プラネテス Phase24 「愛」

せーの、



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プラネテス録画失敗したー! したー! したー!(エコー)しーたーしーたーしーたー(ドップラー)
神の存在を僕は否定する。否定しつつ神を呪う。これほどまで自身の運の無さを嘆いたことはいまだかつてない。これは神の悪戯なのだ。然し神は存在し得ない。その逆説が僕の肛門を刺激し便意を誘う。放っておくと人為的小規模土石流が僕の部屋を埋め尽くしてしまうのでとりあえず便座に腰を下ろし、踏ん張る。凝り固まった便はなかなか離れてくれず、僕は大声を出す。「アオオオオオオ!」それは便を出すための気合というよりこの世界全てを真っ黒に染め上げるための呪詛だ。「アオオオオオオオ!」刹那、バビップ、と空気が放出される。臭気が便所に充満する。カウボーイバビップ、と僕は呟く。呟いたところで便は出ぬし、プラネテスが録画されることもない。ここで再度神を呪う。もとより存在しない神を呪ったところで状況が変わるわけがない。ああ、なんという無為な行為! とにかく陰毛をむしる。むしる。むしる。そして叫ぶ。「アオオオオオオオオ!」 愛は、どこに、あるのだ! 愛を、求める、僕を、誰ひとりとして、求めては、くれないのか!
空虚。排便を終えて僕を待っていたのはデッキから顔を出したビデオテエプであった。僕は最初まで巻き戻されたビデオテエプを手に取り、「おかしいですよ」と力なく言葉をこぼす。わかっている。おかしいのはビデオテエプではないし、もちろん神でもないし、デッキでもない。テープ残量を確認せずに録画予約を強行した、僕自身なのだ。愛を求めるあまり、いや、求めたからこそ、愛は逃げたのだ。身体が震える。これは寒さか、それとも、戦慄か。やり場のない感情をどこへ吐き出せばよいのだ。わからない。す、とビデオテエプをテエブルに置き、すう、と息を吸う。こうするしかないのだ。何をしたらよいのかわからないとき、人はこうして、力の限り、わけのわからないことをするしかないのだ。


せーの、



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