最後まで読んでも特に得るものがない読み物(俗に日記という)

梅雨前線異常なしといった感じの天気でありまして、アウトドア志向の僕としてはまことに不本意ながら室内での生活を強いられております。しかし先ほど食料の蓄えが底を尽きまして、ガッシガッシと餓死へ一直線になりかけてしまい、雨の中、さんさんと照る日光の雨の中、アウトドア志向の僕は勇敢にも傘を指さずスーパゥア・マーケットへ出かけたのであります。その店の巨大なフロアの片隅にこじんまりとしたパン屋がありまして、海原雄山が顔をしかめる程度の美味しさを提供してくれるというのに値段は安く、たびたび僕は贔屓にしておりました。それまで「炭水化物といえば米、それ以外の化物は認めない」というスタンスをとっていた僕に、パンの魅力を教えてくれた店でもあります。ああ、パン。好きだパン。米と離婚することはできない。でも君のことも愛しているんだ。こんな僕をイーストするかい。脳内小芝居をやったかやらないかわかりませんが、パンがものすごく食べたくなったのでその店へ直行しました。「どーおーしーてーねえコンピュータあー」と鼻歌を脳内にうかべながらパンを物色し、さてレジに行って、えっとお財布お財「当店は6月30日をもって閉店いたします」布どこだったっけなお財
閉店?
不意打ちで視界に入ってきたその文字にカバンの中をさぐる手が止まります。レジ係の店員さんはそんなんおかまいなしに淡々と読み上げ登録。「○○○円でございまーす」と店員さん(推定45歳)が告げても、僕は若干固まったまま。ここで僕が「閉店するんですか? 残念だなあ、ここのパン好きだったのに」なんてトークできれば店員さん(推定少女)「えっ、うれしい。抱いて」でレッツリバーサイドであるのに(注・リバーサイドとは、このスーパーの近くにあるラブのホテルである)(注・付近に川はない)、アウトドア志向――つまり山の男である硬派な僕にそのようなチャラけたことができるはずもなく、店員さんの望むがままの金額を支払い、ありがとうだとかございますだとかなんとか言われながらボーゼンとその店を出たのでありました。
雨はいっそう強くなって、空を見上げると目を開けることすらできません。閉店? そんなバカな。僕はこれからどこでパンを買って食べればいいのか。ヴィ・ド・フランス? 僕はフランス語が話せない。神戸屋? 僕は関東人だ。あの店が、あの店だけが僕を迎え入れてくれたというのに。あと10日あまりで無くなってしまう。頬に伝うのは雨か、涙か。汗でした(オチ)。