THE BEACH BOYS『IN CONCERT』


In Concert


夏といえば? そう、ビーチボーイズ。今の季節は? そう、冬。じゃあ僕らがこの季節に聴くべき音楽は? イエス、ザッツライト、ビーチボーイズ以外にありえませんね。え、前後が繋がってない? お馬鹿野郎!(即ギレ) 自分の胸に耳当てて聴いてみろ! そこで鳴っているのはなんだ!? ミュージックでしょう? ミュージックは季節とかそういうのと関係なくいつも鳴り続けているんです。ビーチボーイズだってそう、気温なんかで左右されるような薄っぺらい音楽じゃないのである! ですよ。
72年と73年とかそこらに行われたライブが収められたこのアルバム、「コンサート」という“柔らかい”表現が使われていますけれども、このテンション、勢い、どれをとっても「ライブ」です。生きている。生き生きしてる。スリリングではないけれど、とてもエキサイティング。ビーチボーイズを聴くとどんな時でも幸せになれます。別に僕が村上春樹ファンであり萩原健太ファンだからこんなこと言ってるわけではなくてですね、こりゃもうコンセンサス、世界の共通認識ですよ(註・僕は妄想を生業としている妄想人類です)。
この時期、ビーチボーイズの中心であるブライアン・ウィルソンは色々あって公演に参加してません。デニス・ウィルソンもドラムを叩いてないとか。でも演奏自体は素晴らしいデキです。ブライアンがボーカルを取るはずの曲も、誰が代役をやっているのか知りませんが、全然違和感がない。バンドとして完成してます。皆さんはビーチボーイズのことを「ベンチャーズみたいなナツメロ野郎ども」と認識されているかもしれませんが、この頃の彼らはそうではありません。攻めてます。前のめりになってます。ヒット曲オンリーに偏らず、ちょっとマニアックな曲もセットリストに入れてたり、ギターがギュンギュンいってたり、ドラムが無駄に熱かったり。でも決めるところではきちんとヒット曲で盛り上げる。プロフェッショナル。
でも僕はそれほど濃い「ビーチ・ボーイ」ではありませんので、やっぱりヒット曲に耳が傾いちゃいますね。「CALIFORNIA GIRLS」「CAROLINE,NO」「WOULDN'T IT BE NICE」「GOOD VIBRATIONS」……いずれもとんでもなく名曲。言うまでもないことですがハーモニーが鬼のように美しいです。あんなヒゲもじゃのオッサンどもが発する声とはとても思えない。「SURFIN'U.S.A.」や「FUN FUN FUN」とか、これでもかっていうくらい中身が空っぽで、そしてこれでもかってくらいロックンロールで、んもう素晴らしい。何も考えずに踊れます。踊らない人は嘘です。何が嘘なのかわからんが嘘です。
僕がビーチ・ボーイズで一、二を争うほど好きな「SURFER GIRL」もちゃんと収録されてます。この究極の美メロ、ライブではもっと美しくなっているような気がします。イントロが鳴った瞬間、観客の女の子たちが「キャー!」と叫ぶ声が収録されてますけど、たぶん男の僕も、もし現場にいたとしたら「ギャボー!」と野太い悲鳴をあげて失禁していたことでしょう。8分の6拍子の曲って、本当に反則です。ビートルズの「This Boy」とかもそうですけど。感情が揺さぶられてしまう。
というわけでこのライブアルバム、彼らの代表曲が多数収められていて、しかもライブのダイナミックスが存分に味わえるっていうことで、ビーチボーイズ入門にはかなり適しているのではないかと思います。文句なしにオススメできる。60、70年代の音楽を無条件で「古くさい」と思ってしまう人にはまあオススメできませんけれど、古い新しい関係なく「いい音楽」を求めているのならとりあえずビーチボーイズは避けて通れないと思いますよ。