『ZAZEN BOYSⅡ』全曲感想

さ、空気を読まずに書きなぐりまくりますよ。

M-1 ZAZEN BO
いきなり80年代丸出しの変化球、しかもデッド・ボール。控えめに挿入されるベースがクールですね。45秒足らずの曲ですが、「なんかこのアルバムは変なことになってるぞ」とリスナーに思わせるには充分です。
M-2 CRAZY DAYS CRAZY FEELING
そこはかとなくコーラスのかかったカッコイイギターリフ。この始まり方もこれまでの座禅から見るとかなり変化球なのですけど、この曲でPVが作られるあたり、今のZAZEN BOYSにとっては直球なのでしょう。ドラムのビート、ベースのうねり具合、ギターのバッキング、どれをとってもダンサブル。文句なしに名曲です。椎名林檎さんのコーラスも、曲調に合っていて実に良い。ライブで聴いた吉兼カシオマンのコーラスも捨てがたい魅力を持ってましたが(笑)。聴いてると身体が勝手に横揺れを始めてしまいます。
M-3 NO TIME
ギター、ベース、ドラム、それぞれ人の目なんて気にせずに限界まで酔っ払って馬鹿踊りをしているような曲。それでいてちゃんと辻褄があってるのだから凄い。
M-4 安眠棒
これは皆さんびっくりしたことと思います。僕はびっくりしました。イントロのブレイク連発から、「YURETA YURETA YURETA」にも見られるズレ気味のビート、ダンスナンバー的なポップなキーボード(これが一番びっくりした)、つんのめるように動き回るベース。これ人間がやる曲じゃないよ、と思わず笑ってしまいました。この曲にノろうとすると、カクカクとロボットダンスが出来上がってしまう、そんなビート。揺れてますよこれは。それはさておき、M-2だと効果的だった椎名林檎のコーラスですが、この曲においてはどうなのかな、と思いました。邪魔っていうかなんというか。
M-5 You make me feel so bad
タイトルからもある程度想像できるかもしれませんけど、向井秀徳的ソウル・ナンバー。カーティス・メイフィールドばり――というか単に声をひっくり返してるだけですが――ファルセット・ボイス。このエセカーティスと椎名林檎の声は実にマッチしてますね。座禅メンバーによるやる気のないコーラスも100点です。この曲単体ではそんなに目立たないんですけど、アルバムの流れの中で存在感を示す曲です。「安眠棒」から後述の「黒い下着」までの流れは素晴らしい。
M-6 COLD BEAT
これまた人間がやる曲じゃない曲が出てきました。このアルバムでは聴きやすい曲が多い反面、濃い曲はとことん濃い。とくにリズムの面でとんでもないことになってますね。「COLD BEAT」とタイトルが示すようにビート感で勝負してます。これっぽっちもノれるビートじゃありません。安眠棒がロボットダンスならば、COLD BEATは、はしかの発作でしょう。震える。
M-7 黒い下着
もろナンバーガールな曲。「待ってました!」と歓喜の声をあげる人もいるのではないでしょうか。ギターリフで始まり、フィードバックが重なり、そしてバンド全体がガッと来る――サウンド・構成ともどもまあ正攻法のギターロックですね。うむ、本当にナンバーガールだ。普通に良い。
M-8 HARAHETTA
右チャンネルから聴こえてくる吉兼ギターのフレーズが印象的な曲。これもナンバーガール的と言えなくもないのでしょうか。“くらやみの夜中 感覚がうるせえ 鳴っている 腹の中が鳴っている”これ、まさに今の僕の状態で、「うるせえ」という投げやりな表現が妙にしっくりきました。独身男性にはなかなか響くのではないでしょうか?
M-9 ZAZEN BOⅡ
まあインターバル的な打ち込みナンバーで、唄ってる内容もいつもどおりで、うむ、取り立てて書くことはないです。繰り返される「繰り返される諸行無常」。
M-10 最前線
アヒト・イナザワの大胆なドラムが強く印象に残りますね。「開戦前夜のこのカンジ」、とまた同じ事を連呼してますが、これはむしろ言葉の印象を薄めて楽器の音を際立たせようとする手法なんでしょうかね。このアルバム全体にいえることですが、僕は歌詞とかほとんど気にせず演奏ばっかり聴いてます。言葉より強いものがそこに感じられるからです。
M-11 SEKARASIKA
「U! HA! セカラシ!」が小気味良いです。音階的には一本調子なのに不思議と飽きませんね。後半におけるアヒト・イナザワのオープン・ハイハット、もうこれは彼の持ち味と言っていいかもしれません。「SASU-YOU」なんかでも同じようなパターンを聴けますが、実に渋く、カッコイイ。すいません、オープン・ハイハットマニアで。
M-12 DAIGAKUSEI
これはどうなんでしょうね。たぶん、というか絶対意図的なんでしょうけど、いつにもまして向井秀徳が音痴で、それにつられてギターまで音痴になっちゃってる。これはどういう効果を狙ったのでしょうか。「腹痛で死ぬ」大学生をヘニョヘニョギターで表現したのでしょうか? 今のところ、わからん。す、捨て曲? もしくはネタ。
M-13 CHIE Chan's Landscape
水槽の中を漂うような音作りの向井(左チャンネル寄り)ギターがイカす。イカすって何時代の言葉だ。まあとにかくイカす。狂った情景描写もイカす。曲的にはそんなに特筆すべきところもないでしょうか。
M-14 6本の狂ったハガネの振動
ZAZEN BOYSⅡ』、私的ベスト・トラック。とんでもなくカッコイイ。正直タイトル見た段階ではこれっぽっちも期待してなかったんですが、ライブで聴いたときにノックアウトされ、こうしてスタジオ音源でも魅了されてしまいました。とにかく踊れる。ダンサブル。気持ちいい。今なら北島康介の気持ちもわかる。気持ちいい。ベースがもろディスコ調ですね。身体が揺れてしまいます。向井ギターもチャキチャキな気持ちよさ。ボイス・チェンジャーの猫ボイスも椎名林檎なんかより座禅に合ってるし、アヒトのオープン・ハイハットも冴えてるし、――いやあごめんなさい、一旦気に入ってしまうとべた褒めしてしまうんですよ。とにかくカッコイイ曲です。
M-15 MY CRAZY FEELING
ZAZEN BOYS流ソウル・バラード。8分の6拍子ってところにもかなりびっくりしましたが、後半の盛り上がり具合にただただ流されそうになるのみですね。とんでもない迫力。ブラック・ミュージックを意識していたZAZEN BOYSとしては順当な流れなのかもしれませんが、やはりファンは驚きますよ。向井の絶叫には圧倒されますが、演奏自体はわりとスタンダードな感じで、そのギャップがまたたまらぬ。 前作の「自問自答」とはまた違った形での自問自答ですね。こっちのほうが音楽的に洗練されていて好きです。ラストを飾るにふさわしい名曲。