ONE MINUTE TO GO

世界中の僕が待ちに待ったゲームソフト『skate3』のデモが配信されている。スケボーにのって街の中でいろいろやるこのゲーム、相変わらずおもろい。2年とちょっと前のこと、スケボーなんて触ったことがないモヤシッ子であり、むしろ駅前でスケボーやってるfanboyどもを脳内で撲殺していたほど“ああいった文化”に馴染みのない僕を、即座にamazon.co.jpへ連れて行き諸々のクリックをさせた『1』の体験版の衝撃といったら! いまだに色あせず「僕史」の年表に太字で刻まれている。2009年度大学入試にも出題が検討されたほどの大事件だった。

実際にスケートやる人(このゲームに触れてからというもの、「スケボー」という表現になんとなくイラつくようになってしまった)にとってもイメージトレーニングに使えるほど、しっかりとしたゲームシステムは言うまでもなくすばらしいのだが、それに加えて「高いところから落っこちてケガの具合を競う」といった“ゲーム世界”特有のバカさも際立っていて、その点も「真顔でギャグ」を身上とする僕の心を鷲掴みにする。バカと真面目の両刃っぷりはまさしく西洋の剣。切れ味はそこそこかもしれないが、ぶっ叩かれてノックアウトされてしまう。「洋ゲー侮りがたし」と感じさせてくれたのが『バーンアウト3』なら、「洋ゲー最高」の域にまで僕の嗜好を変化させたのが『skate.』と言えよう。僕がXBOX360にゲーム舞台を移してからというもの、アホみたいにハマってしまうのはたいがい海外のゲームだ。日本勢にも頑張ってほしいのだけれど、今世代はちょっと元気のない印象である。まあ、その話題は横に置いておこう。
とにかく多くの人に遊んでもらいたいゲームなのだ。しかし今作『skate3』、海外では5月のはじめに発売されるというのに、いまだ日本向けローカライズは発表されていない。前作、前々作ともにXBOX360PS3合わせて1万本売れるか売れないかくらいの実績ではそれも致し方ないのかもしれない。残念なことだ。日本版が発売すらされないようでは、僕がツバをまき散らしてオススメしまくったところで、「せんせー、あの人相当なデシリットルのツバを飛ばしてきまーす」とチクられ、ポリスメンのお世話になるのが関の山だ。ポリスメンは、いやだ。だからエレクトロニック・アーツには踏ん張っていただきたい。いいゲームなのは間違いないのだ。デザインセンスは垢抜けてるし、初心者向けのチュートリアルだってしっかりすぎるほどしっかりしている。「洋ゲーは不親切なうえにクソゲー」なんて過去の過去の話。『コール・オブ・デューティ』や『グランド・セフト・オート』のように、なにかきっかけさえあれば10万本くらい売れたって不思議ではない。「きっかけ」を掴むためには、まず土俵に上がらなければ始まらない。切に望む、日本版『skate3』。僕は海外版を買っちゃうけれども、日本で出たらもう1本買う勢いである。
そういえば新年、というか新年度あけましておめでとうございます。



↑バカ方向に振り切った動画。

こちらは手前味噌ですが僕が作った動画です。はずかしい! でも『skate』普及のためならばなんだってやる。

「銀河」

「まよなか」

彼女は雑誌を読みながら唐突につぶやいた。正確にはわからないけれど、遅めの夕飯を食べ、クラシック音楽をバックにヨーロッパの街並みが淡々と画面に流れるテレビ番組を見たあと、やることがなくなってしまいなんとなく二人して本を読み始めてから、おそらく一時間は経っている。この曲、聴いたことあるな。なんて曲だっけ。新世界より、でしょ。ドビュッシー。その会話を最後に、言葉を交わしていない。テレビから流れる音楽は「新世界より」ではなかったし(それくらいは僕にもわかる)、そもそも「新世界より」の作曲者はドヴォルザークだったような気がしたけれど、あえて訂正はしなかった。テレビのチャンネル権を握っている彼女が、普段好んで視聴する深夜のお笑い番組ではなく、電源を入れて最初に映ったものをそのまま流しっぱなしにしていたのだ。なにかあった? そう無遠慮にたずねるのも気がひける。だいたい、彼女がさっきから読んでいるのは、僕がひまつぶしに買ってきたクロスワード・パズルの問題集ではないか。パズルを読んでどうする。心ここにあらずといった感じだ。

