ZAZEN BOYS『ZAZEN BOYSⅡ』

mikadiri2004-09-01

前作から8ヶ月という短いスパンでリリースされた、タイトルともどもレッド・ツェッペリン状態丸出しなZAZEN BOYSのセカンドアルバム。ナンバーガール解散後、向井秀徳がどのような音楽を鳴らすのかというところに注目が集まった前作は、もう念仏の念仏による念仏のためのアルバムみたいな感じで、麻薬的な魅力によって虜になってしまうファンは続出したものの、「ナンバーガール的」なサウンドを求めていた人々をドン引きさせる内容でした。さすがにやりすぎたと思ったのでしょうか、今作はかなり耳あたりが良くなっています。聴きやすい。椎名林檎をコーラスに起用するあたりにも、聴かせようとする意志が感じられますね。もちろん前作に聴かせようとする意志がなかった、といってるわけじゃありません。数多くのライブをこなしてバンドの足場が固まった結果、周りを見る余裕が出てきたということなのでしょう。
しかし聴きやすいからといって油断は禁物です。オルタナとかソウルとかニューウェイブとか念仏とか、とにかく多種多様な音楽性がこのアルバムには詰め込まれており、その濃縮っぷりはカルピスもお手上げで、僕らはそれを薄めることなく聴かねばならんのです。濃いですよ。しかし飲みごたえが――“呑み”ごたえと書くべきでしょうか――あります。
歌詞のほうは相変わらず「冷凍都市の暮らしあいつ姿くらまし」「繰り返される諸行無常」「蘇る性的衝動」な感じで、もちろんこれだけではないのですけど、今作で登場したフレーズも基本的にこれらの言葉を言い換えただけな感じで、根っこでは変わってません(安眠棒という言葉はかなり革新的だとは思う)。いい加減飽きた、と否定的な意見を言う方ももちろんいらっしゃることでしょう。でも僕はこれをポジティブに解釈し、ZAZEN BOYSが純粋に音楽的である為に、あえて作詞面での変化を捨てた、ととらえました。歌詞はいいからリズムを聴け、というミュージシャンシップのあらわれとでもいうのでしょうか。だから後述の全曲感想でもあまり歌詞については触れてません。意識的に避けたわけでなく、バンド・サウンドの存在感があまりに大きかったため、気にする余裕がなかったというのが正直な理由です。とにかくこのアルバムでZAZEN BOYSは音楽的に大きく前進、いや前進という言い方はおかしいな、音楽的包容力を高めたというべきでしょうか、とにかく成長しました。捨て曲らしきものがちらほら見かけられるものの、名盤といって差し支えありません。万人にオススメ。