the pillows『OOPARTS』(全曲感想)

OOPARTS【初回生産限定盤】
正直全く期待していなかったんですよ。僕のピロウズ熱が2000年代初頭に比べると見る影もないほどクールダウンしていることは自覚していました。それでも日本武道館での20周年記念ライブを見に行けば、少しはフィーバーをおこして僕周辺の気温が4、5度あがり「地球温暖化の原因になってサーセンwwww」とG8に謝罪する準備までしていたのに全くそんな必要はなく、「アニバーサリーなライブというよりは普通のワンマンライブを見たなー」などという非常に冷静な、そしてピロウズファンとしては寂しい感想を抱くだけで、これまでか、僕とピロウズのあいだの特別な関係は消えてしまったのか――ああピロウズ子、僕と君はもうやり直せないのかい――そんな軽口も叩けないくらいピロウズへの興味は薄れてしまっていました。だから9・16の1ヵ月後に新譜が出ると聞いても冷静と冷静のあいだ状態。武道館のライブがあったからこその反動なのか、前作『PIED PIPER』発売時よりもニューアルバムへの期待値は低かったと言えましょう。……なんだかんだで発売日に購入してプレイヤーにCDをセット、その数分後には全耳に全神経を集中していた野郎がよくほざいたものですよ本当に。カッコいいじゃないかこのアルバム。ピロウズだからといって意識しすぎてはいけませんね。先入観をもって音楽を聴いてはいけないとわかってはいたつもりなのですが、『LITTLE BUSTERS』や『Please, Mr.Lostman』といったアルバムが僕にとってあまりに特別すぎて、どうしてもある種の「枠」をピロウズに対して設定してしまう。バカですよね。んな小難しいこと考えず、単に「好きなバンドの新譜」として聴けばいいだけの話なのにね。2曲目の「YOUR ORDER」で横っ面ぶったたかれましたよ。本当に山中さわおには敵わんわ。でもジャケ写だけは文句言いたい。鉄塔をメインに据えるっていう安直さを嫌ったんでしょうけどやっぱりダセーよ(笑)。


さあ、ピロウズ好きな人もそうでない人も漏れなく置いてけぼりにする全曲感想を書いてみましょうか。

01.Dance with God

再生し始めて流れてきたドラムのフレーズに、「あれ、間違えてギターベイダーのアルバム買っちまったのか?」と思ったのは僕だけではあるまい――と冗談は置いといて、こういう落ち着いた雰囲気の開幕はピロウズにしては珍しいですね。前奏のドラムがカッコイイ。ダカダッダダダダダダの連発で渋く盛り上がっていくところ。いまやピロウズのオハコと言ってもよい二本のペロペロギターフレーズの絡みも味があって良し。開口一番「瞬きなんて忘れちまえよ/乾いた目でオレを見ろ」と歌いだす山中さわおに若干戸惑いを覚えつつ(というか引きつつ)、サビ前の「キュウウウン」ギターに単純に興奮を覚える。カッコイイですよ。ギターソロのとこはソロよりもバックのギター・ベース・ドラムのズンズンくる感じが迫力じゅうぶん。最後「Dance with god!!」って叫んでしまったのがちょい残念か。その辺は人それぞれの好みですよね。僕は最後まで渋くいってほしかっただけで。歌詞全体としては「ちょっとなに言ってるかわかんないです」といった感じ。

02. YOUR ORDER

リーダーズ(もしくはアンプス)風のギターで静かに開幕する曲。ピロウズ流直球ロックンロールですね。音楽を聴くとき、歌詞のことをあまり持ち上げたくはないのですけれど、この曲の歌詞は無視するわけにはいかない。

ニューオリンズから戻った
キミの猫が大人びた顔で
ファッツドミノから習った
ピアノを披露してみせると言う


変だろ 笑うけど この感じ


好きな音を鳴らして
音楽と呼べば良い

久しぶりに山中さわおの歌詞でガツンときましたぜ。思わず歌詞カードを開いちゃいました。前作は歌詞カードに触ってもいなかったのに(笑)。「好きな色を選んで/何度でも混ぜれば良い」とか「嫌いなモノを嫌って/嫌われてしまえば良い」もなかなかクる。最後人生にまで言及しちゃってるのが、長くバンドやってる人間の書く歌詞だなという感じ。個人的にはその一節はいらなかった。曲はポップ丸出しで、ストレートにメッセージが飛んできますね。「アンアンアアンアンアン」だって! 超ポップ。サビ終わりの「ジャーン ジャーン」のコードが、たまらなくカッコイイ。「C」から「F#」にいってるのかな。僕が「オルタナティブ」だと捉えているのはまさにこういう音。ひねくれポップと言い換えてもいいですけど。この「F#」がアルバム全体のハイライトかもしらん。こんな偉そうに書いておいてこのコードが「F#」じゃなかったらまじごめんなさい。

