妄想ロックンロールレポ
事前呑み
ウェブ上の無人島としてずぅっとドラえもんが迎えに来てくれることを待っているってくらい人見知りな僕が、知らない人と宴会の席を共にするというのはこりゃ大冒険でありまして、ダイの大冒険なんて目じゃないくらいの大冒険でして、レベル1でレーベの村に行こうとするくらい大冒険でありまして、とにかく不安を抑えよう、このままじゃいかん、と集合時間前に新宿ディスクユニオンに向かいザ・コレクターズ『僕はコレクター』と電気グルーヴ『VOXXX』を購入。ホクホク気分でテンションがあがるも、ふと財布を見ると、中身が超高級エステで48時間ぶっ通しのフェイスケアを喰らったようにスリムになっていて、不安が募る。何をやっているのか。でもそこでアッと驚くアットローンへ駆け込むわけにもいかないので風の寒さとフトコロの寒さに耐えつつ集合場所へ。「妄想」と書かれた紙を掲げて突っ立っているように厳命され、突っ立つ。色々な人に色々な目で見られる。女の人に「2ちゃんねるのオフ会ですか?」と言われる。「違うます」と答える。「すいませんすいません」とまくし立ててお姉さん去る。彼女は無事オフ会に参加できたのだろうか、と今でも少し心配です。
飲み会ではリア友とリア友に囲まれつつ隅っこの席に座るという人見知り最前線のポジショニングスキルを発揮し、順調にアルコール分を取り入れ、順調にズボンのベルトを緩め、順調に脱衣――とここで普通にストップがかかりました。曰く、「まだ早い」と。いつでも早い男です。隅っこのほうで勝手に盛り上がってしまい、これは主催側としてどうなのか、と思ったので、他のDJたちが宴半ばで会場に向かった後も居酒屋に残ったりしてみました。「スネオヘアーだ」と言われました。よく言われます。言われません。断髪後の僕を見ると大体の人が「上原だ」と言うのですが、今日は違いましたね。それなりに色々な人と絡めたので、楽しかったです。四、五回脱衣しようとして、そのつどなだめられたりしましたが、僕にしては頑張った。
acidに入場
主催者側なのに会場の場所を知らないという素晴らしい駄目加減ぶりを発揮しつつも(僕が発揮するのは主にそういった負の要素に富んだものです)、もう一人のスタッフのおかげで何とか辿りつけました。中に入った瞬間DJの皆様に様々な物理的攻撃を喰らいました。「練習せずに大丈夫?」と言われ、「余裕」と答える僕。全然余裕でなかったことはこの後明らかになりますが、それはまた別のお話。お客さんの入りはそれなりで、「あー、結構入ってるなあ」と思いました。とにかくお酒を飲まねばいかん、と思い、さっそくバーカウンターへマイムマイムステップで近づき、颯爽と注文、「スコッ、スコッチを」噛む。カウンターの中の人に怪訝な顔をされ、言い直す。中の人がスコッチを探すのに手間取る。「シーバスだよ、そこだよ!」と言えればいいのですが、僕にそんな勇気があるわけもなく、待つ。彼がフォアローゼスを手に取ったときはさすがに「Oops! それバーボン!」と叫び脱ぎそうになりましたが(実際はやらない)、なんとかシーバスリーガルを見つけてくださり、無事にアルコールをゲット。美味い。だんだんとテンションが鯉の滝登り状態になり、またズボンのベルトを緩めようとして、また止められる。どんどん可哀想な人になっていく。
妄想ロックンロール開始
定刻を迎え、ついに始まる。テンションあがる。しかしフロアにあまり人がいない。バースペースのほうへ煽りに行ってみようと思ったものの、みんなマッタリとしているので引き返す(ジキシさんすまん)。とりあえず音楽がガンガン鳴っているのでガンガン踊る。クラブイベントというものをほとんど体験したことがない僕には体力配分など頭の片隅にすらなく、とにかく身体を揺らす。「俺たちの国境は地平線さ!」と叫んだりする。その後も基本的にバースペース(つまりマッタリ場)には戻らず、フロアで踊る。阿波踊りでノる。「カジャカジャグー」でノる。「渚にまつわるエトセトラ」でノる。「ワンダーフォーゲル」でノる。というかほぼ全ての曲でノる。夜は俺の時間さ、いくらでも来いや、そう思いつつ後先考えずノる。J-POPの伝道師和治さんが福山雅治の「HELLO」をいきなりかけたので爆笑する。爆笑しつつノる。ノり続ける。気づいたら汗びっしょりになっており、このままではヤバイ、と一旦酒を補充する。もちろんスコッチ・ウィスキー。ほくほくしてフロアに戻り、グラスをテーブルに置いて、ちょっと煙草に火をつけようとしたら事件が起こり、一口も飲んでないウィスキーが全部こぼれる。「ワオップ!」とか言う。落ち込む。ZARDの「負けないで」がかかる。あまりのタイミングの良さに爆笑しつつ大声で合唱する。基本的に和治さんの選曲は全てが反則でした。しかしグッジョブでした。気づいたら寂しげだったフロアに人が結構入ってる。それも単に人が移動したっていうだけじゃなく、入場者自体が増えている模様。イけるんじゃね? と思う。俺らイケてるんじゃね? と思う。さらにテンションがあがる。
