the pillows『MY FOOT』 ファーストインプレッションヌ

傑作と言っていいでしょう。一回聴いただけで何をほざくかワレ、としばかれそうで怖いのですけど、これは傑作ですよ。目を閉じてヘッドフォンをしつつ聴いたんですが、不思議なことにですね、自分の耳がぐんぐん大きくなって、身体のほかの部分は小さくなって、僕のまわりの小さな世界が音楽だけで占められているような錯覚に陥りました。そんなのは初めてだったのでびっくりしましたよ。「キタコレ!」っていう衝撃とも違うし、「ああピロウズいいわー」なんていう安堵とも違う。今までピロウズの新譜を聴いたときには経験したことのない感覚です。まるで初めて聴いたバンドにノックアウトされたかのようで、でもそのバンドの「匂い」は確かに僕が知っているもので、うーむ、これはなんだ。なんなのだ。単にサウンドのスタイルが変わったからってのもあるのでしょうけど、それ以上の変化があるように思います。前作『GOOD DREAMS』発売時、

僕はというと、『GOOD DREAMS』全面肯定です。まだ過渡期的な印象は否めませんけれど、それなりに傑作といってよいと思う。

ピロウズを聴いたことのない人に胸を張って勧めることはできないかもしれませんが、良作であることは間違いありません。個人的には、まだまだ改良の余地はあると思いますけれど。

と僕はこのはてなダイアリーに書きました。とても歯切れの悪い絶賛のしかたですけど、今でもそのとおりだと思ってます。「過渡期的」。『GOOD DREAMS』好きの人には申し訳ないんですが、あのアルバムは通過点にすぎなかった。
ビバークを終えたっていうことなのでしょう。ピロウズはある意味、頂上に登ることができたのです。限界を超えたっていうことではなく、試行錯誤のうえでいつの間にか到達していたという感じ。いま僕けっこう適当にものを書いてますので怒らないでくださいね。『GOOD DREAMS』で自分たちの中にある見慣れない扉をみつけて、押してみたり引いてみたりドンドン叩いたり突き破ろうとしたり色々してみたけど開かなかった。どうしよう、でも扉の向こうは見晴らしが良さそうだ。行きたいな。そんなことを考えてばかりいたのだけれど、『MY FOOT』っていう名のポケットに手を突っ込んでみたらあら不思議、もう鍵を持っていた。そんな感じか。どんな感じだ。「the third eye」の歌詞に「眩しい世界の扉が開いた / もう一度何かを始められそうなんだ」という一節がありますが、まさにそれです。光が差し込んでる。新境地っていうより、「もう一度」「始められそう」とあるように、あくまでピロウズは今までどおり等身大なんですよね。ま、これはあくまで「バンド」としての話で、山中さわお個人は「扉」の向こうにはまだまだ行けてない。それはまた別のお話。
とにかく殻を突き破った感があるピロウズ。前作は自信を持って他人に勧められる作品ではなかったのですが、『MY FOOT』は違います。「生きてるなら聴け!」というくらいのオススメレベル。おおげさですね。前作がオススメできない理由に「歌メロのほのかな暗さ」ってのがあったんですけど(なんだかんだいって歌という要素は大きい)、今作はメロディーもわかりやすくポップなものが多いです。ていうか二、三回聴いただけで鼻歌を口ずさめるってのはよくよく考えると凄い。山中さわおの作るメロディの即効性っつーか求心力はやはり底知れないものがありますよ。ざっとお気に入りをあげると、M-1「MY FOOT」(久々にワクワクできる一曲目)、M-5「Mighty Lovers」(とても、いい)、M-8「MARCH OF THE GOD」(超最高のインスト。過去最高かもしれん)、M-9「My girl」(文句なし。名曲)、M-10「さよならユニバース」(早くライブで聴きたい)てなところでしょうか。ラストの「Gazelle city」もかっこいい。いいアルバムだわ。ミックスも僕好みで、「今回は吉田仁がやってくれたのか!」って思ったら、吉田氏は最後の一曲だけで、大半が小野寺氏によるミックスでした。成長したなあ。見直した。(1月12日追記:小野寺氏は『Please Mr.Lostman』の頃からミックスを担当していました。知らなかったとはいえ、「成長したなあ」とは僕は何様だって感じでした。すいません)ただ、シングル曲の声の質感がちょっと浮いている印象を受けました(アルバム曲の声には若干エフェクトがかかっている感じ)。リミックスしてくれりゃよかったのになあ。


って、これのどこがファーストインプレッションなのだ。長すぎる。