the pillows“GOOD DREAMS TOUR”FINAL

誤解されないよう、書いておこう。楽しかった! 一言でいうとバッチリ? みたいな? 

前説(んなもんが存在するライブ感想って、どうなんだろう)

まずはじめに断っておきますと、3月13日に行われたピロウズのライブは、そりゃもう、あんたそりゃもう、これが「北斗有情拳」における身体破壊過程で、ライブ終わったら「あべし!」って死んじゃったとしても全然構わないくらい最高!――ってわけじゃありませんでした。僕らピロウズファンは「916」を体験してしまっているわけで、あれを超えるライブというのはそうそう出来ないし、おいそれとやられてもむしろ困っちゃうのです。ただ、『GOOD DREAMS』というアルバムツアーのライブとして見るならば、迷うことなく「最高」と言えるものでした。12月に僕が抱いた「違和感」「不安」「勝手な焦り」「ヘイヘーイ嫌い病」は、綺麗さっぱりとまでは言いませんが、だいぶ払拭されたと言ってよい。3ヶ月という全国ツアーを経て、まあ当たり前といっちゃあなんですが、ピロウズはまた少し、すこうし、大きくなったようです(一回り大きくなった、とはさすがに言えない)。思えば、ある一夜のライブがグダグダだったからといって、「ピロウズあかんわー、やばいわー」と騒ぎたてるのは15年というキャリアを持つバンドに対してあまりに礼を失していましたね。え、騒いでたのは僕だけ? はは(核爆)はははは(テラ爆)

『GOOD DREAMS』の曲が生まれ変わった

『GOOD DREAMS』のツアーなのだから、当然アルバムから全曲演奏されました。僕が昨年12月の恵比寿ライブで首を捻った原因のほとんどが、これら新曲たちの醸し出す「居心地の悪さ」にありました。単純に演奏面の完成度でもそうだし、それがひいては「グッドリの曲が“ピロウズの曲”になれていない」という不安にも繋がっていました。だがしかし、僕が抱いた負の感情は一掃されました。「ザビエル」も「ローファイボーイ・ファイターガール」も「バッド・ドリームス」も「ロージー・ヘッド」も、カッコイイじゃないか。これがツアーを回るということなんでしょうか。そんな顕著な変化はないんですけど、なんか「カッコイイ」(さっそく頭の悪さを露呈しています)。「ローファイ〜」前奏部に、ベースのグリッサンドがあって(『ドゥウゥーン』ってやつ)それが素晴らしく渋く決まっていたし、「オレンジ・フィルム・ガーデン」ではギター真鍋氏の腰が通常の三倍のエロさでくねくねしていたし、何より山中さわおが「動いていた」ことが大きい。例えは悪いですが、『GOOD DREAMS』という少し取っ付きづらい食い物食ったピロウズが、ツアーを経てそれを消化し、不要なものは排泄して、バンドに必要なところは余さず吸収したような感じ。ようやく身軽になれたってことでしょうか。スピード感があった。「バッド・ドリームス」というCDでは冴えない曲が「カッコよく」聴こえたのは、それが「ピロウズの曲」になったからだったのではないか、と思います。

サプライズ

一つ上の見出しで言いたいことの半分以上は言っちゃってるんだけど、まだ続きます。「サプライズ」とはいささか大げさな煽りでありますが、それは「ルーキージェット」のこと。今ツアーでは各所で「隠れた名曲キター」な嬉しい悲鳴があがっていた(らしい)とあって、僕も当然「こんな曲いいな、やったらいいな、あんな曲こんな曲いっぱいあるけど」と22世紀まで届くようなドでかい期待を胸にライブに臨みました。結果として、「隠れた名曲キター」はありませんでしたが、「ルーキージェット・女装男装入り乱れバージョン」で僕は満足でしたよ。驚いた。『Dead Stock Paradise』というPV集のエンドロールに使われたアーリータイムスなアレンジで始まり(この時点で勃起しかけていましたが)、ワンコーラスめの「Anything will do.」で止まり、「ああん、もしかして、来るの? 来ちゃうの?」と観客を最大限に焦らせたところで通常バージョンのイントロ・フィルイン。そりゃ勃起するがな。勃起しない人間がいたら教えてください。存分に勃ったよ、僕は。素晴らしいアレンジ。これも前述の「消化吸収排泄」がもたらしたマジックかもしれませんね。「BECK」というアニメ番組に出演する云々は知っていたので別に驚きませんでした。ニヤニヤとさわおを眺めてただけ。肝心の演奏でも「サプライズ」を提供してくれるあたり、ツアーを経てピロウズが得た余裕の賜物なんでしょうね。100点。

