仮面ライダー響鬼

カッコ悪さとカッコよさを融合させて、「カッコよい」モノを作るということは、まあ言うまでもないことですが、とても難しいわけでございます。少しでもさじ加減を間違うとさあ大変、カッコよすぎてカッコ悪いビーズみたいなもんが出来上がる。ただ単に五割ずつ組み合わせればいいわけでは決してない。とても繊細な「勘」が必要になります。「カッコいいモノ」を作り上げる過程に、そのような不確定要素が混ざってくれば、当然机上の論理で結果が推し量れるはずもなく、実際にやってみないことには「カッコいい」かどうかなんてわからないんですね。
仮面ライダー響鬼』のスタッフは、「勘」がとてもよろしい。滑ることを恐れない豪胆さも持ち合わせてる。仮面ライダーを「鬼」という位置づけに設定しただけでスレスレなのに、その「鬼」にトランペット吹かせるたあ、三塁側に投げた球が鬼のようにカーブしてホームの方向へ曲がっていって結局ストライク、っていうとんでもない方法です。とってもカッコ悪いのに、なぜかカッコイイ。山田芳裕が発明した漫画技法を、設定段階で採用してしまったわけですよ。なんと大胆。大胆スリー。僕はその大胆さを「ストライク」だと思いましたが、もちろん、「いやこれデッドボールだから」だと乱闘し始める人もいらっしゃることでしょう。色んな人がいて当然。でも「ストライク」だと思える人はたぶん幸せです。なぜなら楽しいから。人生楽しくないといけませんよね。敵にとどめを刺すとき、トランペットの音がちょっと上がってグワーっとなったりして、それがとても「カッコいい」ことになっておりました。これからも「ストライク」をどうかたのむ。笑って過ごそう、このクソみたいな世界を。