「マーヨーナーカー」

妙な音程をつけて、まるで歌っているように彼女は声を発する。二人用には少し大きいダイニング・テーブルをはさんで向い合っている僕と彼女。これは何だろう。真夜中。確かにそうだ。カーテンに阻まれて見えないが、おそらく外は非常に暗い。蛍光灯から聞こえるジーという音が、やけにはっきりと部屋に響く。これに加えて掛け時計の秒針が控えめにリズムを刻んでいれば言うことなしだが、掛け時計はない。静かだ。真夜中。まちがいない。彼女はしかめ面で頭をぼりぼりとかいた。同時に下唇をうにうにと動かしている。オーケー、と僕は思った。読んでいた漫画を閉じる。ロックスターを夢見る高校生男子の主人公が、初めて入った楽器屋でギターと間違えて三味線を買ってしまう、という目が離せない展開であったけれど仕方ない。「なんだこのGuitar、弦が三本しかねえぜぇ!」家に帰って驚く主人公の顔といったら! “ギター”の発音だけが異様に流暢だというのも笑える。三味線を普通に売っている楽器屋ってのもなかなか――待て、漫画の見どころはいま考察すべきじゃない。オゥケイ、と僕は流暢に、再び思った。ゆっくりと立ちあがる。ズ、ズと椅子の足とじゅうだんがこすれる音。部屋に視線を巡らせる。テレビ、タンス、黒いソファ、部屋干しされた洗濯物、食器棚、そして台所。僕は流しの水切りかごから、しゃもじを手にとった。プラスチック製の、白い、ごく普通のしゃもじ。細い部分を上にして、鼻の下にあてがう。いける。

「ハナミズボーン!」僕はウエスト・サイド・ストーリーのダンサーのように足をあげた。

ぎゃははは、ヤベーよオメーそれウォーイ。外から若者たちの笑い声が届く。でもそれはもちろん、僕の、この、渾身の一発ギャグに対しての笑いではない。ギャハハ、ヒョッホ、ヒィーハァーィーァー……声は遠ざかっていく。僕はいまだに鼻水ジェット団のままだ。彼女は顔をあげ、僕の姿を見た。確かに目が合った。しかしすぐにまた視線を解きもしないパズルに戻す。僕は膝をついた。駄目だったのだ。てっきり、彼女は笑いを求めているのだと、退屈な日常に辟易して、なにか面白いことを体験したいのではないかと思ったのに、それは違っていた。人は誰でも、一生にひとつ、大爆笑のギャグを作れるという格言がある。僕にとって鼻水サイドストーリーはまさにそれだったのだ。ギャグに不足はない。断言できる。突然すぎてうまく伝わらなかったのかもしれない。よし、次は「ハナミズ」で間をおいて、「ボーン」でしゃもじを鼻にぶっ刺してやる。深呼吸。タイミングをはかる。ヒッヒッ、フー、ヒッヒッ、行く!

「ハナミズゥ、ボギャー!」僕はウエスト・サイド・ストーリーのダンサーのように足をあげて激痛に悶えた。そしてそのままひっくり返った。

雑誌のページをめくる音。彼女は笑わない。やはり間違っていた。彼女は面白い出来事を待っていたのではなかった。無念だ。しゃもじを引っこ抜く。「ヒョッ」と声が出てしまう。涙がじわりとにじんできた。痛みもあるが、それだけではない。彼女が何を僕に期待していたのかわからず、応えることのできない自分が情けない。

「なにか面白いことないかしら」彼女は雑誌を閉じて言った。
「うおうい!」僕はひっくり上がった。かなりの勢いで起きあがった、という意味だ。

「さっきからうるさいなあ。近所迷惑でしょ」
「き、近所めめめめ」迷惑だと。僕のブロードウェイが。怒った。僕だって言うときは言う。わからせてやる。
「急にわかんなくなっちゃったの」