新曲「ノンフィクション」

(笑)。ツアー中に新曲を発表して色々なアレンジを試すのはピロウズの常でありますが、これで完成かい(笑)。ええやん、奴らのダサカッコよさがここまで表現されている曲ってのは珍しいですよ。一発で気に入った。「もろカップリング用」という意見もあり、それには完全に同意なのですが、僕はそれ以上に、「もろアメリカツアー用」だなあと思いました。さわお大好きブリーダーズに通じる、バカオルタナ。アメ公はたぶん気に入るんじゃないでしょうか。単音リフの間抜けさとか、急に「ジャーン!」ってなる無駄な大げさっぷりとか、かなりアメリカ的。じゃない? じゃないか。まあ僕はそう思ったってことで。この観点でいえば、この曲をカップリングでなくシングル曲として発表するのも面白い――かもしれませんね、サムライ。もう奴らは渡米したんでしょうか。頑張ってほしい。noodlesばっかり盛り上がるとか、そういう可能性がないとは言い切れないところがノンフィクション。

「過去」のピロウズと「現在」のピロウズ

ライブ終盤はもう、ただただ圧倒されるばかり。『GOOD DREAMS』からの曲とこれまでの名曲入り乱れの大盤振る舞いでした。具体的に言うと、「バビロン天使の詩」→「リトル・バスターズ」→「グッド・ドリームス」、アンコール挟んで「ストレンジ・カメレオン」「スワンキー・ストリート」、ダブルアンコールで「ハイブリッドレインボウ」の流れ。僕が夢中になってライブを見れたのは、『GOOD DREAMS』も人気曲も、まとめて「今」のピロウズとして演奏してくれていたことが大きいです。くれていた、ってのは変だな、ピロウズはいつでもピロウズで単純にいい音楽を「死んでも」演奏してるだけなのだから。とにかく、これら新旧入り混じったセットリストに、全く「距離」を感じなかったことは、僕自身驚きでした。繰り返しますけど、「グッド・ドリームス」がピロウズへの「仲間入り」を果たしたのです。考えすぎ? ええ、考えすぎ。でも僕はピロウズに関して冷静ではいられません。伝えたくなる。誰かにピロウズの凄さを知ってほしくなる。「間違いながら何度も傷つい」てきたピロウズが、紆余曲折経て「いい夢」を見れるようになり、しかし、それでも、「ここは途中なんだ」と信じている。ある人間の人生の縮図を見ているような気にすらなりましたよ。ここで「ONE LIFE」を引き合いに出すのは簡単ですが、それじゃあ終わっちゃいます。まだ続く。アメリカツアーを回って、そしてまた日本に戻って――どんどん続く。
山中さわおはライブを終えて袖に引っ込むとき、最初のアンコールの際も、ダブルアンコールのときも、二回「じゃあね」と言いました。「じゃあな」じゃなく、「じゃあね」です。これは彼の心境の変化を如実に表わしてはいないでしょうか。いつもの彼なら、言い方は不適切かもしれませんが、少し「上」から「じゃあな」と言うはず。それが「ね」になっている。「丸くなっただけだ」と言われたらそれまでで、実際そうなのかもしれませんが、ただ僕には、山中さわおが、そしてピロウズが、丸く――ではなく、少し大きくなったように思えるのです。ほんの少し。「優しく」とも違う。彼らは彼らの「小ささ」を保ちつつ、同時に「大きく」なってる。あー、抽象的だ。わかりにくい。ごめんなさい。とにかく、単純な「成長」ではなく、少しずつ「変化」している、その過程にピロウズはいるのではないか、と思ったのです。まる。もうここで終わらす。


ここまで痛みに耐えて読んでくださった皆様に、最大限の感謝と限界までの愛を。ピース。まあなんつーか、やっぱりリトバスは終盤にやったら一番映えるよね。実際。