Tom Waits 『Closing Time』


クロージング・タイム

鬼才トム・ウェイツ、73年発表のファースト・アルバム。朝っぱらからトムさんのしわがれた、しかし味のある声に浸っています。なぜいきなりこんなものを引っ張り出して聴いているのかというと、Ein Besseres Morgen(http://tokyo.cool.ne.jp/abt/)というサイトの「狂乱」というコーナーに置いてある「3分44秒でわかる『帰ってきたドラえもん』」と名づけられた映像作品に、このアルバム収録の「Old Shoes(&Picture Postcard)」という曲が使われているからなのです。「3分44秒で〜」という作品の破壊力はそりゃ凄まじく、見る前に少し覚悟はしていたのですが、やはり堪えきれずに泣いてしまいました。劇場版『帰ってきたドラえもん』の、ドラえもんのび太のもとを去るまでのシーンを(つまり『さようなら、ドラえもん』部分を)絶妙な編集で繋ぎ合わせ、バックに流れるのはアコギ一本で「さよなら、君の涙も僕を引き止めることはできない」と唄うトム・ウェイツ。反則的に最高のコラボレーションヌです。アニメ版のドラで泣くことはないはず、と思っていたのになあ。『帰ってきたドラえもん』のビデオかDVDが欲しくなってきましたよ。いいもの見た。(実栄さん、先日はどうもありがとうございました。多謝!)
トム・ウェイツの話というよりドラえもんの話になってしまいましたけど、このアルバムには「Old Shoes(&Picture Postcard)」以外にも名曲がずらずらと並んでおり、文句なしの傑作になっています。ボブ・ディランあたりを好きな人には――というか「いい音楽」を求めている人全員に、自信を持ってオススメできる。トム・ウェイツといえば一般的には『Rain dogs』なのでしょうが、僕はなぜか『Closing Time』のほうしか持っておらず、これまた妙なところでドラえもんと繋がってしまったものだなあ、と感慨に耽ってみたり。
最後に、「Old Shoes(&Picture Postcard)」の歌詞の拙訳を。自己満足で申し訳ない。

終わりがきた歌を唄わせてくれ*1
もうずいぶん昔に作ったやつなんだけど
今となってはうまく唄えるかわからない
君の笑顔を見ると泣いてしまうのがわかっているから


だから さよなら 僕は行かなきゃ
君の涙も僕を引き止めることはできない
太陽のように輝く君の瞳も見納めだ
キスしよう、そしたら行くよ 戻らない


いつも言おうと思ってた
出会ったときの魔法は消えちゃったんだ、って
君の瞳を見るたびに
僕は心で泣いていたんだ
あの輝きをもう一度探そうとしたんだけど


さよなら 僕は行かなきゃ
泣かないでくれ、お願いだ
君を悲しませようとしているんじゃない
キスしよう、そしたら行くよ 戻らない

*1:I'm a singin' this song 'cause it's time it was sung.
すんげえ悩んだ挙句かなり意訳しました。