空と海と大地と麗しのおっぱい

さあ、ドラゴンクエスト8の発売日まで、ついにあと一日となりました。僕は明日、バイト帰りにソフトを手にいれ、そのまま解脱する予定です。皆様におかれましてはドラクエ熱の高まり具合はいかがでしょうか? 「何をドラクエごときで舞い上がっておるのか、はしたない、あぁはしたない」とお考えの方ももちろんいらっしゃることでしょう。僕も不思議なのです。なぜこれほど、たかがゲームソフトに、齢23にもなって、前後不覚になるほど浮かれているのか。くっ、痛! 傷が痛む。どうしたのかって? そう、ご察しのとおり、僕の右腕の擦り傷は、今日の仕事帰りに「あー、ゼシカたんのおっぱい柔らかそうだなー、マシマロみたいだなー」と、いわば“マシマロが本文と関係がある方面”の非奥田民生的思索に耽っていましたところ、電柱に正面衝突しぶっ倒れたときにできた傷です。まさに前後不覚。ぶっ倒れたときに見上げた白い雲も僕にはおっぱいに見えてしまいました。おっぱい・イズ・エブリウェア。確か僕は地球人であっておっぱい星人ではないはずなのですが、頭の中はおっぱいに占められ、目に映るもの全てがおっぱいに見えてきたりして、これはもう危険なレベルにまで達しており、やばいぞ、真面目な本を読んで軌道修正をせねば、とニュートンの伝記を読んでみても、「ニュートン」が「乳頭」に脳内で変換されたりして、林檎と重力うんぬんの章に至っても「椎名林檎のおっぱいとゼシカたんのおっぱいって似てるなあ」とか考えてしまい、どうにもならないわけで、かくなる上は覚悟を決めて、宣言せねばなりますまい。そう、僕は、ゼシカたんのおっぱいを拝むために、ドラゴンクエスト8を発売日に買う。嘘偽りはございません。言うなれば、ドラゴンクエストを買うというよりもおっぱいを買う、としたほうが正確でしょう。「ドラクエ高いよ、ぼったくりだよ」という声をよく耳にしますけれど、たかだか9000円でおっぱいを買えるならば、こりゃもうとてつもなく安い買い物と言えましょう。とにかく僕は明日、冒険の旅へ、揺らめくおっぱいの旅へ、偉大なる第一歩を踏み出す所存であります。地球は青かった、地球は丸かった、おっぱいも丸かった――おっぱいを目にした結果、僕がどのような言葉を呟くのかどうかは明日のお楽しみ、ということで、すっかり長くなってしまいましたが、ある文学者の著作から一節を引き、それを以ってこの文章を締めくくりたいと思います。さらば、さらば。皆様、どうか、お元気で。

それはある本屋の二階だった。二十歳の彼は書棚にかけた西洋風の梯子に登り、新しい本を探していた。モオパスサン、ボオドレエル、ストリントベリイ、イプセン、ショウ、トルストイ、……
そのうちに日の暮れは迫りだした。しかし彼は熱心に本の背文字を読みつづけた。そこに並んでいるのは本というよりもむしろ世紀末それ自身だった。ニイチエ、ヴェルレエン、ゴンクウル兄弟、ダスタエフスキイ、ハウプトマン、フロオベエル、……
彼は薄暗がりと戦いながら、彼等の名前を数えていった。が、本はおのずからもの憂い影の中に沈みはじめた。彼はとうとう根気も尽き、西洋風の梯子を下りようとした。すると傘のない電燈が一つ、ちょうど彼の頭の上に突然ぽかりと火をともした。彼は梯子の上にたたずんだまま、本の間に動いている店員の胸の谷間を見下ろした。彼らは妙に小さかった。のみならずいかにも見すぼらしかった。
「人生は一対のおっぱいにも若かない」。彼はしばらく梯子の上からこういう彼らを見渡していた。……