オクラホマミッキーマウス

サマーソニックの二日目が早々に売り切れたらしいので「Tick Show!」と僕は舌打ちしていたのですが、考えてみればサマーソニックへ行かずに家で「暑い」とわめいているだけで13000円も得をするのですよ。13000円。ある年における野比家のお年玉より3000円も多い。これはむしろラッキーなのではないでしょうか。思わずラッキークッキーハナマルキと呟いた僕の心境をご理解いただくのは容易でありましょう。13000円。13000円もあれば。なんだってできそうじゃないか。ワンカット1000円の激安美容院で13回も髪を切れてしまう。「カッコよく、男らしくカットしてください」と注文してから数十分、「はい、できました」と言われた直後に「カッコよく、男らしくカットしてください」とお願いできる。「えっ」と店員が驚いたらしめたもの、瞬時に夏目漱石をフトコロから出して「お釣りはいらないよ」とカッコつけることができる。「お釣りっていうか1000円ちょうどですよね」とかタラタラうるさい、お前はただカットすればいい。お前はカット屋だ、カットするために生まれてきたのだろう? ならば俺はカットされるために生まれてきたのだ、さあ切れ、切るんだ、それが君の響きだ。「お客さん……僕が間違ってました、切らせていただきます!」そうだ、切れ。存分に。遺憾なく。カンタービレ。「ハイ!」 ――というような寸劇を13回も繰り広げられる。よしんば12回目くらいで狂人扱いされて通報されても大丈夫、まだ1000円残ってる。取調室でカツ丼を奢ってもらう必要などまるでない。「で、なんでこんなことしたんだ」と言った刑事がショートホープに火をつけてカッコつけようとした瞬間にパッとフトコロから夏目漱石を取り出して「お釣りはいらないよ」とこちらも負けじとカッコつけることができる。「くれるの? もらうよ?」えっ、「で、なんでこんなことしたんだ」えっと、ラッキークッキーカッパ巻き――なカンジ? っていうかァ?
あっ、留置所の床って、ひんやりしてて気ン持ちいいンだァ。