チャーハンと死

母方の爺様がなかなか危険な状態のようでして、母が「自分でもわからないうちに」高菜チャーハンを作りすぎてしまったらしく、それを処理するためにちょっと実家へ戻ってました。高菜は嫌いなんですけど、包丁を持った母に「食え」と言われて食わないわけにもいきませんし、一応平らげました。きゅうりチャーハンよりマシです。食後、茶を飲んで一息を入れる間もなく母が爺様に対して悪口などをルール無視の七並べみたいにガンガンと並べ立てまして、「おいおい貴女の父親ですよ」と僕はたまらず突っ込んだのですけど、高菜臭い母は聞く耳を持ちません。ま、危険な状態とはいっても病気とかではなく老衰によるものですから、ある意味覚悟はできているわけで、だからそこ母の口から「小便ジジイ」などという過激ワードが乱発されるのですけど。むしろ彼女は安堵の表情すら浮かべていました。これで「解放される」、と。そして冷凍庫からあずきアイスバーをおもむろに取り出し、半分あたりまでかじったところで「ア、アタシ何食ってんの!」と仰天したりしてました。爺様という人間の命と、高菜チャーハンと、あずきアイスバー。人の死にはいろいろな重さがある。