仮面ライダー響鬼

この番組を30分に押し込めるのはもったいないような気がする。流行の言い方をすれば、「MOTTAINAI」。まあ短い時間に凝縮しているからこそ今の面白さがあるのかもしれないけど、ただ単純に、僕が個人的に一時間くらい見たいというだけだったりする。仮面ライダー部分は今くらいでいいんです。謎の散らばせ方も、その分量も適度で、実に見ごたえがある。普通に次を見たくなる。今週で言うとヒビキさん新フォームの情報がチラっとだけ、それでいてストーリー進行の邪魔にならず自然に出ていて、うほっウマイと思った。前作の唐突さとは比べ物にならん(なんかチベットから宅急便で装備が送られてなかったっけ?)。なんか悪の元締めっぽいのかなんなのかわからん人たちも出てたし、それと現場(ザンキさんが戦ってるシーン)との絡め方も地味でベタながら秀逸。殺陣も前作とは比較にならんくらいちゃんとしてるし(まああれほど視点がコロコロと移ってしまうアクションを『殺陣』とは言わないのかもしれませんけど、素人的目線でいうところの『殺陣』)、やはり仮面ライダー部分は今のままでよろしいと思われます。むしろ変にいじるな。
では何を増量させるべきなのか、僕のサイトを毎週日曜日に読んでいる奇特な方は察していらっしゃると思うのですが、そう、中学生日記部分です。今のところ仮面ライダー部分と直接関わってはいない明日夢くんの成長物語。千の仮面を持つ女モッチーと、年上に憧れつつも「恋」というものがいまいちよくわからないオクテ女あきらさんが、究極の鈍感野郎明日夢くんと織り成す青春群像。普通にこれだけでドラマをしたてあげられるくらいの濃いキャラクターが揃ってるんです。いずれ明日夢くんは否応なしに仮面ライダー部分と絡まざるをえず、中学生日記をやるなら今しかないんです。明日夢くんたちは高校生だけど中学生日記なんです。今週の放送でいえば、モッチーがたちばなに来店してから仕事を手伝うに至るまでの過程がまるっきり省略されていて、それはそれで「テンポの良さ」を大事にするこの番組の持ち味ではあるのですけれど、僕はそれでも、あえて、その省略部分を見てみたい。

モッチー、戸を物凄く静かに閉める。
モ「あら……あきらさん、あなたこんなところで何やってるの?」
あ「あの、安達くんの手伝いで――あっ!」
モッチー、あきらさんの制服の襟を強く掴む。
モ「何よこれ。あなた何様のつもり? 私の知らないところで明日夢に取り入ろうっての?」
モッチー、襟を引っぱる。崩れ落ちるあきらさん。
あ「いえ、あの、わたしは、イブキさんに頼まれ――いたっ!」
モッチー、お土産のスイカをあきらさんの頬に押し付ける。
モ「お土産よ……。八百屋さんオススメのスイカ。切ってみる? 真っ赤よ」
カッターナイフの音。
あ「ひっ!」
モ「言ったわよね。アタシの明日夢に近づくとどうなるかって。あなたにはわからなかったのかしら? 脳味噌ちゃんと詰まってる? このスイカみたいに。ねえ、どうなの?」
モッチー、あきらさんの頭のコンコンと叩く。
モ「確かめてみましょうか。あなたと、スイカと、どっちが――赤いか」
あ「や――やめて――」
モ「何? 聞こえない」
あ「やめてくださ――」
明日夢、奥から登場。
明「あれ? モチダ?」
モッチー、カッターナイフを瞬時にしまう。声のトーンを数段あげて。
モ「あだちくぅん! 私もお店手伝うよ!」
明「あ、そう? あれ、あきらさんどうしたの? 座り込んじゃって」
モ「なんか、疲れてるみたいよ、彼女。今日はもう帰って休んだほうがいいんじゃない?」
明「そっかあ。大丈夫?」
あ「大丈夫――です」
明「顔青いじゃない。モチダの言うとおりだよ、休んだほうがいい」
あ「……はい。今日は帰ります……」
モッチー、明日夢には見えない角度で氷のような微笑を浮かべる。


戯曲『仮面ライダー鬼嫁』なら200ページくらい即座に書けるぞ。あ、ちなみにこのエントリーですけれど、一段落目は真面目な感想で、二段落目は本音1割冗談9割の戯言ですので読み流していただいて結構ですよ。って言うまでもなく皆さん読み飛ばしてそうですけど。いえ、それが正しい。これは読み飛ばしてほしい日本語。