自分の出番が草木も眠る丑三つ時だということを考えれば、普通の人なら「あまり激しくはしゃぐと後が持たないぞ」と思ったりするものですが、僕はそれほど普通ではないのでとにかく躍り狂っていました。ブライアンセッツァーで踊り、アンダーワールドでトランスしかかり、トーキングヘッズでカクカクしたり、ニルヴァーナで「シセー!」と叫んだり、「ラジオスターの悲劇」を大声で合唱したり、「Sleepy Head」でエアギターしたり、フランツ・フェルディナンドをテイクミーアウトしたり、そんなことをしてたら自分の出番が迫ってくるわけですよ。緊張するわけですよ。もはやどうにでもなれなわけですよ。
そしてDJデビュー(笑)(うはwwww)(おkwwwww)
とにかくテンションあげていきました。ピロウズオンリーということで、盛況なフロアから人がどんどんバシルーラされたらやばいなあと思っていたのですが、それは杞憂でした。ピロウズ的なノリを知っている人はもちろんのこと、知らないっぽい人も踊ってくれてるじゃあありませんか! 一安心しつつも初めてのDJブースに緊張してしまい、今現在かけている曲を停止させるという未曾有のミスをおかしたりしていました。でもこうなったらもう気取る必要なんてないわけですよ。「これ以上なく気持ち悪い動き」を至上命題に、とにかく身体を動かしました。エアギター、ロボットダンス、アゥイエー、さわお的決めポーズ、ジャンプ、――とにかく今自分が持てる「動き」を全て出し尽くしました。音楽に合わせ、踊る。なんと気持ちいい。DJ行為自体も、例のミス以外に大きな失敗はなく、うまく繋げたと思います。踊ってくれた人、本当にありがとう。
セットリストを一応あげておきます。カッコ内は収録アルバムね。
- Stompin' Wheel(Salon Music『Kelly's Duck』)
- Paper Triangle(『RUNNERS HIGH』)
- Nightmare(『Another morning,Another pillows』)
- Ride on shooting star(『Fool on the planet』)
- RUSH(『HAPPY BIVOUAC』)
- ビスケットハンマー(『Thank you,my twilight』)
- WAITING AT THE BUSSTOP(『Smile』)
- like a lovesong(back to back)(『LITTLE BUSTERS』)
- 恋のスパイに気をつけろ!(『KOOL SPICE』)
- ぼくはかけら(『90's my life』)
- GIRLS DON'T CRY(『Please Mr. Lostman』)
- モールタウンプリズナー(『PENALTY LIFE』)
- BLUES DRIVE MONSTER(『LITTLE BUSTERS』)
- No Substance(『LIFE IS DELICIOUS』)
全キャリアから満遍なく、をテーマに、盛りあがれるような曲を選んだつもりです。もっと具体的に言うと、こんなライブを見せられたら悶絶、といった自分の欲望。時間の関係でスルーせざるを得なかったアルバムとか、リトバスは何故か二曲とか、不完全な点は多々ありますけれど、いいの、アタシ気にしてない。ちなみにミスった(曲を停止させてしまった)のは「Paper Triangle」中で、もう再開は諦めて即座に「Nightmare」をかけたのですが、まさに「悪夢」な感じでしたよ。ネタになるからいいんですけどね。
終わりの始まり
ハシャギすぎたせいで正直身体が動かなかったんですが、トリを飾るペルドモさんのまったりとした選曲でずいぶん癒されました。でも真心ブラザーズがかかったときはさすがにフロアへ直行、「はしゃぎすぎてる夏の子供」になり、そしてすぐにぐったりする。ユニコーン「すばらしい日々」を初めてフルで聴いて(アルバム持ってない)ジーンとしていると、ペルドモさんによる終了の辞が。でも終わりじゃない。これからDJバトルです。もういっちょやってみっかー、とズボンのベルトを緩めようとし、また止められる。最後までこんな調子でした。DJバトルでピロウズをかける気はなかったんですが、結構な数のピロウズファンがいることと、僕自身このままピロで突き抜けたい気持ちが大きくなってきて、結局DJバトルまで徹頭徹尾ピロウズ縛りをやってしまいました。(一部が)盛り上がったので良かったです。そこでかけたのは
- RUNNERS HIGH(『RUNNERS HIGH』)
- バビロン天使の詩(『Thank you,my twilight』)
の二曲。ランハイの手拍子をちゃんとやってくれた人が結構いて、嬉しかったですよ。DJバトルではリア友の須藤がkevin ayersの「Sweet Deciever」をかけていて、ええやん、と思いました。僕も同じくケヴィンさんの「Butterfly Dance」とかかければ良かったかな。ピロウズオンリーで最後まで走り抜けたことに後悔はしてませんけどね。
そんなこんなで最後までダンシングミュージックな雰囲気を保ちつつ終了。楽しかった、の一言ですね。正直ここまで盛り上がるとは思っていませんでした。フロアで踊り狂って場を盛り上げてくれた人、ありがとう。みんなバカです。でも僕はそんなバカどもが大好きです。学生時代にちょっとだけ戻れたような錯覚に陥りましたよ。次があれば、また一緒に踊り狂いましょう。ノー・ミュージック、ノー・ライフ。妄想ロックンロールよ、また会う日まで。寂しいなあ。