the pillows“GOOD DREAMS TOUR”@LIQUIDROOM ebisu

というわけで行ってきましたピロウズワンマン。恵比寿移転後のリキッドは初めてだったんですが、AXや在りし日のBLITZみたいに「俺はライブハウスだぜ! ひれ伏せ!」って感じで建てられてはおらず、普通の街並みに普通に存在していたので普通にビックリした。一人で行ってたらおそらくスルーパスを放っていたことでしょう。あの心臓破りの階段は当然ながら無く、「ああ、新宿リキッドよ永遠に」とか少し感傷に浸ったりしていたんですが、普通に階段はありました。いちど二階へあがってから、もう一度階段を下りる形式。改装後のO-EASTもこんな感じでしたね。最近の大型ライブハウスはこのやり方が普通なんでしょうか? おじさんにはキツイです。でもまあ渋谷クアトロもこんな感じっていやこんな感じですね。少ないスペースを有効に活用するにはいいアイデアだと思います。
さてライブ本編。結論から言いますと、グダグダでありました。「ツアー初日のピロウズ」としては及第点なのですが、だからといって見逃していいはずがない。ニューアルバムの曲が明らかに練習不足。もちろん曲自体は好きなので、演奏が始まるとワクワクするんですが、その感情の高ぶりが台無しにされるような凡ミスや歌詞間違えやバンド的練りこみ不足がチラホラと。金を貰ってライブするんだから、もうちょっとどうにかならないのかなあと思いました。しかしまあその辺の素人具合がピロウズの魅力でもありますので、あまり声高に批判するのはやめておきましょう。評価すべき点もたくさんありました。一番顕著だったのが音作りでしょうか。山中さわおギターの音量レベルがかなり上げられていて(真鍋氏がファズを踏んでも聴こえるくらい。以前はかき消されてた)、ギタリスト二人のアンサンブルを聴かせようとしていたみたいです。ギターバンドとしては健康的ですね。というか本来こうあるべきだとも思う。最新作『GOOD DREAMS』でも、ギター音の定位やレベルなどで同じような改革をしていましたから、そのモードをライブにも適用したということでしょう。オーケーです。こういった変化は素直に評価したい。他にも、始めの数曲では真鍋氏がいつものムスタングではないギターを使っていたり、ボーカルをはじめとしてPAによるエフェクトが抑え目になっていたり、いくつもの工夫が見られました。個人的にさわおの声にはCDライブともどもエフェクトをかけまくってほしいのですが(笑)、そういう個人的嗜好を抜きにして考えれば、バンドの「ナマ」の音を届けようとしていて好感が持てますね。
ただ演奏がヘタレていては意味がない。佐藤しんいちろうのドラムは相変わらず鉄壁なんですけど(いつ練習してるんでしょう、あの人)、山中さわおと真鍋さんのギタリストチームがねえ、相変わらず不安定。一番酷いのはやはり山中さわおですね。曲の入りでギター弾き忘れるとか、「BAD DREAMS」で「C」をルートにして弾くべきフレーズを「G」ルートのままで弾いちゃったりとか、普通にありえない。『GOOD DREAMS』のツアーなんですから、その辺は最低限キチっとしてほしい。演奏が難しい曲ではないのですから。歌詞間違いも多々見受けられました。お前は本当にその歌を僕らに届けたいのかと、まあそんな感じで冷めちゃいましたよ。真鍋氏のほうはですね、これはまったく個人的な意見になるんですけど、「大事に弾くべきところは大事に行きましょうよ」と言いたい。「Vain dog」のリフはいつ聴いても一音くらい潰れちゃってるし、「Beehive」でのソロ前半なんかは、ちょっと適当すぎた。歪ませてごり押しもいいですけど、やっぱり決めるところは決めないと。結局盛り上がったのは『GOOD DREAMS』の曲ではなく、過去作からの人気ナンバーという、ちょぅっとだけしかめっ面になってしまうようなライブでした。あといい加減に「I know you」はやめてください。「いやそんなこと言っても、聴きたい人だっているでしょう」っていう反論をあえて無視して僕は主張します。ソロ以外はコード弾きオンリーのギター、普通にキャッチーなメロディー、そしてリズムに工夫のないアップテンポ、たまにならともかくほぼ毎回のライブで乱発、消費。それはあなた方の嫌う「インスタントミュージック」ではないのか。
とまあね、文句ばっかり言ってますけど、ちゃんと楽しみましたよ。『GOOD DREAMS』からの曲はダメダメとはいっても、タイトル曲はちゃんと決めてくれました。テンションに身を任せず、丁寧に歌った山中さわおを褒めてあげたい。それ以外も、歌は全体的に頑張ってました。それだけに、歌詞間違いさえなければ――と結局「練習不足をなんとかしろ」ってところに行き着いてしまうんですよね。じつにもったいない。あとここまで書いた批判の骨子からはちと外れるんですが、「フロンティアーズ」のキーをあげて演奏してた点、あれはいただけない。プレイ自体には全く文句をつけるところがなかったんですけど、あの曲に漂うある種の諦観じみた雰囲気はCDバージョン――つまりキーが低いほうが、うまく表現できると思うのです。そんなに劇的にキーをあげてたわけじゃないので、あまり大げさに書くのもどうかと思うんですけどね。あとまあ山中さわおの声域的に厳しいとこもあったのかもしれません。僕は「フロンティアーズ」という曲が好きなので(新作で一番好きだ)、あえて重箱の隅をキツツキ状態で突いてみました。
まあまだツアーは始まったばかり。三月の東京公演にも行くので、そっちに期待します。



昨日の更新で「ライブを見てちょっと思うところがあった」と書きましたが、結局それをアップするのはやめておきました。色々考えてみて、ピロウズファンの皆さん、そして僕自身も不快になってしまう文章をわざわざ公開するのもどうかと思いましたので。上のライブ感想は、これでもかなり重要なところをはしょってます。少しだけ「思うところ」を書くとすれば、「今のピロウズには何ら問題はない。しかしピロウズを取り巻く環境は決して好ましいものとはいえない。ピロウズは甘やかされているし、同時に、見捨てられてもいる」といったところでしょうか。何をバンド一つでそこまで熱くなっているのか、と言われそうですが、なんだかんだいってピロウズは僕にとって「お気に入りのバンド」とかそういうものを遥かに超えて大事な存在ですので、どうしたって色々考えるわけですよ。ま、詳しく聞きたいっていう奇特な方はメールでもください。