僕はしゃもじを彼女の鼻先に突きつけようとした予備動作のまま固まった。声が。彼女の声が、まるでこの部屋にはない掛け時計のチクタクみたいに、ただ、音として真夜中の空気を揺らしたからだ。それきり彼女は何も言わない。なぜ「急にわかんなくなっちゃった」のか、何が「わかんなくなっちゃった」のか、そして僕にどうしてほしいのか。テーブルの上に力なく置かれた彼女の手を見る。手入れされた爪が蛍光灯の光を反射する。僕の顔すら覗けそうなほどに美しく輝く爪だ。指は震えてはいない。こわばってもいない。うつむく彼女の表情は、垂れた髪の毛に隠れて見えない。しかし彼女の両手が僕のいる方向に向けられていることだけは確かだ。
そっと彼女の手をとる。そして僕の鼻の穴の内容物が若干付着したしゃもじを握らせる。彼女は眉根にしわをよせて「ハァ?」と言った。そんな顔をするんじゃない。せっかくの可愛らしい顔面の魅力が半減だ。覚えているかい、付き合いだしたころのこと。二人で夜の街を歩きまわって、ときに走って、笑い合ったこと。君は「そんなん覚えてない」と言うかもしれない。まあ実際あったかどうかあまり自信がない。でも、二人いるだけで、楽しかった。星の数が増えたかのように、夜がかがやきだして見えた。それは今も変わらないはずなのだ。

「行こう」

僕は駆け出した。「えっ、ちょっと待ってよ」彼女の声がうしろから耳に飛び込む。待ってあげない。追いかけてきなさい。飽きるまで追いかけっこをしよう。疲れたらどこかの公園でベンチに座って話をしよう。童心にかえってブランコをこぎながらでもいい。すべり台に登るのもいいな。そして星空を見る。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、両手で数えきれてしまうくらいの、二人の銀河。靴に足をつっこむ。ちゃんと履いてなんかいられない。鍵を開ける。勢いよくドアを開ける。チェーンがつけっぱなしになっている。ドアは中途半端に止まる。スピードにのった僕は顔面をもろにぶつける。彼女の笑い声が聞こえる。

FIRE BOMBER『Re.FIRE!!』

Re.FIRE!!
とにかくビックリした。なにがビックリって、ファイアーボンバーのニューアルバムが発売されていた事実にもだけれど、そのデキがすっごくすばらしく良いことにである。さて、ここを昔から読んでくださっている神様のようなお人は「ああ、またid:mikadiriの悪い病気が始まった」とおわかりであろうが、大半の人は「ファイアーボンバー? ボマーじゃないの? 何言ってるのこの人?」と困惑しきりだろう。無理もない。簡単に説明すると、ファイアーボンバーとは十年以上前に放送された『マクロス7』というアニメに登場する架空のバンドだ。視聴者の印象に残る曲を作中でたくさん聴かせてくれた。『マクロス7』の主人公でありファイアーボンバーのメンバーでもある“熱気バサラ”というキャラクターが所構わず繰り出す「戦争なんてくだらねえぜ、俺の歌を聴け!」という台詞はわりと有名だと思う。つまり、ファイアーボンバーの曲ってのは平たく言ってしまえばアニメソングだ。しかしバサラの歌を担当していた福山芳樹さんによる、パワーに溢れつつも透きとおる歌声には、「そりゃ戦争終わるわ」と思わせてしまうくらいの力があった。少なくとも僕にはそう思わせた。僕はファイアーボンバーに夢中になり、「MY SOUL FOR YOU」という曲を弾きたい一心でギターを練習した(当時の僕はF#mのコードを押さえられずに挫折しまったけれど)。なにが言いたいかというと、ファイアーボンバーは、それまでは「聴く」だけだった音楽を自分で「弾く」、そして「作る」ものでもあると気づかせてくれた思い出のバンドなのだ。曲を作ったりバンドをやったりしてる人には誰にだってそういう“きっかけ”があるものだと思う。それが僕には彼らだった。アニソンだからなんぼのもんじゃい。
で、その特別なバンドの新譜が世紀を超えて届けられ、そのデキが良い、ときた。僕がこんな長文を改行もせずにつらつら書いてしまうほど興奮している理由が少しでも伝わっただろうか。すげえバンドなのだ。……とはいえ、当時のファイアーボンバー楽曲を今聴くと、いろいろ惜しい部分はある。ボーカル部分は文句のつけようがないけれど、バンドサウンドのほうは僕の好みからはかけ離れたものになっていることが多い(「Sweet Fantasy」や「Hello」など、文句のつけようがないアレンジがなされた曲も当然ある)。さて13年ぶり(設定上)のニューアルバムでファイアーボンバーはどんなサウンドを聴かせてくれているのか。気に入った曲をクローズアップして感想を書いていこうと思います。僕以外誰も得しない。でも僕得ならばいいのだ。


