Pixies 『 Trompe le monde 』

mikadiri2003-12-20

ついに話はピクシーズ最後のオリジナル・アルバムへ。この作品のマスタリングをブラック・フランシスという自己中デブが独善的に行ったことがメンバー間の亀裂を決定的なものにし、彼らは空中分解してしまいます。本作の邦題は『世界を騙せ!』。ドッキリだったらよかったんですけどねえ。
さて、肝心の内容ですが、そんなにひどくはないです――というか凄いテンションです。「これが最後だゴルァ!」とブラック・フランシスが皮下脂肪を震わせて叫んでいるよう。「Trompe le monde」のやけに澄んだ歌声は少し不気味な部分もありますが、美しいことに間違いは無い。「Planet of sound」の尋常ではないテンションはピクシーズが唯一無二のバンドであったことを知らせています。他にジーザス・アンド・ザ・メリーチェインのカバーや、「U-mass」「Letter to memphis」といった佳曲があるのに、このアルバムの影がいまいち薄いのは、やはりブラック・フランシスの暴走に原因があるといえましょう。ピクシーズというよりは彼のソロ・アルバムみたいになってしまっているのです。キム・ディールのコーラスやベースが殆ど聴こえないのが何よりの証拠。解散寸前って感じがひしひしと伝わってきます(とはいいつつもリアルタイムで聴いたら無邪気に『カコイイ』とかいって興奮してそう)。
とにかく、ピクシーズは解散しました。たった4枚の、しかし物凄いロック・アルバムを残して。『世界を騙せ』という捨て台詞が、バンドのメンバーすら信じることができなくなったブラック・フランシスの「道化を演じてやろう」という悲痛な叫びに聞こえてなりません。