音楽の話をしようか。

ドラゴンクエストというゲームがなぜここまで国民に愛される大作になり得たのか、という問いに対する答えのひとつに、「音楽」があげられるでしょう。ゲームをやらない人でも耳にしたことはあるにちがいない超有名なテーマ曲をはじめとして、すぎやまこういち氏による名曲の数々は、ドラゴンクエストというゲームの世界観を見事に捉えており、加えてクオリティもとんでもなく高く、ゲームの音楽を単なるBGMから「ゲームミュージック」という一ジャンルへのし上げたと言ってしまってもまあ過言ではありますまい。
さて、では最新作であるところの「ドラゴンクエスト8」の音楽のデキはいったいどうなんでしょうか。今日は、わたくしミカヂリが、超極めて果てしなく主観的に、ドラクエ8の音楽を、過去作のそれと絡めて評価していこうと思います。まだクリアしてませんけれども。クリアしてませんけれども、僕の語りたい欲が性欲を上回るほどに高まっておりますので書きなぐります。★五つが満点です。以降、若干のネタバレを含みますので、まっさらな状態でドラゴンをクエストしたい方はさっさとゲーム屋へ走ってドラクエを買ってプレイして、改めて当サイトへお越しください。9000円の価値はある、と思う。かもしれませんね、サムライ。

フィールド音楽 ★★★★★

文句なしの満点。「見渡す限りの世界がある」というキャッチフレーズや、完全3D化されたフィールドに、これほどマッチした音楽を作るとは。正直、ドラクエ5(以下、括弧内の数字はドラゴンクエストのシリーズ名を意味します)を最後に、すぎやま先生の作る音楽には少し衰えが見えてきたというか、守りに入ってるなあというか、とにかく輝きがないように感じていたんですが、これは素晴らしい。「3」や「4」(馬車入手後)のような「俺ら勇者ご一行、魔王を殺しに行くぜ」といった勇壮さや、「1」「2」「5」のような「苦しいことはあっても旅は続く」といった哀愁感はありませんが、どこまでも冒険したくなるような、広がりのある暖かい音楽。フィールドを歩くことが全然苦じゃありません。

通常戦闘音楽 ★★★

悪くはないです。ないですが、短い。僕はドラクエをやるときはきまって、はじめての戦闘で音楽をまず聴くんですが、「盛り上がりどころはいつだろうか」と思ってたら一周しちゃってて、すこしずっこけました。ムカついたので無駄にテンションあげてスライム殺しました。音的に特筆すべきところがあるとすれば、オープンハイハットの打ち込み音がやけに目立ってますね。うるせーくらい。まあ、はじめに書いたように悪くはないんですけど、いたって普通といったところでしょうか。ま、「1」「2」「3」「4」が凄すぎるだけですね。小学校にあがる前にプレイした「2」では、戦闘音楽が怖すぎて先に進めないという事態まで起きてましたし、それくらいパワーのあるメロディーだったということなんでしょう。個人的に一番好きなのは「5」なんですけど。後半の展開が素晴らしい。

ボス戦音楽 ★★

普通。ラスボス以外で明確に「ボス」という存在が示されたのは(つまり特別な敵と戦うときの音楽が変わったのは)「5」以降だと記憶してますが、正直、「5」以外のボス戦音楽を思い出せません。あ、「6」は隠しボスと戦いまくったから少しは覚えてますね。でも大した曲じゃありませんでしたし、やっぱり「5」以外は印象が薄いです。「8」も、その流れに組み込まれちゃってますね。まあ音楽なんか気にする暇も無いほど戦闘に没頭しているだけという見方もありますけども。もうちょっと旋律にこだわってほしかった。すぎやま音楽のキモはメロディーにあると思いますので。

中ボス戦音楽 ★★★★

中ボスというかフリーザ様のできそこないみたいな人(通称ドルマゲス)との戦闘時の音楽。これはなかなか良かった。というか、あのイントロでもう勝ちです。「キタワァーーー!」と思えました。店頭のプロモーションビデオでも聴ける、あの音です。変身後の音楽はテンパってたので覚えてません。ドルマゲスさん強かった。「6」のムドー戦のようなギリギリの緊張感がありましたよ。奇跡的に全滅はしませんでしたけど。余談ですが、「8」ではボス戦よりザコ戦のほうが危険度が高いような気がします。油断してるとすぐぶっ殺される。一回攻撃するとマジギレするカエルみたいな変な奴になす術もなく燃やし殺されたときは笑うしかありませんでしたよ。まあ某星の海ゲームよりかは全然楽なんですけれども。

