漫画バトン

答えやすそうなバトンはすぐに答えるワタシ。放置してるバトンを回してくださった方、ほんとにすいません。バトンといえば、その昔、あれは中学校の頃でしょうか、運動会ってありますね運動会。全校生徒が万国旗の支配下で運動する会。その中に「部活対抗リレー」というものがありまして、その名のとおり、いろんな部活動の部員が万国旗の支配下でグルグル走り回る競技でありまして、剣道部の部長だった僕は当然アンカーで出場しました。よーいドンで愚民どもが万国旗の支配下で走り回り、愚民代表の僕へとバトンが回ってこようとしたちょうどそのとき、応援席から「ミカヂリせんぱいがんばってー」というオナゴの声援が聞こえました。オナゴに声をかけられることなど波平の髪の毛の数ほどもなかった僕は舞い上がってしまって「イエイ頑張るゼイ」という意味合いのポーズを取りました。腕を振り上げてね。その振り上げた腕が前の走者の手に直撃してしまい、オー舞い上がるバトン。出会いはスローモーション。父上様、母上様、ミカヂリはもうすっかり疲れきってしまって走れません。そんな目で見ないでいや見て僕を見てそんな目でもいいから僕を見て。


――何の話だったか。そうだ、漫画バトンだ。

1. 本棚に入ってる漫画単行本の数は?

今住んでいるアパートの本棚にはそんなに入ってませんが、実家の押入れにはなかなかの数のコミックスがありますね。賽の河原における石の塔のように、本が山積みになっております。この間、母がそこを片付けようとしたらしいのですが、手前の塔を少し動かしたら雪崩が起こり、あわれ巻き込まれた母は窒息死しかけ、「全部捨てる! 全部捨てる! あんな本全部捨ててヤリァー!」と思った、というか叫んだそうです。漫画が好きな父は、「おいおい、何も全部捨てることはないだろう」と諌めようとしたのですが、「ヤリヤリァー!」と聞いたことのない言語でわめく母には強く言えなかったそうです。ありがとう、父。


――何の話だったか。そうだ、漫画バトンだ。

2. 今面白い漫画はありますか?

むんこ『らいか・デイズ
若杉公徳デトロイト・メタル・シティ
椎名高志絶対可憐チルドレン


凄くマジレスしております。

3. 最後に買った漫画はなんですか?

椎名高志絶対可憐チルドレン

4. 特別な思い入れのある漫画を5つあげてください

この五つという制限にいつも迷う。迷いまくる。五つラビリンス。なんで五つなんですか。百二十六つくらいでもいいじゃないですか。よくないですか。六万五千五百三十六つくらいでもいいじゃないですか。よくないですか。でっかく行こうぜ、人生は。

川原泉『銀のロマンティック…わはは』
わははとか言ってますけど、これを読むと僕はわははどころか泣きます。普通に泣きます。初めて読んだときは泣き崩れました。何度読み返してもウルウルしてしまいます。危険。川原先生独特の、理屈っぽくそれでいてわかりやすくしかも読みやすい台詞回しに良い意味で振り回される。そして終盤の美しさ。光を見ます。実際「光」が描写されているのですけど、とにかく光る。圧巻。彼女の作品はほぼ全て大好きなのですけれど、どれかひとつ選べといわれればこれですね。
幸村誠プラネテス
ここを昔から読んでる人は「あーやっぱり」とお思いになったかもしれません。しかしこれは外せない。残念ながらリアルタイムで読んでません。バイト先の人に第1巻を貸していただいて、半信半疑で開いてみて、「屑星の空」というお話を読み、びびった。普通にびびった。漫画イズ凄いと思った。漫画という表現の「凄さ」は身にしみてわかっていたつもりだったのですが、それでも衝撃を受けました。そして作者が新人であると知り、これまたビビる。負けていられませんよ本当に。でも『プラネテス』を読んでると、小説という表現手法を使っていることがもどかしくなってくる。漫画に勝てる気がしないもの。後期の「宮沢賢治路線」とでもいいましょうか、登場人物の内面(=宇宙)に深く切り込んでいく作品になってから、けっこう賛否両論分かれるようですが、僕は変わらず好きですね。ちなみにアニメのほうも激・激・オススメであります。
黒田硫黄『茄子』
この人は普通に漫画的天才でありまして、普通に敵わない。雲の上の人間です。『茄子』を選んだのはあくまでタテマエっつーか便宜的なモノで、この人の作品は全て大好きであります。『大日本天狗党絵詞』も『セクシーボイスアンドロボ』も短編も、全て輝いておる。何が魅力かって、そりゃ君、あの、うむ、読め。「絵」でびっくりできる。僕はびっくりしましたよ。そんなに多くの漫画を読んでいるわけではありませんけれど、「漫画表現が一段階上のステップに進んだ」とまで思いました。
藤田和日郎うしおととら
これと『ダイの大冒険』でものすごく迷ったのですけど、僕が選ぼうが選ぶまいがどちらも素晴らしい少年漫画であることに変わりはないので別にいいや、と思ったのでとりあえず『うしお』のほうを。この作品の魅力ってのは既にホウボウで語りつくされているでしょうけどね。とにかく大河です。大河ドラマ。読んでいて、「心の琴線的絶頂」を迎えることが何度もある。涙を流すことも何度もある。十郎兄さんのエピソードとか思い出すだけで別世界に旅立てます。現在連載中の『からくりサーカス』も良い作品ですが、『うしおととら』のレベルには達してないと思う。レベルっつーか、なんだろう、『うしおととら』には“何か”があります。僕の心をわしづかみにする何かが。
藤子不二雄まんが道
ぶっちゃけると「5つ選べ」って言われて後先考えずに候補を立てると速攻で藤子不二雄作品が5つ出てきてしまう、ってくらい藤子不二雄ファンな僕であります。1冊2000円もする中古本を躊躇せずに買ったことすらある。なのに、1つに絞らねばならんのですよね。彼らが生み出した膨大な数の作品から1つ! 難儀だ。でも不思議なことに、「1つ」だけ選び出すのなら、僕はけっこう迷いなく『まんが道』を挙げます。これはA先生の作品で、僕はどちらかというとF氏信者なのですけど、それでも『まんが道』。読むたび、心が熱くなる。一人の表現を志す人間として、「こうしちゃいられんぜよ!」と土佐弁で思う。そんな漫画は、他には日本橋ヨヲコの『G戦場ヘブンズドア』くらいしかありません。まあ『G戦場〜』は現代版まんが道みたいなもんだから、結局のところ、僕の心を強くゆさぶり、それだけでなく身体まで動かしてしまうくらいの力を持った漫画は『まんが道』しかない、ということになります。テラさんみたいに「ばかっ!」と叱咤してくれる仲間が欲しいなあ。藤子不二雄両人はじつに羨ましい。

バトンを回

黙れ!(キレてみる)