COUNTDOWN JAPANのレポ的なもの

僕はなぜ、南浦和にいるのだろう。僕はなぜ、越谷市ではなくさいたま市にいるのだろう。僕はなぜ、自分の家に帰っていないのだろう。ここは誰? 僕はどこ? 寒さに肩を震わせながら、僕は時刻表に訊いた。時刻表は表情一つ変えずに「本日の武蔵野線下り電車は終了いたしました」と言った。終了? 僕はまさか時刻表が冗談を放つとは思っていなかったので、不意を突かれて大笑いしてしまった。終了だなんて、ははは、そんな、嘘をつくならつくで、もうちょっとうまくやって欲しいものだ。僕が笑いすぎて呼吸困難を起こしつつあるときも、時刻表の表情は変わらなかった。僕はだんだん冷静になってきた。少し情報を整理してみよう。ここは、武蔵野線南浦和駅。僕の最寄り駅は、武蔵野線南越谷駅。南越谷方面の電車は終了しているらしい。沈黙。放屁。異臭。沈黙。咳をする中年男性。ホームの掃除をする駅員。沈黙。「ええと、」と僕は恐る恐る口を開いた。「つまり、僕はもう家に帰れないということですか?」 数秒の静寂のあと、時刻表は「本日の武蔵野線下り電車は終了いたしました」と言った。僕は「アイヤー」と小さく叫び、直立不動の姿勢で勢いよく転倒した。ホウキを持った駅員がこちらをちらりと見た。寝過ごしたのだ。


それが八時間前の出来事。というわけで始発で帰ってきましたよ! いやはや焦った。だって駅前に何もないんですもの。あるのは溶けそこなった雪の塊だけ。さんざん歩き回ってファミレスを見つけ、隣接したコンビニで「週刊ベースボール」を購入し、それを蝶・熟読することで時間を潰してました。戦力分析で横浜が酷評されてました。悲しみに明け暮れました。いや、そんなことはどうでもいい。カウントダウンジャパンですよカウントダウンジャパン。行ってきました幕張メッセ。先日の雪模様が嘘だったかのようにポカポカとした陽気の中、会場への道を独り歩き、僕を出迎えてくれたのは「WELCOME TO OUR ROCK'N ROLL UNIVERSE!」と書かれた巨大な看板。さすがロッキング・オン。苦笑を通り越してここまで来ると尊敬できる。無駄にテンションがあがりました。記念撮影をするカップルの横を微笑を浮かべて通り過ぎ、会場へ。酒を飲んだり、飯を食ったり、煙草を吸ったりしているうちに、まず最初のお目当てバンドの時間。

ZAZEN BOYS

僕はこの人たちを見るためだけに7000円を払ったと言っても過言ではありません。向井秀徳アヒト・イナザワという、ナンバーガール解散を経ても一緒にバンドを続けてきた盟友が、この日を最後に別れてしまうのです。どうして見ないはずがあろうか。「FENDER TELECASTER」のイントロで始まったライブは、そりゃもう凄いものでした。向井のテンションヌが、尋常ではない。ステージ上であれほど阿波踊りを踊り狂う彼を、僕は見たことがありませんでした。このライブを最後にZAZEN BOYSを脱退するアヒトも、負けず劣らず千手観音。僕の気のせいかもしれませんが、今日のセットリストはアヒトのドラムが目立つ曲が多かったような気がします。というか、ZAZENの曲のほとんどでアヒトは目立ってるんですけれども。「COLD BEAT」のドラムソロで、アヒトを煽る向井。鬼のような速度でドラムを叩き続けるアヒト。くおお! 何より圧巻は「開戦前夜」ですね。ライブだといつもとんでもないことになる曲ですが、今日はいつも以上にとんでもなかった。これほど緊張感のある演奏はなかなか聴けるものじゃありません。ビシビシと耳を打つ「即興的な理系バンドサウンド」。どんだけスタジオ入ってんだこいつら。
ライブ中、「ドラムス、アピート・イナザワンティ」のコールが向井の口から発せられるたび、ライブに集中せねばと思いつつもセンチメンタル過剰になってしまったりもしていました。もう向井の曲を演奏するアヒトを見ることはできないのだ。嗚呼。その後も「自問自答」「半透明少女関係」と、素晴らしい演奏を見せてくれました。時には圧倒され、時にはノリにノリにノった。いいライブでした。ただ一つ、音の混ざり具合が個人的に気に入らなかったので、「PA関係者出て来い!」とドスをきかせたくなったのですが、そんなこたあどうでもいいですね。イナザワさん、お疲れ様。美味しいビールを飲んでください。そして願わくば、そのドラムをまたどこかで僕らに聴かせてください。そういや、終盤にやった阿波踊り音楽って、「ヤジキタ」用の曲なんでしょうかね。それとも単なるセッションの一部? とても踊れた。

  1. CRAZY DAY CRAZY FEELING
  2. 安眠棒
  3. MABOROSHI IN MY BLOOD
  4. IKASAMA LOVE
  5. COLD BEAT
  6. 開戦前夜
  7. 自問自答
  8. 半透明少女関係

