WHO 自慰

毎年この季節になると「ロックは部屋で聴くもんぜよ!」と開き直って声高に主張する海無し藩郷士の僕であるので、もちろん今年もコワがタカに主張する。だいたい何がロックフェスティバルだ。なにがフジロックフェスティバルだ。気取りやがって。こちとら男性器の皮が豊富すぎるという不治の病を患うことによって亀の頭が永遠にロックされとるんじゃい! 僕is不治ロックじゃい! 畏れおののくがよい。僕が立っている場所が、僕が呼吸する場所が、もう「僕が存在した」というだけでフジロックフェスティバル会場になってしまうのだ。僕が財布の小銭をばらまいて気まずくなってしまったスーパーのレジ周辺だって当然フジロック。見よ、後ろに並ぶフジロックおばさんの眼光の鋭さを。百円拾って十円拾って一円拾って拾い損なって拾えたと思ったらまたばらまいてフジロック。このギスギスした、このヒリヒリした、思わず乳首が、思わず乳頭が立ち上がってしまう、この雰囲気こそロックンロールだ。そうなのだ。立ち上がってしまうのだ。人類だけではなく、乳類までもがスタンドしてアップしてロックしてロールする。僕がそこにいるだけで。なんということだ! こんな僕が実際にフジロックフェスティバルの会場に赴いてしまったら何が起こるかわかったもんじゃない。だから僕は自宅で様々な部位をスタンドさせ、ロックしてロールしティッシュペイパーを消費するのだ。君らの安全を考えてのことなのだ。ああ霊峰富士、僕と同じく頂上が万年かぶっている君よ。君は今、何を思い、何を考えそこに鎮座しているのか。ああ皮かぶりの君よ。ここからじゃ君の姿がよく見えない。