the pillows 『Ladybird girl』


Ladybird girl


アルバムを発表したばかりだというのに、完全新曲のシングルをドロゥップしたピロウズでございます。突っ走ってますね。諸事情あって昨日ようやく聴きました。ライブでは何回か聴いていましたけど、「ウム、普通の曲である」という印象で、なんでコレわざわざシングルにすんだろーなーなんて思ったりとイヤ〜ンなファン精神を遺憾なく発揮しておりました。ここ最近いつものパターンです。そして実際に音源を聴いて掌を返すのがこれまたパターンなんですが、今回もパターン入りました。最初に再生したとき、有野課長の「パターン入った!」という声が聞こえてきそうなほどのイントゥ・パターンっぷりです。「ウム、普通の曲である」という思いはそれほど変わっていないのですけれど、傾げていた首がまっすぐに戻って上下にリズム取り始めました。良いじゃないのこの曲。「オッサンなのにこんな瑞々しい曲を書くなんて凄い」的風潮がとても苦手なヒネクレ者の僕でも、これは「ワハハ、バカでキュートなオッサンだ」と笑うほかありません。いつまで童貞賛歌書き続ける気だ。いや、童貞賛歌ってのとは違うか。「君に会う理由がないから家で開かない扉を叩く」のがサワオ流童貞ですものね(僕調べ)。普通に青春だ。ディスイズパワーポップだ。
ジャケット写真がとても好きです。メメメメメリケンのポップ・バンドがジャケに使いそうな雰囲気で。てんとうむしな帽子がとてもポップティーンでジッパーですね。そういや「ladybird」っていう言葉が「てんとうむし」を意味するのを僕は知りませんでした。英語力。スケアクロウも知らなかったぜ。英語力。レディーバードガールって頭痛が痛いよなんて思ってました。英語力。それにしても、綺麗な言葉ですね、「ladybird」って。僕は基本的に日本語の美しさが好きですけど、たまにこういうのが英語にもあってドキっとする。コトバってすげえや。
さて、曲の感想を書かせていただきますよ。

Ladybird girl

チャラリラララリーときれいなフレーズから「歌&ギター&ドラム」で始まり、途中でベースが加わり、リードギターは歪み気味のコードを響かせ、階段を駆け上がり屋上に飛び出すようなドラムのフィルイン、そしてバンド全体が走り出す。カッコイイ! この入り方はベタっちゃあベタですが、ベタであるからアガります。音と音の隙間がだんだん埋められていく感じがたまらない。それにしても前奏で既に佐藤シンイチロウが神がかってます。ここ最近の僕の佐藤信者っぷりは半端ではありません。ものっそ普通のエイト・ビートを刻んでいるだけなのに、なぜこれほどまでにイカしているのだ。このスネアの音はなぜこれほどまでに僕の心臓を揺さぶるのだ。わからぬ。フィルインのクレッシェンドぶりも大変に僕好みであります。この曲を聴いているとき、ついついエア・ドラムの仕草をしてしまうのは僕だけではありますまい。おそらく。本当に良いドラマーです。バンド全体でガッといったあとに聴けるリードギター・真鍋氏のフレーズも、シンプルながら水が弾けるようにキラキラしていて、ついつい頬がゆるむ。
「わーすーれーらーれーなーいー」からサビへの移行は野暮ったい感じがします。Bメロらしきものがあるのかないのかわからんままサビにいってしまう、最近のピロウズの曲構成。僕の好みとは少し違うのですよね。平坦というかなんというか。そのせいでサビの印象が薄いままワンコーラスが終わってしまう。かといって、別にBメロが流れとして不自然ではないので(強引にサビに持ってったなとは思いません)、難しいところ。ここはドラムがもうちょっとでしゃばっても良かったのではないか。でしゃばらないのが佐藤氏のいいところなんですけど、あと本当にちょっとだけ、手数を増やすだけでずいぶん良くなる――というか僕の好みにグッと近づきます。僕のために曲を作ってよ!(バカは身勝手なことを言った)
そしてサビです。聴き初めのほうは「もうちょっとメロディーに一ひねりがほしいなあ、そして短いなあ」と思ったりもしましたが、それなりの回数を聴いた今では、このメロディー、この長さがベストなのではないかと思っています。「なにか考えなきゃ」であっけなく終わるのも潔くてカッコイイ。この辺が経験がもたらすバンドの余裕ってやつなんでしょうか。イントロのチャラリララララリーも、若いバンドだともう一小節くらいやってしまいそう。ピロウズはしない。各所で話題沸騰の歌詞ですが、「Is this love? This is love!」と、歌詞カードには「!」マークが明記されているあたりが微笑ましく、かつ適切。彼女への道を一直線にひた走るボーイの気持ちがよく現れてます。「!」の連続なんだぜラブってやつあ。というかこの曲そのものが、恋の「!」を散りばめた音楽になっていると言えます。ギターの音も、ドラムの軽快さも、BPMも、歌も、何もかもが「!」。「!」の集大成、それが青春、そして「Ladybird girl」だ。
そういえば、最後に付けたしみたいな感じになってしまって申し訳ないんですが、鈴木淳のベースがとても良いです。導入部の「ドゥドゥドゥドゥ」はもちろん、ずっとルート弾きばっかりやってると思いきやさりげなくベースラインを変化させるあたりがカッコイイ。最後のサビなんかその傾向が顕著ですね。彼のプレイは「このフレーズが良い!」という目立つものは無いのですけど、ちょっとしたスパイス的に音を動かしてくるので油断できません。散々言ってるような気がしますけど、ミックス担当の人、もうちょっとベースの音量レベルをあげてやってください(笑)。僕はそれなりのヘッドフォンを使っていて、イコライザで少し低音をあげていますけど、それでもあんま目立ってません。鈴木淳に光を!

And hello!

佐藤シンイチロウ先生のスネアばっかりに耳がいってしまうのですが、僕は何かの病気ですか。キレがいいなあ。それはそうと、「窓際の幽霊 目が合う度 / 死んだのはどっち 擦り付け合いで」て、どうした山中さわお。なんかあったのか。「偏見と私見に〜」なんて歌われてもこっちが苦笑いだよ。まあいいや、歌詞の深読みするのはバカらしい。曲がいいからそれでいいのだ。この曲は佐藤シンイチロウのスネアで九割方語りつくせます(過言)。「タンタンタッ!」「ダカッ!」「ダカツッダカツッダッ!」などのフィルインはもちろん、ラストの「タタタタタタタ」も全部、バンド・サウンド的にカッコイイところは佐藤氏のスネアがもっていってしまってる。最後の最後でタムを使ったオカズが左右のチャンネルから聴こえるのがまたニクイ。ドラム練習しようかしら。今日から俺は