MEN AT WORK

今日も今日とてラーメンである。さきほど贔屓の店で食べてきた。近ごろ食いすぎている気がしないでもない。なにせ三日で四食ペース、それもほぼ同じ店の同じラーメンを注文するのだから始末におえぬ。このままではいかん。栄養バランスが云々とかそういう問題ではなく、新陳代謝がおかしくなって髪の毛の代わりにドタマからラーメンが生えかねない。毎朝枕元に散乱する抜け毛ならぬ抜け麺をじいと眺め、はあ、俺もそろそろハゲるのかなあなんて暗い気分になりかねない。今日の朝飯はつけ麺ならぬ抜け麺だチックショーなどと腹を満たす羽目になりかねない。美味しい、味をしめかねない。もっと美味しくせねば。さっそくつけ汁の研究を始めねばなるまい。自分だけで楽しむのはもったいないな。ゆくゆくは「正真正銘自家製麺」をウリにしたラーメン屋をオープンしよう。独特の食感が話題になり行列が絶えない店になる。雑誌の取材も来る。「この麺は何をベースに作っているのですか?」「そうですね……言うなれば、僕自身、カナ」「ワア職人発言カッコイイ」「ははっ大げさですヨ」などといったインタヴューが二万字掲載されるのだ。僕らのラーメンは、僕ら自身なのだ――なんてキャッチコピーつけられて表紙まで飾っちゃって。飾っちゃったりなんかしちゃって! フフフフ馬鹿か! 僕はじつに馬鹿か! 麺がドタマから生えてる男が営むラーメン屋なぞ誰が行くものか。僕だって食べたくない。こんなことを書いてたらさっき食べたラーメンすら不味かったような感覚に陥ってきた。ああ麺屋嘉助の店主よ、許したもれ。あなたの作るラーメンはとても美味しい。うどんに喧嘩を売るかのような太い麺を、濃厚な魚介トンコツスープでさりげなく、しかし力強く彩る――ああ、たまらない。お腹はいっぱいであるはずなのに、また行きたくなってきた。ごちそうさま、と伝えたときの店主のはにかんだ顔。微笑もてラーメンを為せ! 爽快な言葉だ。また明日も行こう。