むんこ『おいでよ みみ子ちゃん』

さて貴お前ら様、現在店頭に並んでいる「オー スーパージャンプ」は読みましたかな? 読んでいない、と。まあそれは仕方ない。僕だって普段なら「オースーパージャンプ」などという間の抜けた名前の雑誌なんて読まない。オースーパーて。ケーゲーベージャンプにしたほうが人々を戦慄させることができたのに。まあしかし今号だけは特別だ。なぜなら、僕がかねてから口をスッパムーチョにしてオススメし続けている漫画家・むんこ先生の新作が載っているからなのである。「まんがホーム」や「まんがタイム」、「まんがくらぶ」などなど、主要な四コマ雑誌にはほとんど連載を持っており、そのほとんどが看板漫画になっているという化け物作家のむんこ先生。代表作『らいか・デイズ』を読んでない貴方がもし『はだしのゲン』に出演したら「非国民!」と罵られることは確実であり、ギギギなのであり、くやしいのうなのである。そんな彼女の新作がケーゲーベージャンプに載っている。読まないはずがない。今日が祝日だったため、サンデーやマガジンと同時発売になってしまったが、んな週刊誌には目もくれず僕はサッとホイコーロージャンプを手に取った。当然だ。
四コマ誌以外に初登場ということで、元々ストーリー漫画で投稿活動をしていたむんこ先生のことだから、もしかしたらいつもとは違う一面が見れるのではないかと侃々諤々であった。主に僕の脳味噌の中で、である。『おいでよ みみ子ちゃん』と題されたその作品は、そんな我々(主に僕の脳味噌の中の)の盛り上がりを肩すかしにするかのような、いつもどおり、本当にいつもどおりの四コマ作品であった。『がんばれ!メメ子ちゃん』とタイトルが似ており、『メメ子』と同じく小さいキャラが主人公ということもあって、わざわざ新作として書くほどのもんかコレ、と始めは思った。2分後、僕は2分前の僕をボコボコに殴りたくてしょうがなくなっていた。またしてもヤラれたのである。ノックアウトだ。これで何回目だ。むんこ作品にノックアウトされるのは。というか、どれだけ僕の琴線をぶん殴り倒せば気がすむのですかむんこ先生。ネタバレになるので内容は書けないけれど、とにかく彼女は「普通の日常」を描いている。漫画的脚色や誇張は当然ある。しかし基本は一貫して「普通」だ。ある意味平坦とも言える構成に、読み進めていくうちに慣らされてしまい、結果として「不意打ち」をくらいノックアウトされる。いつものむんこパターンだ。その「不意打ち」だって大したことじゃない。死角からいきなりバットで殴られるなんて過激さはなく、「膝カックン」程度の、他愛ないものだ。でも癖になる。どんどん膝カックンしてほしくなる。これは愛か。愛なのか。
とにかく読んでいただきたいのだが、疑問なのは「なぜオースーパージャンプ?」の一点だ。四コマ雑誌は主に大人が読むものだから、同じく大人をターゲットにした「オースーパージャンプ」に掲載されるのは間違いじゃないかもしれない。でもむんこ作品は大人だけでなく子供にもアピールできる「壁」のない漫画だと僕は思っているので、少しだけ「もったいない」と感じた。「オースーパジャンプ」に子供は手を出せないし、出そうとも思わないだろう。ある意味「漫画ゴラク」的立ち位置にある雑誌だ。次に四コマ誌以外に進出する機会があるなら、思い切って少年誌へ飛び込んでみてほしい。最近超低空飛行の「週刊少年サンデー」あたりはどうか。僕は何としてもむんこ先生を知ってほしいのだ。「なんでもない日常」の魅力に触れてほしいのだ。奇をてらって人目を引くことが多くなってしまっている漫画界を、偉大なる普通の爆弾でかき混ぜてほしいのだ。