朝焼けの地平線なんて見たことない


echo
MO'SOME TONEBENDER 『echo』


モーサムトーンベンダーっていうバンドがどんなバンドなのかを説明しようとするとかなり困ってしまって、犬のお巡りさんのコスチュームをどこからか拝借してまで困ってしまって、ワンワンワワンと呻きだしてしまうのですが、一つだけ確実に言えるのは、「各アルバムに少なくとも一曲は、聴くと必ず小便が漏れてしまうくらいとんでもねえ曲が収録されている」という、僕の主観に拠った厳然たる事実ですね。厳然たる主観というのもよくわからない言葉だけれども、とにかくそうなのです。冒頭に掲載した写真はモーサムがインディーズ時代に発表した『echo』という作品のジャケットです。ライブ音源とスタジオ音源が混在した、なかなかいい意味で荒っぽいアルバム。これの4曲目、つまりタイトルナンバーなのですが、「echo」という曲ですね、これがもう本当に聴くたびに失禁してしまいそうになるくらい素晴らしいのですよ。控えめにディレイのかかったアルペジオ・ギターが、静寂と同居するかのように静かに鳴り、それでいて初冬の風のような切れ味を持っており、このイントロは「最初の一音で周りの景色を変える」というモーサムのコンセプトをそのまんま体現してます。これだけでごはん四合はいける。そして中盤での轟音への展開。ライブでまだ一回しか見たことがないのですが(人がほとんどいないCLUB QUEだった)、そのとき、僕は確かに失禁していたのであります。曲を終えた彼らがギターを投げ捨てて袖へ引っ込んだあともパンツを替えた覚えはありませんが、替える余裕も、また必要もなかったのです。音の波にただただ溺れていればいいのです。僕らはただ濡れていればいい。ロック、って何? という答えのない問いに、答えを出そうとしているバンドがモーサムトーンベンダーであるといえるかもしれません。いや、むしろギターを振り回して身体を振り回して前も後ろもわからなくなって「答え」さえふっ飛ばしてしまうかもしれない。