03.メロディー

全曲の感想を書くとか風呂敷広げといて申し訳ないんですけど、この曲は特に書くとこなかった(笑)。

04.Lemon Drops

まだアルバムをガッツリと聴き込んではいませんが、現時点で僕にとってのベスト・トラック。なぜかって、超ド級のポップ・ソングだからさ! 「さ!」って何でそんなにテンションあがってんだって感じですが。バンド全体でガツガツくるイントロ、あまり目立たないながらも確かに曲を彩っているハモリ、これでもかというくらいメロディアスなサビ。ディス・イズ・パワーポップ! Bメロ省いたり、半ば強引にサビへ突入することが多い最近のピロウズに慣れていると、AメロがありBメロがありサビがありっていう王道展開が逆に新鮮になってくる。特にドラムがいい意味で「ベタ」で素晴らしい。Aメロでのハイハット・プレイ、たまりませんな。サビでのライド・シンバルも非常に良い。ギターソロ前のタムもカッコいいし。フィルインもいちいち「そう、それしかないよな!」っていう(僕の)ツボをついたフレーズ。曲のよさを最大限に引き出す佐藤シンイチロウ先生には脱帽するほかありません。ギターソロもオクターブプレイのみで、非常にシンプルながら曲の展開にピッタリなもの。ザ・ピロウズな曲だ。

05.FOXES

ヘンテコリンなギターリフが妙にクセになる曲。色んな音が入ってたりドラムの定位を左右に振り分けたりと音遊びが面白いんですけど、やっぱりこの曲はギターに耳がいってしまう。ギターソロ入り始めに聴こえるチョーキングのエロさといったら! 「チュワイ〜〜〜〜ン」。ムッツリスケベにしか出せない音ですよ。僕が女だったらかなりいかがわしいことになりそうだ。僕は男なので多少股間がいかがわしくなるだけで済みました。済んだのか?

06.Beyond the moon

苫小牧に入港するさんふらわあ号を見た山中さわおがその美しさに心奪われ書いた曲というのはもちろん嘘で、本当は「Lemon Drops」と並ぶ僕のお気に入りナンバー。綺麗なモヤのかかった森を思わせるギターにベースが続き、ドラムのフィルインでパッと一気に情景がクリアになる。そしてツインギター! もうここでノックアウトされちまいました。くわえて歌詞の内容が山中さわお丸出しの究極・後ろ向きソングとなれば、好きにならない理由がありません。自分を三日月にたとえて、「キミ」であるヒマワリとは決して一緒に輝けないと歌っているんですが、「星に励まされ今夜も青く光るよ/振り向かれないけれど」て。振り向かれないけれどて。あっさりと言いやがる。ギターソロから途切れず「涙を見せずに〜」の部分を彩るギターが非常に美しい。三日月君の気持ちがあふれ出してしまったかのようなフレーズ。ラストの「ビューリホーサーンフラワー」もキマってますね。カタカナで書くと非常にカッコ悪いけれども。ちょっと早めのフェイドアウトが残念です。もっと聴かせてくれと。あと5分くらいやってもいいよと。

07.ジョニー・ストロボ

静と動がはっきりして単純にカッコイイ曲です。「一瞬で燃え尽きる流れ星でも/何かを照らしたんだ/ストロボのように」って歌詞がありますが、曲全体がまさにその言葉を表現しているかのよう。シンプルなバンドサウンドの中でちょこっとだけスパイスを効かせているベースのフレーズがいいですね。ギターのアルペジオで終わるのってピロウズにしては珍しい気がする。新鮮です。

08.雨上がりに見た幻

ベストアルバムはおろかシングルさえ買ってなかったので、初めてこの曲をきちんと聴いたのは9月16日、日本武道館でのライブ演奏でした。正直に言うと、あまりピンとこなかったんですよね。「俺らの歴史ソング!」の匂いが濃すぎて。でもライブが終わって、アンコール時のお決まりで客がピロウズの曲を合唱するじゃないですか。もちろん僕はそういう慣わしが嫌いなので顔を歪めかけたんですが、その時流れたスタジオ録音版「雨上がりに見た幻」は、不思議なことにちょっと前ライブで聴いたものより良かったんですよ。「叶ったら/叶ったら」のとこでグッときたりなんかして。ある意味“体温の低い”スタジオ版が僕のテンションにはしっくりきたんでしょうか。「ハイブリッドレインボウ」もテンポが速くてノリノリのライブより、地に足がしっかりついているスタジオ版のほうが好きですしね。何が言いたいかというと、この曲、嫌いじゃないです。

09.LIFE SIZE LIFE(The bag is small,and I don't enter)

さあ皆、アゥイエーの時間だ。にしてもこのアルバムは前置きが長い曲多いな。

10.Primer Beat

「LIFE SIZE LIFE」から間髪いれずに軽快なスネアの音。いいじゃん。アルバムを締めるのにふさわしいアップ・テンポな小品ですね。小品なんて言ったら失礼かもしれませんけど。わざと舌っ足らずに歌ってる山中ボーカルが、なんつーかロックンロール。「黄昏てんだ」のあとのドラム・ソロ&ジャジャジャジャがカッコイイ。サビのランニング・ベースが疾走感をより高めてますな。ジ・エーーーーンド。

終わりに

以上10曲37分のいいアルバムでございました。3分半以下のポップ・ソング目白押し。やっぱり10曲入りのアルバムって好きです。ウィーザーの1stとかもそうですけど、ポップ・ロック・アルバムにちょうどいい曲数ですよ。いい意味での軽さ。自分にとって「特別」である時期のピロウズ作品とはやっぱり比べられないけれど、今のピロウズもやっぱりいいもんです。機会があったらツアーに行ってみたくなりました。久しぶりの更新なのにこんな長くなってしまい、腰が若干痛いです。なぜ腰にくるのか。歳か。TOSHIなのか。そんな僕に1日遅れの誕生日プレゼントをくれたピロウズ、ありがとう。