熱気バサラなんて知らないけどこの後も読んでみよう、っていうお優しい人のために、新譜の曲を少しずつ聴ける動画を見つけたので貼らせていただきます。よかったらこれを再生しつつ、「ロックイズアライブwww」と笑って読みすすめてください。

01.弾丸ソウル

「弾丸ソウル」て! バカ丸出しすぎる。そしてカッコよすぎるタイトルだ。ファイアーボンバーの新譜一発目としてこれほどふさわしい言葉もあるまい。クレジットを見ると、作詞者はK.INOJOさん。ファイアーボンバー歌詞の多くを担当したお人だ。納得。のっけから150キロ直球ど真ん中のギターリフが最高。ヒネリゼロのフレーズ、でも素晴らしい。ロック! 「BANG BANG BANG 俺の名前は弾丸ソウル」というアホ全開の歌詞に説得力を持たせてしまう熱気バサラ福山芳樹)の歌は相変わらずパワーに溢れている。しかしそれと同等かそれ以上に、もう一人のボーカル、ミレーヌ・ジーナス(中の人はチエ・カジウラさん)のコーラスが素晴らしい。ヘタをすれば男汁全開の泥くさいナンバーになってしまうところに、彼女の声が混ざるだけでファイアーボンバーサウンドになる。唯一無二すぎる。10年以上前と声が全く変わってない(ように僕には聴こえる)のにも恐れ入る。福山さんだって多少の変化はあるというのに。アルバム全部通しても、チエさんの存在感は非常に大きい。

02.Burning Fire

「カモン!」「イエーイエーイエー!」といった掛け合いから、メロコア風のギターへ繋がっていくイントロ。これまでにはなかったパターンだ。アニメの劇中バンドにこんなこと言うのも恥ずかしいけれど、ファイアーボンバーも変化・成長しているんだなと思った。実際は作曲者が昔と変わっただけのことなんだろうけど。それでもあえて、彼らの新境地をここに見た、と書いてしまおう。昔のファイアー曲だとギター=リードギターっていうイメージがあって、リズムギター部分はあまり前面に出てこなかったけれど、この曲は「瞬く星空 切り裂くように/掻き鳴らせ 轟くPower Chord」と歌詞にもあるように、勢いよくパワーコードで突き進んでいく素直なアレンジが大好きだ。よりギターロックバンドとしてのファイアーボンバーが身近に感じられる。バサラの演奏する姿がイメージできる。誰か僕の脳内映像を現実にしてくれないかね。

04.LOVE IT -A.D.2060-

アルバム『LET'S FIRE』に収録されているミレーヌボーカル曲のセルフカバー。「MY FRIENDS」ではなく「君に届け→」でもなくこの曲とは。僕は好きだから大歓喜。とにかくベースがいい感じです。イントロのフレーズをミレーヌが弾いていると思うと、僕は、ボカァ、もう辛抱たまらなくなるぜ。現実を見ろ? 知らないね。ファイアーボンバーのベースはミレーヌなのだ。ギターとの掛け合いもカッコいい。バンドサウンドやで。サビのベースもぐいんぐいん動いててよろし。歌いながらこんなベースを弾くとは、ミレーヌも上手になったなあ。現実? ハハハちょっとなに言ってるかわかんない。

05.ビッグバン

曲が始まってすぐに思ったのが「なんというHUMMING BIRD感!」。クレジット見てみたらやっぱり福山芳樹作曲でした。しかも奥さん作詞。そりゃハミングバードっぽくもなる。福山さんの凄いところは自分でバサラ的な曲を作ってしまうところだ。このアルバムでは弾いてないみたいだけどギターもうまい。まさにリアルバサラである。福山恭子さんもアニメタイアップ楽曲では作品に合った歌詞をバッチリ作ってくる。すごい夫婦です。

06.Ready Go.

