傷心の旅路

プラネテスの録画を失敗したことにいつまでも打ちひしがれているわけにもいかないので、とりあえず外に出てみた。『のだめカンタービレ』11巻と、村上春樹シドニー!』を買った。なぜ今さら『シドニー!』なのかというと、本屋のカウンターに僕好みの綺麗な女性がいたからだ。少女漫画だけを買っていく不細工野郎としてこそこそ噂されるより、少女漫画と村上春樹を一緒に買ってカムフラージュしようとする不細工野郎として噂されたほうが僕にとっても心地いいし、噂する彼女のほうだって話に広がりが出て楽しめるだろう。僕はみんなに楽しんでほしいだけなのだ。今頃彼女は「さっきのキモイ男、プッ、のだめと春樹だってプッ、プゲラワロス」と笑っていることだろう。それでいい。存分に笑ってほしい。
そのままの勢いで服も買った。コーデュロイのジャケットだ。今の季節には寒くてちょっと着れないようなジャケットだ。8000円が6000円に値引きされていて、ちょっと汚れが着いてるから、とさらに半額にしてもらった。安物買いの銭失いでいいのだ。生姜色のジャケットを着た僕を見て「なにあの男、プッ、大学教授みたい」と笑ってもらえればいいのだ。その笑顔が僕の生きる糧になる。ちなみに定価を見てもらえばわかるように、僕が出向いた服屋というのはユニクロである。非モテの聖地である。ここ以外で服を買う奴は非モテではないと断定してもよいくらいのユニクロである。僕はユニクロが大好きである。なぜなら僕は非モテだからである。非モテというのはモテにあらざる男である。ゆえに僕は独りである。
家に帰り、『のだめ』を読む。野田恵が思いのほか可愛いので戸惑う。僕の中でのベスト・のだめショットはコンクールでシューベルトを弾くのだめである。断固萌えである。反論は許されない。読み終え、本を閉じる。煙草を吸う。することがないので、買ってきたジャケットを着て鏡の前に立ってみる。寸分違わぬほどの大学教授っぷりに僕は笑った。いい夢を見ようと思った。