the pillows『その未来は今』(asin:B0002RNB7U)

mikadiri2004-10-06

ザ・ピロウズの3曲入りニューシングル。結成15周年という長いキャリアを持つロック・バンドにしてはとても若々しく、勢いのあるサウンドで、平均年齢が40近いとは思えません。タイトル曲なんて、これでもかというくらいギターロック一直線。「おっさんになってもこんな曲ができるなんてさすがピロウズ」という見方もあるでしょうけど(というかそれが大勢なのでしょうが)、ヒネクレ一直線の僕は、去年発売のアルバム『ペナルティーライフ』の感想にも書いたように、「そういうのは若いバンドに任せようぜ」なんて思ってしまったりして。決して悪くはないですよ、むしろカッコイイんですけど、なんか物足りないものを感じてしまいます。僕のピロウズに対する理想が高すぎるってことなんでしょうけどね。それはそうと、僕はなんとなく「その未来は今」というフレーズに、「これまで色々ガムシャラにやってきた結果もたらされたその未来は今、“どうなっている?”」みたいな、問いかけるっていうか、「まだ見ぬ明日を追いかける」的ニュアンスを感じ取っていたんですが、歌詞をちゃんと読んでみたら、「まだ見ぬ明日を追いかけた、その結果としての未来=今」てな感じなんですね。言い切ってる。今のピロウズらしいというかなんというか。余談ですが、トモフスキー画伯によるジャケは100点です。素晴らしい。うまく言えませんが、「その未来は今」って感じが、物凄く出てる。うまく言えなさすぎ。


では全曲感想。

M-1「その未来は今」
上にも書いたように、疾走感溢れるギターロック。全体的には取り立てて言うこともないんですが(普通にカッコイイので)、細かいところでセンスが光ってますね。ピロウズ特有の――ってほどでもないんでしょうけど、一回聴いただけでは「コレ!」とわからない、絶妙のコード選択。目立ったギターリフがないこのような曲調で、普通にコードを鳴らしてしまっていたのではそれこそ“若い凡百のバンド”になってしまいますから、この辺にピロウズの経験地の高さを感じます。あと「サヨナラバイバイ / これも自由」のあとでの一瞬のブレイクや、2コーラス目に入る前のバンド全体でもフィルインなんかも、いい感じに曲へ彩りに加えてます。随所に挿入される「アゥイエー」も、ピロウズならではの魅力ですね。曲のラストで響くコードなんですが、山中さわおはこの響きが相当好きなようですね(メジャーセブンスでしょうか?)。他の曲でも締めに使われることが結構あるような気がします。
M-2「Beehive」
山中さわお米倉千尋という方のために提供した曲の、セルフカバー。前のシングル『ターミナル・ヘブンズ・ロック』における「Over Amp」みたいなもんですね。米倉さんバージョンを聴いたことがないものですから、比較はできません。これだけ聴く限りでは、ちゃんとピロウズの音になっているという印象です。普通にいい曲ですね。真鍋氏のギターが、メインのフレーズも、ギターソロも、メロディアスでいい感じ。どうでもいい話なんですが、サビにピクシーズの「Here Comes Your Man」のベースラインをかぶせたくなったのは僕だけですか?(笑)しかしせっかくのいい歌詞が、ラストの「帰り道を帰る」で台無しになっちゃってるような。細かいようですけど、僕は気になっちゃいました。頭痛が痛い。
M-3「Heavy Sun(with baby son)」
このシングルでの私的ベスト・トラック。オルタナ向きじゃないコード進行を、強引にピロウズ調へ仕立て上げてる感じ。いい具合に力が抜けてて、細かいところでロック的エッセンスを感じさせるカッコいいデキ。ブリッジ・ミュートでのパワー・コード弾きとか(ピロウズじゃ珍しいと思う)、それに絡む真鍋氏のギターフレーズ、ギターソロ最初のチョーキング(ねちっこくて痺れる)、ギターソロ後にビブラートでフィードバックを鳴らしてからの締め(なんか真鍋氏がコレを弾いてる時の映像が目に浮かびそうなほど真鍋氏的)、そこからの展開(ベース→ブリッジミュートのギター)における盛り上げ方、などなど。もろ、僕のツボですがな。ベタといえばベタなんですけどね。シングルのカップリングのほうがこういうラフな感じが出しやすいんでしょうか。いい意味での「適当さ」というか。リズム隊は控えめで、ギターを前面に押し出した曲ですね。ラストの「あふれてしまいそう / こぼれてしまいそう」とさわおが声を張りあがるところで、ドラムがもうちょっとフィルインを混ぜてもいいかなあとは思ったんですが、これはこれで良し。カッコイイ。