ミレーヌ曲、こちらは新曲です。これもまたベースがキマっている。ミレーヌ曲でベースを目立たせるあたり、製作陣はわかっていらっしゃる。しかしなんといっても一番耳に残るのがギターによるファンキーなカッティング! これは身体が勝手に踊りだしてしまう。あの熱気バサラがこんなリズムギターを弾いてミレーヌをバックアップしてる――そう妄想すると、ニヤニヤが止まらない。気持ち悪くて申し訳ないがオタクのサガというものなのでご勘弁願いたい。バサラとミレーヌがこの曲を演奏しながらアイコンタクトしたりなんかしちゃって! ……うむ、自重しよう。でもホント、さっきも書いたけれど、この『Re.FIRE!!』の楽曲は、メンバーがライブ演奏している姿がハッキリと浮かんでくる。サウンドがより現実のバンドっぽくなったことが大きい。やっぱドラムは打ち込みより人力のほうがノリが出ますよ。

09.PLASTICS

なんかミレーヌのことばっかり書いているような気がしてきた。しかしそれも仕方があるまい。福山さんの声は、マクロス7放映終了後もずっと彼の音楽を聴いてきたこともあって、「15年後の熱気バサラ」というよりは「2009年現在の福山芳樹」による歌にどうしても聴こえてしまうけれど(それがマイナスにはたらいているわけでは決してない)、チエ・カジウラさんによるミレーヌ声は当時とほとんど変わっていないので、ファイアーボンバーの新曲としてダイレクトに受け入れることができるのだ。しかも曲自体のクオリティが非常に高い。アレンジもバンドサウンドを意識したカッコいいものばかり。そういえば昔の僕もノリのいいミレーヌ曲が大好きだった(「恋のマホウ」とか「Sweet Fantsy」とか)。この「PLASTICS」なんて、このアルバムでのベスト・トラックと言ってもいいほどのデキ。シングル・カットしたら普通に売れそうだ。「my baby don't care」はビートルズのオマージュかな? 良いスパイスになっている。アニメで使われることがないのがもったいないくらい。もうこうなったらマクロス7の新作を作ってしまってはどうか。僕は全力で見るぞ。

10.突撃ラブハート -A.D.2060-

ついにきた。『マクロス7』を象徴するバカ熱ソング。「俺の歌を聴けば 簡単なことさ / 二つのハートをクロスさせるなんて」。あまりにも直球でかっこいい歌詞。アレンジが垢抜けてて、これはこれでとてもよろしい。テーローレーローテーローレーローっていうギターのフレーズが2000年代のポップ・ロックな感じ。歳をとって丸くなったバンドが過去の代表曲に対して実際にやりそうなアレンジで、「13年ぶりのファイアーボンバー新作」というコンセプトにバッチリ合っている。2コーラスめのサビ前でブレイクせずにドラムのフィルインを入れて畳み掛けるようになってるところも、いい感じに原曲を「破壊」してる。勢いはむしろ増している印象。福山芳樹個人による『FUKUYAMA FIRE』版アレンジもカッコよかったけれど、こっちも僕は好きだ。ミレーヌも一緒に歌ってこその「突撃ラブハート」。

