五月晴れにぴったりな(感じのする)音楽

いつの間にか発売日を迎えていたザ・ピロウズのニューアルバム『Wake up! Wake up! Wake up!』。先日出たシングルのカップリング「BOYS BE LOCKSMITH.」が、意外なほど――何様だっつー書き方ですが――カッコよく、少しだけ冷えていたピロウズへの思いがオイルヒーターで暖められる部屋のようにだんだんと熱を取り戻してきたのでありました。でも先週「そういえば来週だね」と言われ「何が?」と素で思ってしまったのは内緒です。曲目などが発売された時は「ドゥードゥー?」「プレジャー?」「シリアス?」「スキニー?」「/(^o^)\」といった感じだったのですが(後にドゥードゥーがドードーであることが判明する)、ここ数年のピロウズ新譜では、曲タイトルがアレなのが恒例みたいな空気が僕の周りには漂っているのでさほど心配はしていませんでした。仮にドードーがドゥードゥーであったとしてもアリなのではないかと思ったほどでありました。ドゥードゥーアゥイエー。アリだ。あの「ROBOTMAN」だってタイトル知ったときは「/(^o^)\ナンテコッタイ」でしたけれど、蓋を開けてみればとてもいい曲で、僕の大切なピロウズソングのひとつになってますしね。タイトルなんてプロ野球選手にとっての背番号でしかないのだ。重要なのは中身。音楽。当たり前のことなんですが、ようやくわかってきたように思えます。
とりあえずファースト・インプレッションとしては、「いい!」といった感じです。前作『MY FOOT』で、ピロウズ流ギターロックとして一つの到達点にたどり着いた――ネガティブな見方をするのが大好きな僕は、たどり着いて「しまった」という捉え方をしてしまうのですけど――彼らが、どう次の一手を打つのか。ピロウズから離れていた時期も心の片隅で少しだけ心配したりしていました。二本のギター、ベース、ドラム。この構成で創ることのできるアンサンブルとして『MY FOOT』はかなり洗練されていました。各楽器の音それぞれを引き出しつつ、ポップ・ミュージックとして破綻なくまとめる。なかなかできることではありません。で、今作はその「なかなかできないこと」をあっさりポイしちゃった。アルバムをひととおり聴いて驚きましたよ。『MY FOOT』的空気がほとんど感じられない。潔いなあ。もちろんピロウズ的にはんなメンドクセーことは考えずに、曲を生かすにはどうしたらいいか、ってところを追い求めた結果出来上がった音なのでしょう。そう、曲がいいんですよこのアルバム。歌詞はまだ読んでないので無視しますけど、単純にメロディーが綺麗だったり力強かったりで鬼のようにポップ。そりゃこんな曲ができたら変にいじくろうとは思いませんよね。シンプルなアレンジでガンガン突っ走ってます。良質のポップ・アルバムを聴くときにいつも起こる現象である「アレ? もう終わり?」が今回来ました。アルバムのトータル・タイムがどんくらいなのかは知りません。でもいい意味でサーっと流れていきます。いくつもの印象的なシーンを耳に残しつつ駆け抜けていく。何回も聴きたくなります。
ていうかね、僕が前々から言ってた「ピロウズパワーポップアルバム作ってくれないかなあ」という願望にかなり近いデキなんですよ。これが嬉しい。「YOUNGSTER」なんてモロにパワーポップだし。僕の大好きなUSのインディーポップな匂いがプンプンする。そりゃ夢中になるっていう話です。タイトル見たときはどうなることやらと思った「プレジャー・ソング」も、ここまで山中さわおがストレートにメロディーを引っ張り出してきたことに驚いちゃうほどのポップ・ナンバー。傑作といえるほど突出したものはないかもしれない。でも「大好き!」と笑顔で言えます。僕が好んで聴くパワーポップのバンドと同じようにね。ジャケットもチープな感じで洒落てるじゃないですか。ほんと新宿ディスクユニオン本館6階に埋もれている名も知れないポップバンドのCDみたいなジャケット。500円で買えそう。とってもいいと思う。大好きです。車に乗っている人たちがちょっとずつ装いを変えて次々と走ってきている様子も、このアルバムを象徴しているように思えます。ピロウズが演奏する上質なポップ・ナンバーが、次々と僕を楽しませてくれる。本当の本当にいい意味で力が抜けた、ポップ・モンスター(笑)ピロウズの本領発揮アルバムですよ。『HAPPY BIVOUAC』の頃を思い出します。
さて、聴きこんだら毎回恒例全曲感想を書きますので覚悟しておいてください。