街 ★★★

普通。あ、けっこう普通ばっかりだな。あんまり気にして聴いてないんですが、街の音楽、2パターンあります? と「?」を使ってしまうくらい耳に残っていないという事態です。これもオープンハイハットの「チー」という音が目立ちますねえ。ドラムセットの音を使うのはいいんですが、使うなら使うでもうちょっと考えてほしい気がしなくもないです。「パン!」という最初の一音は元気があってよし。ちなみに過去作で一番好きな街の曲は「3」のやつ。あれは完璧です。

城 ★★

なんかどっかで聴いたようなフレーズがときおり混ぜられる、まあ良くも悪くも「ドラクエの城」的な曲。雰囲気は出てるので良いのではないでしょうか。特筆すべきところは大してありません。ゲームの展開上、「城」が出てくるのがちょっと遅めなので、「おおー城だー」とは思いましたが、それだけでした。城といえば「3」の曲が神レベルに達しているので、あれを超えるのはちょいと難しいかもしれませんね。「1」におけるラダトーム城の「バッハ丸出し」の曲も捨てがたいですが。

洞窟 ★★★★

かなりいいです。デフォルトでたいまつを持つキャラクターが画面に表示されるのとあいまって、「洞窟に潜る」感がかなり出てます。わかりにくい説明。ボスがいるフロアに入ると音楽に微妙な変化が現れるのも、「1」みたいで緊張感が増しますね。というか洞窟の音楽は全体的に「1」っぽいです。個人的な印象なので、「どこが?」って言われると具体的に説明できないんですけど。「タラタラタラタラタラ」の使い方とか? うむ、自分で書いてて意味不明であります。

塔 ★★

「森の奥にひっそりとたたずむ」イメージですね。導入部のSEは素晴らしい。ただ、僕が好む塔の音楽というのは、「3」「4」「5」にみられる、まがまがしいイメージで作られたモノなので、物足りないのも事実。ここまで書いてて気づいたんですが、「8」では音楽よりもビジュアルで魅せようとしてるのかもしれないですね。印象的な旋律があまりない。あくまで音楽は後ろを支えるためのものとして存在しているような。そういえば、RPGの3D化の先陣をきったファイナルファンタジー7においても、音楽はかなり控えめで、作曲者植松氏も「美しい映像を見てもらうために音楽はなるだけ目立たないようにした」とコメントしてたような記憶があります。同じような事情がドラクエにもあるんでしょうか。

鳥での飛行時 ★★★★★

まんまドラクエ3のラーミアの曲(「おおぞらをとぶ」)なので、本来なら評価不能――というか「使いまわしかゴルァ! 教育的指導すんぞ!」とブチ切れてしかるべき場面なのですが、いろいろ苦労したすえ、鳥で空を飛んだときにこの曲が流れて「ふわぁ……」と初めてエクスタシーを得た第二次性徴期の女の子のように震えてしまったので負けを認めます。反則だ。ここでこれを使うか。でも許す。感動した。ああ、いい曲だ。でも、最近ドラクエをやり始めた小学生とかは元ネタ知らないんでしょうかねえ。

冒険の書のときのアレ

星なしですが、まあこれは「4」から続く伝統なので、評価してもしょうがないかなあ、と。ユーザーに広く定着した良い音楽を継続使用するのはイメージ戦略として正しいとは思うのですが、もう少し冒険してもいいかなあ、と思ったりします。「1」や「2」には復活の呪文というものがあり、そのBGMはどちらも素晴らしいものですから、やっぱり新しいものも聴きたくなる。余談ではありますが、「2」の復活の呪文入力時の曲は「LOVE SONG探して」っていうタイトルで、僕はこれが大好きです。同じく「2」のエンディング「この道わが旅」と並んでドラクエミュージックのトップを争うくらい。「2」はやっぱいいなあ。


長くなりそうなのでいったんここで打ち切ります。もし続きがあるとしたらクリア後、おそらくエンディングの曲について書き連ねるでしょう。ラーミアの曲とか全滅時のSEとか(「1」のやつ。全滅した人はおそらく脳内にラダトーム城の音楽が流れて「おおえにくす! しんでしまうとはなさけない!」というメッセージが表示されたことでしょう。僕はそうでした)その他モロモロ、過去のドラクエとの共通点が指摘できるので、なんかエンディング曲がとんでもないことになってそうな予感が今からしてます。つーか、早く続きをやりたくなったのでこんなん書いてる場合じゃねー、って話です。さらば。