11.MAGIC RHAPSODY

熱気バサラミレーヌ・ジーナスというダブルボーカルを擁するロックバンドの新曲としてはこういうノリノリなデュエットソングもないとね。正統派ハードロックにバサラとミレーヌを混ぜるだけでこんなにもファイアーボンバーになるのだから、声の力は本当にでかい。Bメロのミレーヌパートが出色のデキ。伸びのある声だ。ていうか最初から最後までチエ・カジウラさんを褒め通してるな僕は。「A Real Rock!」つってサビに突入するあたりに、音楽性は全然違うのになぜかピロウズが重なった。なんか山中さわおが「アゥリアルゥロック!」と巻き舌でキメているさまが想像できたというか。まあピロウズファンでここを読んでくださっている人はもう既にブラウザを閉じているだろうから(笑)、こんなこと書いてもしょうがないけれど。

12.Waiting for you

最後は福山芳樹作曲のバラードでしっとりと、しかし熱く締める。この人は本当にいい声だなあ。

終わりに

こんだけ書いたならもう全曲の感想を書いてしまえばよかったのではと思わなくもないけど、とりあえずこれで終わります。「ファイアーボンバー新作」の名に恥じぬ、声の力、楽器の力、曲の力、その他もろもろ音楽のパワーがたくさん詰まったいいアルバムでした。マクロス7のファンならば買っても損はないと言い切れる。それにしても、ゲームのタイアップで新曲をひとつ作るくらいなら「あるある」と思えるんですけど、まさか新曲満載のアルバムまで作ってしまうとは。超笑顔で「ねーよ」と言いたい。企画を出した人は本当にマクロス7ファイアーボンバーが好きなんでしょうね。この後も続いていくとうれしいな。
書き忘れてましたけど、ジャケットの絵、美樹本さんによるものだったんですね。クレジット見るまで別の人が描いたもんとばかり思ってました。僕の中の美樹本絵とは印象が違った。でもいいジャケットですね。

the pillows『OOPARTS』(全曲感想)

OOPARTS【初回生産限定盤】
正直全く期待していなかったんですよ。僕のピロウズ熱が2000年代初頭に比べると見る影もないほどクールダウンしていることは自覚していました。それでも日本武道館での20周年記念ライブを見に行けば、少しはフィーバーをおこして僕周辺の気温が4、5度あがり「地球温暖化の原因になってサーセンwwww」とG8に謝罪する準備までしていたのに全くそんな必要はなく、「アニバーサリーなライブというよりは普通のワンマンライブを見たなー」などという非常に冷静な、そしてピロウズファンとしては寂しい感想を抱くだけで、これまでか、僕とピロウズのあいだの特別な関係は消えてしまったのか――ああピロウズ子、僕と君はもうやり直せないのかい――そんな軽口も叩けないくらいピロウズへの興味は薄れてしまっていました。だから9・16の1ヵ月後に新譜が出ると聞いても冷静と冷静のあいだ状態。武道館のライブがあったからこその反動なのか、前作『PIED PIPER』発売時よりもニューアルバムへの期待値は低かったと言えましょう。……なんだかんだで発売日に購入してプレイヤーにCDをセット、その数分後には全耳に全神経を集中していた野郎がよくほざいたものですよ本当に。カッコいいじゃないかこのアルバム。ピロウズだからといって意識しすぎてはいけませんね。先入観をもって音楽を聴いてはいけないとわかってはいたつもりなのですが、『LITTLE BUSTERS』や『Please, Mr.Lostman』といったアルバムが僕にとってあまりに特別すぎて、どうしてもある種の「枠」をピロウズに対して設定してしまう。バカですよね。んな小難しいこと考えず、単に「好きなバンドの新譜」として聴けばいいだけの話なのにね。2曲目の「YOUR ORDER」で横っ面ぶったたかれましたよ。本当に山中さわおには敵わんわ。でもジャケ写だけは文句言いたい。鉄塔をメインに据えるっていう安直さを嫌ったんでしょうけどやっぱりダセーよ(笑)。


