村上春樹『シドニー!』


シドニー! (コアラ純情篇) (文春文庫) シドニー! (ワラビー熱血篇) (文春文庫)


アテネオリンピックもとっくのとうに終わって、オーストラリアが野球で銀メダルを取ったことなんて誰も覚えてないというのに、いやむしろ、そんな時だからこそ、『シドニー!』ですよ。2000年のシドニーオリンピックについて小説家の村上春樹が色々エッセーを書いているこの本、彼ならではの視点が満載でニヤニヤできます。「オリンピックは平和の象徴だ」と、本気で思ってる人は読まないほうがいいです。「オリンピックのせいで楽しみにしてたテレビ番組が潰れた、チクショー!」って人は読んだほうがいいです。高橋尚子じゃなくて有森裕子にスポットをあてるあたり、春樹らしいなあ。ヒネクレ最前線。普通の人とは違う角度でオリンピックというものに迫ってます。僕は狭い視点で物事を見る癖のある人間なので、この本を読んで「ふむぅ」と思うことが多かったですね。春樹の意見に賛同するとかそういう意味じゃなくて(むしろ往々にして春樹の意見には賛成できない)、「こういう考え方もあるのだなあ」と立ち止まれます。「アタマを柔らかくする100の方法」とかいう馬鹿げた紙束読むより、春樹みたいな「確固としたモノの捉え方」を持ってる人のエッセイを読んだほうが効果的だと思いました。気をつけてないと筆者に洗脳されちゃいますけどね。