Polaris

ステージを移動し、ポラリスへ。僕が着いたときには既にライブが始まっていたのですが、ゆらりゆらりと身体を動かしてたらだんだんウトウトとしてきてしまいました。深夜バイト明けで睡眠不足ってのももちろんあるでしょうが、それ以上にポラリスサウンドの心地よさが原因だったと思います。ゆりかごに乗ってプラネタリウムでも見てるような感じ。途中からは目を閉じて、ただ流れる音に身を任せていました。彼らのライブは初体験だったのですが、満足です。カッコイイ。

MO'SOME TONEBENDER

阪神タイガースに「モレル」という選手がおりましたが、彼もこのステージを見たらきっと気づかぬうちに小便を漏らし、まさに「名は体を表わす」な状態になっておったことでしょう。何書いてんだ僕は。まあそれほど凄かったということです。「DUM DUM PARTY」の激しく重いギターリフが鳴り響いた瞬間、僕は少し漏らしました。中盤の静かなパートから再びリフに戻る瞬間、たまらん。そこからは「NO WAY CITY」「ラジカルポエジスト」「BIG-S」と、おいおい貴様僕を殺す気ですか、と言いたくなるような殺人的ロックナンバーの連発。怒涛過ぎて笑う。そして「GREEN&GOLD」。ああん。恍惚。今思い出しても恍惚。この曲は色々な意味で危険です。連れて行かれそうになった。「hang song」もデンジャラスだったなあ。タケイの高速腹筋運動に吹いた。腹筋を鍛えたくなりました。すいません、だんだん頭悪い文章になってます。「アンハッピー・ニューエイジ」では藤田勇の鬼ドラムが炸裂。タム回しが凄い。凄いとしか言えない。ラストは「凡人のロックンロール」。モーサムのライブはいつ見ても異次元的にカッコイイ。ZAZEN BOYSを目当てにこのフェスへ行った僕ですが、個人的ベスト・アクトはモーサムです。僕が「この曲をやられたら漏らすだろうな」という曲のみで突っ切ったモーサム。最高でした。びしょ濡れの下着代弁償してください。

  1. DUM DUM PARTY
  2. NO WAY CITY
  3. ラジカルポエジスト
  4. BIG-S
  5. GREEN&GOLD
  6. hang song
  7. アンハッピー・ニューエイジ
  8. 凡人のロックンロール

100s

リクライニングシートで爆睡。だろう? だろう? だろう? なあ、みんな!(涙)

くるり

ふと目を覚ますと、何やら心地よい音楽が鳴っている。サウンドチェックでもやっているのかと寝ぼけ頭で考えてうつらうつらしていたのですが、ふと我に返り時間を確認すると、あらまあ素敵な時刻。100sはとっくに終わり、二日目のトリ、くるりの演奏が始まっていたのでした。「オ〜ウ、マイガ〜」とファイナルファイト的嘆きをアクションつきで実行するのは容易いことでしたが、今はそんなことをするよりも動け、と急ぎ足でアース・ステージへ。岸田の眼鏡がなかったのと、演奏がジャムだったため、初めは「あれ、これくるり? 俺はもしかして一日中眠っていたのか?」と焦ったりしたんですが、「ワールズエンド・スーパーノヴァ」が始まって一安心。クリストファー・マグワイア脱退後のライブ感想を読んでみると、「スパノヴァやばい」という声があちこちで見かけられ、「どれほどヤバイんじゃろうか」と楽しみにしてたんですが、実際に見てみて、実感。やばい。カッコイイ。音がどんどん広がっていき、会場を包んでました。ドラマーが変わったこととか忘れて身体を揺らしちゃいましたよ。滅茶苦茶長く演奏してたみたいなんですが、そうは思いませんでしたね。クリストファーに代わるドラマーですが、個人的にはくるりに合ってるんじゃないかと思いました。クリさん加入以前にもサポートしてましたしね。キーボードの追加も○。くるりはあまりバンド形態にはこだわらず、曲が要求する音を表現するために色々試したほうがいいと思います。「ワンダーフォーゲル」とか「ばらの花」とかアンコールでの「東京」とか、見所はいろいろあったんですが、僕が一番嬉しかったのは「マーチ」「窓」という『図鑑』からの曲をやってくれたところ。「キター!」と叫びたかったんですが僕ももう成人男性ですから、一応やめておきました。しかしノった。僕とくるりの出会いは『図鑑』なので、思い入れが激しいんですよ。ライブの流れとしては少々モタってる感じが否めませんでしたが、演奏自体はさすがトリといった感じ。いいライブでした。
余談。帰りの電車内で「スパノヴァ長すぎな〜い? 退屈ぅ〜。でもタッシン可愛い〜」とか大声で喋ってる婦女子の集団がおったのですが、あんたらくるりのファンとしてそれでいいんですか、と言いたくなりました。スパノヴァ、素晴らしいと思ったけどなあ。まあ人の好みはそれぞれだしね、でも僕は好きよ、今のくるり。そんなことを考えながら一日の余韻に浸ろうと目を閉じて眠り、そのまま爆睡し、激しく寝過ごして帰れなくなるのですが、それはまた別のお話。いいフェスでした。まる。

  1. ワールズエンド・スーパーノヴァ
  2. マーチ
  3. 新曲?
  4. ばらの花
  5. BIRTHDAY
  6. ワンダーフォーゲル
  7. HOW TO GO
  8. ロックンロール

e.c.

  1. 東京