『DELICIOUS BUMP TOUR IN USA』


DELICIOUS BUMP TOUR IN USA (仮) [DVD]


ジャケットが最悪中の最悪であるなあとか、また無闇やたらに無駄なアニメーション入れやがってとか、「人種を超え、言葉を超え、日本のポップモンスターが暴れまくる!」っていうビッグマウスな帯はやめてほしいなあとか、「音楽の初期衝動を共有できる感動のDVD登場!」ってうわ裏面にまでビッグマウス進出かよ勘弁してくれよとか――とにかくネガティブな状態で見ていたのですね、このDVDを。途中までは平穏に時間が過ぎていました。アメリカでも変わらない佐藤しんいちろうさんに爆笑したり、山中さんの英語に笑ったり、アユミさんに萌えたり、ていうかヌードルスのライブがDVDで見れることに感動したり、アメリカ人どもは熱狂的だなあと思ったり。ときおり挿入されるインターバルのアニメーション以外は、なかなかいいではないか。ファンアイテムとしては申し分ない。
そんな生意気なことを考えつつ見ていた冷静な自分が、いつしかどっかへ行っちゃってて、ニューヨークのKNITTING FACTORYでのピロウズをライブを見ているうち、どんどん「わっ、わっ、すげっ」となり、久しぶりに音楽で鳥肌を立てました。というか、涙腺が緩んだ。80歳の爺さんのモモヒキのゴムより緩いことで有名な僕の涙腺ですけど、とにかく緩んだ。「Swanky Street」と「ハイブリッド・レインボウ」、やはりこの二曲は凄い。曲を演奏する前に山中さわおがグッドミュージックイズなんたらとかMCしてましたけど、そんなんは別にどうでもよくて、とにかく、「ピロウズが演奏してて観客が熱狂しててウォーってなってるライブハウス」っていう“絵”を見て感動してしまいました。「音楽の初期衝動を共有できる感動のDVD」というキャッチを、「また分不相応なビッグマウスか」と思ってしまった僕を許してください。ぶっちゃけた話、ピロウズうんぬんっていうよりも、その場の雰囲気それ自体が感動的であったような気がします。音楽と人、って雑誌がありますけど、まさにそんな感じで、音楽が鳴ってて、それを聴いてる人がいて、それ以外には何も入り込む余地がない瞬間っていうんですか。ロックンロールだ。音楽の原始的な力、原始的であるがゆえに輝く、それがロックンロール。僕はこれまで、ピロウズにロックンロールを感じたことはありませんでした(抽象的な言い方になってしまいますけど、ピロウズは“ロック”であり“ロックンロール”ではない、と思ってました)。しかしそれがこのDVDで覆されてしまった。やはり言葉がダイレクトに伝わらないぶん、音楽それ自体の力がクローズアップされたのでしょうか。でもそれ以外の「何か」があったなあ。いやはや、参った。アイキャンフィールしちゃったよ。この歳になって。


それはそうと、変なアニメーションが流れているときにかかっている音楽、ドラムの音があまりにBOSSのリズムマシン丸出しで(僕が使ってるのと全く同じ)、これはなかなか粋なチープさだなあとか思ってたら、エンドクレジットで「BGM SAWAO YAMANAKA」って出てたので、「お前か!」とか思ってついつい笑ってしまった。まだDR-5使ってるのかしら。