武装錬金ファイナル



赤マルジャンプを読み返すたび、「なんでこんなに面白い漫画が打ち切りになったんだろう?」といった素朴な疑問が湧いてくるんですけど、ほんとなんでだろう。バリバリにヤバヤバにキワキワに面白いじゃないか。それなりの量の漫画を読んでいて思うのだけど、読みながら興奮できる漫画、っていうのは実は少ない。読みながら鼻息荒くしちゃう漫画、ってのも実は少ない。伏線とか先の展開とか細かいことをグチャグチャ考えずに読み進められる漫画、ってのもこれまた少ない。終わってしまうのが本当に惜しい漫画なんてのはそれこそ一握り中の一握りだ。漫画という表現は、ただ紙の上に絵と台詞を書けばいいものじゃない。それ以上の“何か”が必要だと思うのですよ。こと少年漫画に関しては、“何か”の比重が大きくなってくる。『武装錬金』は、まあ色々と至らない部分はあったけれども、確実に、その“何か”を持っていたと断言できる。断言しちゃう。赤マルジャンプに掲載された『武装錬金ファイナル』を読めば、誰だって断言し――ちゃわない?(自信なさげ)
とにかく『武装錬金』最大の特徴である「ハッタリじみた熱さ」が遺憾なく発揮されていた。発揮、というかダダ漏れであった。全ページが熱い。巨大ロボの戦闘シーンもそう、カズキと斗貴子さんのストロベリーシーンだってそう、中盤から後半へかけてのたたみかけなんて言うまでもない。全て。全てが熱い。ファミコンソフト『エキサイトバイク』でいえば、スタートからゴールまでBボタンのみで突っ走ってる感じ。オーバーヒートなんて気にしない、前に進むだけ。そんな和月伸宏の心意気が感じられます。カズキと斗貴子さんが二人でサンライト・ハートを手にヴィクターへ突っ込んでいってからカズキが月へ行っちゃうところまで、絵の迫力・構図、テンポ、ネーム、演出、何から何まで神がかってる。先ほど書いた“何か”が、短い間ではあるけれど、凝縮されて、宿ってる。息つく暇もない。正直、和月を「凄い」と思いました。ここまでやれる人だとは思ってなかった。もちろん『ファイナル』以前の本誌連載時にも“何か”の存在を感じることはありましたけれど、最高潮をここで持ってくるとは。恐れ入った。あんたは凄い。
そしてこれで終わりではないのです。冬発売の赤マルジャンプで、僕らはまた『武装錬金』に会える。「ピリオド」と題された次回、今度こそ本当の最後でしょうけど、最終回を悲しむ気持ちよりも、喜びのほうが大きい。和月は全身全霊でこの作品を終わらせてくるでしょう。それを読むことができる。むっちゃくちゃ楽しみです。むっちゃくちゃ。