the pillows 『スケアクロウ』

スケアクロウ(初回限定盤)(DVD付)


1年半くらいぶり(ですか?)のシングルが発売されました。ある程度ピロウズと距離を置くようになって久しいですが、そういう状態だと発売日が早く訪れるような気がするのでなんとなくお得です。エイベックスへの移籍で心配していた音楽制作面での不安はずいぶん前に解消されましたが、まだ一つ残っていたのがアートワーク面で、ジャケ写はもちろんのことCD全体のデザインが変わってしまうのではないかと地味にブルブルしていました。キング時代の(「the pillows」ロゴができあがってから)デザインは統一感があって好きだったのもですから。でもそれも杞憂に終わりました。「Avex trax」マークはあるものの(当たり前だ・笑)、キング時代を踏襲した作りになっていて安心。こういうどうでもいいところで変にこだわってしまうのは僕の悪い癖です。
毎回恒例全曲感想でもしますか。もちろん注釈なんぞ入れないのでファン以外はお断りですごめんなさい。

スケアクロウ

ライブで初めて聴いたときは「くれゆくそらー」「またたくほしー」などという従来の山中節ではなかなか使用されないストレートな表現が耳について、曲はいいなあと思いつつも「/(^o^)\ナンテコッタイ」といった微妙な気持ちでありました。でもこうしてCDで聴いてみると、悪くない。むしろ良いのではないか。そう思うようになりました。イントロの真鍋氏のギターフレーズ、微妙なチョーキングがたまらない。「じょんわりふあんう〜うウ〜」っていう。このフレーズだけでこの曲は83%くらい表現できてるんじゃねーの、ってくらいグッド。そんで歌が始まり、サビがあって、いつものピロウズだったらワンコーラス終わったあと、すぐ2番に入っていきそうなもんですが、焦ることなくこの真鍋フレーズがちゃんと入っていて、これまた良いですね。サビまでの展開はちょっと急いじゃってるかなと思いますが、曲全体の構成は落ち着いてて良いです。ストリングスもいいんじゃない。ちゃんとギターの音が聴こえますしね。弦だけでゴリ押しするようになったらロックバンドとして終了だと思いますが、こんくらい控えめなら全然アリだと思います。ギターソロの入りもめっさカッコイイ。あんな音出してみたい。
佐藤シンイチロウさんのドラムは最早名人芸の域に達してるのではと言いたくなるほど「己を殺して曲を生かし」てますね。曲にあったフレーズ、パターン、強弱、そういうのを持ってくる天才。地味に聴こえますが僕は凄いと思います。歌い出し前のフィルインなんて、もう最高。「ッダッ ダダっ」というたったの三音ですけど、タメ方というか休符の取り方というか、絶妙。大好き。間奏終わりらへんの「ダカダツッ ダカツッ ダカダカダカ」っていうオープンハイハット混じりのフィルイン、彼のオハコとも言えるフレーズですが、んもう、僕これが好きでたまらない。佐藤はホンマピロウズの肝やで。五臓六腑に染み渡るで。
さて歌詞。英語に疎い僕はタイトルを知るとさっそく辞書を紐解いたのですが、ふむ、「かかし」という意味ですか(CDジャケットそのまんまかよ・笑)。え。これはさわおピロウズに向けた歌だと小耳に挟みましたが、そう考えると「さわおさわおだ」という思いを強くしますね。自虐混じりに己を表現するあたり、さすが。「旅を続けるつもりだよ / キミを連れて」とか、観覧車で一人で暮らしてた人にしてはアグレッシブだなあと思いましたが、「かかし」って言葉を頭の隅に置くと、なかなか面白い歌詞になってこなくもない。この曲でいう「かかし」ってのは、僕が思うに「Lostman」なんでしょうね。そう考えるとしっくりくる。

「年をとって忘れられてく / やせた枯れ木に / Please Mr. Lostman / 星が咲いていた」(「Please Mr.Lostman」)
「暮れ行く空 からかう風 / 二人の手は冷たいけど / 放さないで歩いていたい / 誓いもなく信じあえた」(「スケアクロウ」)

おっと、好きになってきたぞこの曲(笑)。でも「I want call you」てのは……。

BOYS BE LOCKSMITH.

「ラジオスターの悲劇」を思わせる入り方のこの曲、ピロウズには申し訳ないんですが僕のベスト・トラックです。だって単純にかっこいい。ピロウズパワーポップ。こういうのがあるからピロウズファンはやめられない。おそらく力を抜いて作った曲だと思いますが、それゆえに良いというかなんというか。バグルス的Aメロはとっても軽快でウキウキ、いい感じに歪んだギター(変にフレーズに凝らないところがむしろマル)、サビのさわお的コーラス(オクターブ低い音でのユニゾン&あるべきところに配置されたハモリ)、サビ終わりのメジャー→マイナーのコード進行、基本ルート弾きでありつつところどころでスパイスを効かせるベース。うむ、全てがポップ。バンドしてるねえ、って感じ。歌詞はいつものヒネクレさわお節なのが「力を抜いたピロウズソング」のいいところです。「奪われてく形のない煌きに / まだ大騒ぎしていたいのさ」「僕はキミにふさわしいかも」とかね。「かも」て。こんな感じのパワーポップでアルバム作ってほしいのですが、それは無理かなあ。誰もが笑っても僕は喜ぶよ。アゥイエー。そういやアゥイエーがないなこのシングル。

つよがり

ミスター・チルドレンのカバーらしいのですが、邦楽に疎い僕はもちろん原曲を聴いたことがありません。そんな僕にはとってもピロウズ的な曲に聴こえてしまうんですが、ちゃんと歌を聴いてみると、やっぱり山中さわおとは違う、桜井先生の世界観が広がってますね。ヘタレに見えて押しが強い。さわおだったら相手がつよがっているところまで見抜けない。「彼女がつれないのは全部俺のせいアゥイエー」って感じになりそう。凄い勝手なこと書いてます。真鍋氏と佐藤氏の仕事は100点。

総評

いいシングルでした。期待していなかった分、ちょっとピロウズに謝りたいくらい良かったです。さて次はアルバムか。肩の力が抜けたポップ・アルバムを期待してます。でも力抜きすぎてノンフィクションになるのはカンベンな。あとディジェネレーションもカンベンな。『ランナース・ハイ』再び! みたいなことにならないかなあ。