2010年 僕オブザイヤー

毎日毎日僕らは鉄板の上で焼かれても構わねーくらい寒い今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。僕はいといえば、暖房のスウィッチを押してもエアコンが反応してくれないという面白イベントに遭遇しており、イヌイット級の耐寒性能を持つべく修行中の身です。とはいえ一朝一夕に植村直己へクラスチェンジできるはずもありませんから、基本的には部屋の中でガタガタ震えております。そんな僕を励ましてくれるのはやはり、ゲーム・漫画・音楽というインドア・エンタテインメントの三銃士であります。前置きが長くなりました。僕の、僕による、僕のための2010年僕オブザイヤーを発表したいと思います。

ゲーム・オブ・ザ・イヤー

スプリンターセル コンヴィクション - Xbox360 スケート3 - Xbox360
どちらもXBOX360ソフト。左が『スプリンターセル コンヴィクション』、右が『skate3』です。前者はサム・フィッシャーというおじさんが、なんか色々あってブチギレ状態になり、その割にはこそこそ物陰に隠れてシコシコ敵を倒していくゲーム。「スニーキング・アクション」というジャンルになりますが、んなこたあゲームに詳しくない人にとっちゃあどうでもいいことですね。いかに見つからないよう進み、いかに裏をかき、いかに気づかれないまま敵を排除できるか。隠れられる場所、登れるオブジェクト、敵の気をそらすための小道具を駆使して注意深く進んでいくのが楽しい。ストーリー上の演出もハリウッド的な派手さに満ちており、物語に没入できます。一人プレイモード自体は10時間もあれば終わるのですけど、その後はオンラインで世界の人々と協力もしくは対戦。知らない人とコンビを組み、連携がズバっと決まったときの気持よさといったらたとえようがないほど。逆に、じっくり攻めたいのにガンガン突撃しては戦闘不能になる脳みそ筋肉ガイジンを頑張ってフォローするのも楽しいものです。
そして『skate3』なのですが、もはやこのゲームのいいところをここでピーチクパーチク言ってもしょうがないですね。三作目にもなると、面白いゲームを求めている人は既にキャッチしているでしょうし。『3』も前作の正当な進化版といった感じで、素晴らしいデキです。とはいえ合う合わないはもちろんあるでしょうから、体験版を見かけたら是非ダウンロードして遊んでみていただきたい。慣れてくると自分が考えているように画面上のキャラが動いてくれます。そういう「繋がる」ゲームって、じつは珍しいのです。WiiKinectなど、直接画面に関われるゲームとは違った全能感。昔ながらのコントローラでしか味わえない感覚は、たしかにあります。
他にも色々楽しいゲームがたくさんありました。僕はXBOX360以外のソフトは遊んでませんが、それでも消化しきれないくらい。WiiPS3にも面白そうなゲームはあるのに、360だけでいっぱいいっぱいです。『電脳戦機バーチャロンフォース』はシンプルながら奥深い対戦ゲームで息長く遊べそうですし、『Halo:Reach』もさすがは大ヒットシリーズだなといった完成度の高い一人称視点シューティング。『End of Eternity』は、日本の開発会社も海外には負けねーぞという意地をみせてくれたRPGでたいそう楽しめました。Windows付属のピンボールゲームにハマった経験のある人なら絶対にやりまくってしまう麻薬のようなゲーム『Pinball FX2』も忘れてはいけません。
ゲームだけでどんだけ語る気だ。

漫画オブザイヤー オトコ編

ベイビーステップ(1) (講談社コミックス)
勝木光ベイビーステップ』。週刊少年マガジンで連載中の本作品は、地味ながら、じつに面白いテニス漫画です。テニスに出会った主人公がきちんと努力する様子をきちんと描き、着実にその努力が報われていく。これ、当たり前のことじゃねーかと思ってしまいますけど、最近の少年漫画でその描写ができているのってかなり少ないです。欠点は地味であるところ。画力がないわけでは決してない。ただ、いわゆる「少年漫画」としては派手さに欠ける。必殺技なんて百八どころかひとつもありません。大ゴマ使って「ドン」もありません。しかし、主人公が一皮むけたところなどの重要な場面では、それが読者にしっかり伝わるように作ってあります。『ベイビーステップ』にとって「地味さ」とは逆に長所であるかもしれません。これからも地道に続けていってほしいものです。

