マールボロ・マンは荒野にたたずむ

マルボロという煙草が存在するのは皆さんご存知だと思うのですが、そのマルボロがですね、近々ちょっと変わります。今までは日本たばこ産業――JTがライセンスかなんかを取得して国内で生産してたんです。それが今年の3月あたりで終わりになり、その後は外国産の、フィリップモリス社のものが輸入されるようになるわけですね。自動販売機などでは既に、国産煙草の販売機から洋モノの販売機への移行が進んでいます。由々しき事態ですよ。このサイトを細部まで読んでいる愛すべき暇人の方々なら、僕が好む煙草の銘柄がマルボロであることはご承知のことと思います。マルボロと共に起き、マルボロと共に笑い、マルボロと共に寝る。たまごボーロなんかを食ったときにゃあ「アンタぁぁ! 浮気したねえ!」とマルボロに糾弾されるほど、僕とマルボロは切っても切れない関係です。そのマルボロが変わってしまうんですよ。「でも、ちゃんと外国産のが輸入されるんでしょ?」とお考えのあなた、ちょっと立ち止まって見てください。日本人の女の子に萌えていた人間が、急に「これからはパツキンのムッチムッチYカップで勃起せよ」と言われたら、困りますよね。我ながら例えが下劣極まりないとは思うのですが、まあそれなりに的を射ているとは思います。「それはそれで興奮しますが何か」って人にはさしたる問題じゃないのでしょう。でも僕はあまり器用な人間ではないので、慣れ親しんだ煙草が急に別物になってしまったら戸惑うに違いないのです。
フィリップ・モリス社のマルボロは国産のものに比べ、荒々しい味だという噂をよく聞きます。無精髭生やしたカウボーイが風に吹かれながら燻らすイメージだとか。そもそも日本人の好みの傾向にはそぐわないらしいんですよ。実物は吸ったことがないのでなんとも言えんのですが、不安は拭い去れきれませんね。もし僕の嗜好にあわない味だったらどうしよう。とりあえず脱ぐか。脱いで三本目の足を膨張させ、「俺のマルボロ吸ってーな!」と往来を駆けてみるか。捕まるからやめよう。とにかく僕は五年間国産のマルボロを吸ってきた人間として、暗澹たる気分であるわけです。
JTは国産マルボロに変わる銘柄として「H」という、スライド式ボックスを採用したオシャレなものを発売しています。ちょっと吸ってみましたが、やはりマルボロほどのパンチはありませんでした。マルボロたんの代わりにはなれそうにないです。全ては3月にならないとわかりませんが、マルボロ派(俗に言う「赤マル」のソフトパックを吸う人間のこと。メンソールとか、ライトとか吸う奴はマルボロ派とは呼びません)の明日はどっちだ。煙草をやめるという選択肢が微塵も浮かんでこないあたり、僕はやはり駄目人間のようです。