the pillows『Walkin' On The Spiral』(ASIN:B000244SIO)

mikadiri2004-09-15

ザ・ピロウズの結成から現在まで15年の歴史を振りかえるというコンセプトのドキュメンタリー・フィルム。ファン以外の方が見てもさっぱり面白くないといってもよいほどマニアックな内容ですけど、逆に言えばピロウズファンは絶対に買ったほうがいいということ。正直、15周年記念日ライブを迎える前に、このフィルムを見ておいて良かったです。彼らの積み重ねてきた歴史っていうんですか、クサイ言い方ですけれど、バンドに懸ける「思い」ってものがビンビンと伝わってきましたよ。 「15年の歴史がまるわかり」と銘打ってありますが、実際はバンド結成から苦難の日々を経て現在の「スタンス」――つまり「ストレンジカメレオン」以降のシンプルなギターロック路線――を獲得するまでの記録ですね。『LITTLE BUSTERS』以降は見事にはしょられてます。これはこれで、バンドの歩みってものがわかりやすくなっていて良いと思いますね。
全体の流れはファンにとっては周知のものばかりなので、まあそれほど驚くような新事実はないんですが、映像自体は初見のものが多く、相当楽しめます(繰り返しますが、ファンには、ね)。若い頃のメンバー、というか山中さわおを見るとついつい頬が緩んでしまう。1stアルバム『パントマイム』のジャケットについて、先日僕は「笑える」と書きましたけど、ドラムの佐藤シンイチロウさんも「なんであんなことやったんだっていう感じのジャケット」みたいなことを言ってて、さらに笑った。色々な面で迷走していたことをメンバーも自覚していたわけですね。個人的には初期のライブをもう少しきちんと収録して欲しかった。ちょいと語りが挿入されすぎかなあ、というかさわお喋りすぎだろお前、というかその前髪どうにかしろさわおというか。まあいいんですけどね。「ENERGY」をフルで観たかったのは僕だけではあるまい。
まあ「喋りすぎだ」と今書きましたけど、さわおだけでなく色々な人が出てて、ピロウズを裏で支えてきた人々の話がたくさん聴けたので、バンド映像自体は少ないながらも、結果的にドキュメンタリーフィルムとしていい方向に出来上がったのではないかと思います。P.A小林氏、マネージャー三浦氏(ライブ会場で何回もニアミスしてたが、この人がマネだったのか。ようやく顔と名前が一致した)、バッドミュージック社長、中村貴子さん(僕の中のイメージと違って綺麗な方でした)、『90's my life』などでライナーを書いている笹川氏などなど。個人的には中込智子さんの話も聞きたかったんですけど、贅沢は言うまい。なんだかんだいってピロウズは多くの人に支えられてここまで来れたのだなあ、と実感できます。
メンバーによるコメントも、かなり本音を晒している(と思う)ので、聞きごたえがあります。ギター真鍋氏がのっけから「ロックンロールってのがバンドのキーワードだったんだけど、僕は根底にロックンロールがないギタリストだ」とか「楽しくはない、必死だった」などぶっちゃけてたり、いつもはギャグばっかり言っているシンイチロウさんもシリアスになってたりで、彼らの違った一面が垣間見えます。やはりファンにはオススメ。ファン以外にはオススメできないなあ。
本編を見てるときはあまり心を動かされなかったんですけど、見終わって、ふうと一息ついてから特典として収録されている「Tiny Boat」のアコースティックバージョンを観ていたとき、急に涙腺がゆるんで危ない状態になってしまいました。なぜいきなりこんな気持ちになったのか、自分でもうまく説明できません。すいません、肝心なところはいつも曖昧で。なんでしょうね、本編で「Tiny Boat」に関する暗い話がでていたということももちろんあるんでしょうけど、山中さわおが言っていた「曲に罪はない。いい曲だ」って言葉が妙に印象的で、ふとその特典映像を見ているときに、「音楽」というもの、かなり広い意味での「音楽」というもの、いや、ものすごく大げさに言うと「人間が生きる」ということの本質が垣間見えたような気がして感極まっちゃったんでしょう。ううん、巧く言えない。


とにかく明日のライブへのテンションが急激に上がってきました。15周年おめでとう、これからもよろしく。そんな明るい気分でピロウズに向かい合えそうな気がしますよ。