From Saitama with love, I send you this blog

つくつくぼうしが鳴いている。ので僕はびびった。つくつくぼうしといえば蝉である。夏の終わりを象徴する蝉である。残暑ざんしょ? というダジャレが日本中を覆い始めるころに鳴きはじめる蝉である。その声が聞こえる、ということは夏が腰をあげたということなのだ。秋という名の電車が前の駅を出ました、夏は白線の内側でお待ちくださいということなのだ。お待ちくださ始めてしまったのだ。つくつくぼうしは、いわば駅付近の踏み切りの音なのだ。とここまで説明して改めて僕はびびった。夏が。夏が終わろうとしている。まだ夏らしいことをなんにもしてないのに。
待て、僕の早とちりかもしれない。落ち着いて聞いてみろ。本当に「つくつくぼうし」か? 自信をもって断言できるのか? 「僕が耳にしたのはつくつくぼうしの鳴き声です」というプラカードを持って甲子園の閉会式に乱入できるのか? ミンミンゼミが暑さでまいって「つくづく嫌になるよ、この暑さ。日射病になっちまう。帽子が欲しいね」と愚痴をこぼしているのを聞きまちがえたのかもしれない。タイからやってきたアブラゼミが「トゥクトゥクの暴走を防止しなければ」と気合を入れているのを聞きまちがえたのかもしれない。セミ語検定準5級のヒアリング力しか持たない僕のことだ。ネイティブ・セミの発音を聞き取れなくても無理はない。夏が終わるのか終わらないのか、これをはっきりさせるためには、セミ語を自由に聞き分ける能力が必要になる。今こそ駅前留学するべき時なのか。セミ前留学するべきなのか。僕は思った。セミ前留学するべきなのか。相談しようと思ったが松本はいなかった。教科書もなかった。そして夏は終わっていく。