「何も書かない」ことにより「何か」を生み出そうと四苦八苦しているわけです。もちろん、ピロプレを読んでくださっている方はご存知だとは思いますが、その試みが成功したことはありません。成功した、と“僕が思っている”ことはけっこうありますが、そういう時はかなりの確率でスルーされます。まだまだまだまだ修行が必要のようです。あまり生きていくうえで役に立たない修行。
先日ピロプレにアップした『世界一の料理人とラジオ体操第二』という文章、あれは僕の理想にけっこう近いものが書けたなあ、と内心ムフンムフンしてたんですが、うん、まあ当然というか、不評でした。不評っていうか無評でした。ムヒョー! と『ひとりタワーブリッジ』(つまりただのブリッジ)を決めてしまうくらい落ち込んでいたんですが、昨日、サイトの存在を知っているバイト先の先輩に「あれは良かった」的なことを言われまして、とっても即物的に嬉しかったです。僕は間違ってなかった。