漫画オブザイヤー オンナ編

となりの怪物くん(1) (KC デザート)
最近ヒットする少女漫画のパターンというと、「一般の人には馴染みのない・もしくは敷居が高い何か」と「少女漫画テイスト」をかけ合わせたものが多いように思えます。『ちはやふる』や『のだめカンタービレ』とか。偉そうに言っといてなんですが、その二作品以外思いつかねえ(笑)。掲載誌は少年漫画雑誌だけれど、作者は少女漫画で有名な『ましろのおと』もあるか。競技かるたやクラシックや三味線を深く掘り下げることで、普段少女漫画に興味を持てない人(主に男性)を引き込んでいる。
ろびこさんによる『となりの怪物くん』は、その流れとは全く関係ありません。普通の高校生が普通に繰り広げる普通のラブコメ。ただ、その「普通」を、ものすげえ僕好みのキレイな絵で描いている。正直、「無理あるだろ―」って展開があったりもしますし、キャラクターの性格があっちいったりこっちいったりしてて、ストーリーとしては散漫としています(その点、「普通ラブコメ」の大ヒット作『君に届け』とは比べられないくらい)。しかーし、だがしかーし、そんなん気にならない。僕にとって少女漫画というのは、いかに「絵」でゴリ押しできるかのもの。印象的なヒトコマがあればそれでよい。ある意味画集を見るときの感覚に似ているかもしれません。僕の好きな絵柄で、僕の好きなラブコメをやっている。それ以上何が必要か。

音楽オブザイヤー

NEW MARS 何度も恋をする
6月にmy way my loveの『NEW MARS』(左)を試聴したときは、「あーこれもう今年一番だわ―」と思ってしまったのですが、その一ヶ月後にスクービードゥーの『何度も恋をする』(右)を聴いてびっくりしてしまいました。僕が昔から追いかけている二つのバンドが、同じ年の同じ時期に両者ともキャリアハイともいえる素晴らしいアルバムを出してくるとは。驚愕驚喜。音楽の路線としては全くの別物ですし、甲乙つけられるわけがなく、どちらもオブザイヤーとするほかありませんでした。マイウェイの『NEW MARS』は、ロックが好きな人なら絶対に聴いておけとしか言えないくらいの好盤。1曲目のド頭から「あ、このアルバムは良いものだ」と思えるなんて、なかなかできない体験です。轟音ギターでズンズンオラオラのイメージが強いと思われるマイウェイですが、実はそんなことはなく、非常にポップセンスにも優れたバンドであることは、これまでの作品からも聴きとれました。『NEW MARS』は轟音とポップのバランスが実にいい具合に取れています。自信を持って他人にススめられるマイウェイって、実はこれが初めてかもしれない(笑)。このアルバムについて単独でちゃんと記事書かないとなー。近いうちに。ええ、近いうちに。
そしてスクービー。これまた1曲目のド頭からズッポリはまりました。僕の求めていたスクービーが、おったのです。ここ最近、「ファンカリズモー」だかなんとか言って、ロックとファンクの最高沸点がどうとか主張していたスクービー。ヒネクレものの僕はそういう口上を「うるせー」としか思っていませんでした。変な造語なんて使わなくたってスクービーがファンキーでロックなバンドであるのはわかりきっていること。音楽だけでわからせてやればいいのに、そしてそれが出来る数少ないバンドなのに、と残念な気持ちになったりもしていました。発表する曲自体はずっと変わらず素敵なものばかりだったんですけどね。
『何度も恋をする』には、今書いたような「音楽を聴く上で余計な要素」が無いんです。スクービードゥーという素晴らしいバンドが、素晴らしいラブソングたちを、スルっとカッコよく演奏している。これだけで十分。最高ではありませんか。果てしなくキャッチーでありつつ、音楽マニアも唸らせる要素もそこかしこに散りばめられている。インディーズ時代の『Beach Party』も似た路線でしたが、比べてみるとバンドの成長がわかります。「ときめいたら そこへゆけ」「オウイエッ!」これで十分なんです、ほんとに。

ピロウズオブザイヤー

今年はなんと一度もピロウズのライブに行ってません。なんという。そもそもライブ自体、マイウェイマイラブしか行ってないんですけれど。そんな僕がピロウズオブザイヤーなんておこがましいんですが、『GOOD DREAMS』というアルバムの曲をよく聴いてました。残念なデキであるアルバムの中に(あくまで僕個人の意見ですよ!)、光る曲がちらっとあります。「オレンジ・フィルム・ガーデン」とか、地味にいい曲ですね。ちょっと歌詞がさわお的言葉遊びでこねくり回してあるのがイラつきますが(イラつくって何様か・笑)。ダサカッコイイを目指すと普通にダサくなってしまう『smile』以降のピロウズで、この曲のギターフレーズは成功している部類ではないかと思います。なのでオブザイヤーは「オレンジ・フィルム・ガーデン」で。「焦る僕をからかって / うまく話せない」。サビの歌詞はいいんですよねえ。「現実逃避グローリー」って何言うてますのんっていうだけで。

終わりに

やはりスーパー長くなってしまいました。最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。ゲーム・漫画・音楽、今回紹介させていただいた中のどれかひとつでも、興味を持ってくださったのなら幸いです。今年もまた、良いものにたくさん出会えますように。それでは。