さあ、ピロウズ好きな人もそうでない人も漏れなく置いてけぼりにする全曲感想を書いてみましょうか。

01.Dance with God

再生し始めて流れてきたドラムのフレーズに、「あれ、間違えてギターベイダーのアルバム買っちまったのか?」と思ったのは僕だけではあるまい――と冗談は置いといて、こういう落ち着いた雰囲気の開幕はピロウズにしては珍しいですね。前奏のドラムがカッコイイ。ダカダッダダダダダダの連発で渋く盛り上がっていくところ。いまやピロウズのオハコと言ってもよい二本のペロペロギターフレーズの絡みも味があって良し。開口一番「瞬きなんて忘れちまえよ/乾いた目でオレを見ろ」と歌いだす山中さわおに若干戸惑いを覚えつつ(というか引きつつ)、サビ前の「キュウウウン」ギターに単純に興奮を覚える。カッコイイですよ。ギターソロのとこはソロよりもバックのギター・ベース・ドラムのズンズンくる感じが迫力じゅうぶん。最後「Dance with god!!」って叫んでしまったのがちょい残念か。その辺は人それぞれの好みですよね。僕は最後まで渋くいってほしかっただけで。歌詞全体としては「ちょっとなに言ってるかわかんないです」といった感じ。

02. YOUR ORDER

リーダーズ(もしくはアンプス)風のギターで静かに開幕する曲。ピロウズ流直球ロックンロールですね。音楽を聴くとき、歌詞のことをあまり持ち上げたくはないのですけれど、この曲の歌詞は無視するわけにはいかない。

ニューオリンズから戻った
キミの猫が大人びた顔で
ファッツドミノから習った
ピアノを披露してみせると言う


変だろ 笑うけど この感じ


好きな音を鳴らして
音楽と呼べば良い

久しぶりに山中さわおの歌詞でガツンときましたぜ。思わず歌詞カードを開いちゃいました。前作は歌詞カードに触ってもいなかったのに(笑)。「好きな色を選んで/何度でも混ぜれば良い」とか「嫌いなモノを嫌って/嫌われてしまえば良い」もなかなかクる。最後人生にまで言及しちゃってるのが、長くバンドやってる人間の書く歌詞だなという感じ。個人的にはその一節はいらなかった。曲はポップ丸出しで、ストレートにメッセージが飛んできますね。「アンアンアアンアンアン」だって! 超ポップ。サビ終わりの「ジャーン ジャーン」のコードが、たまらなくカッコイイ。「C」から「F#」にいってるのかな。僕が「オルタナティブ」だと捉えているのはまさにこういう音。ひねくれポップと言い換えてもいいですけど。この「F#」がアルバム全体のハイライトかもしらん。こんな偉そうに書いておいてこのコードが「F#」じゃなかったらまじごめんなさい。

03.メロディー

全曲の感想を書くとか風呂敷広げといて申し訳ないんですけど、この曲は特に書くとこなかった(笑)。

04.Lemon Drops

まだアルバムをガッツリと聴き込んではいませんが、現時点で僕にとってのベスト・トラック。なぜかって、超ド級のポップ・ソングだからさ! 「さ!」って何でそんなにテンションあがってんだって感じですが。バンド全体でガツガツくるイントロ、あまり目立たないながらも確かに曲を彩っているハモリ、これでもかというくらいメロディアスなサビ。ディス・イズ・パワーポップ! Bメロ省いたり、半ば強引にサビへ突入することが多い最近のピロウズに慣れていると、AメロがありBメロがありサビがありっていう王道展開が逆に新鮮になってくる。特にドラムがいい意味で「ベタ」で素晴らしい。Aメロでのハイハット・プレイ、たまりませんな。サビでのライド・シンバルも非常に良い。ギターソロ前のタムもカッコいいし。フィルインもいちいち「そう、それしかないよな!」っていう(僕の)ツボをついたフレーズ。曲のよさを最大限に引き出す佐藤シンイチロウ先生には脱帽するほかありません。ギターソロもオクターブプレイのみで、非常にシンプルながら曲の展開にピッタリなもの。ザ・ピロウズな曲だ。

05.FOXES

ヘンテコリンなギターリフが妙にクセになる曲。色んな音が入ってたりドラムの定位を左右に振り分けたりと音遊びが面白いんですけど、やっぱりこの曲はギターに耳がいってしまう。ギターソロ入り始めに聴こえるチョーキングのエロさといったら! 「チュワイ〜〜〜〜ン」。ムッツリスケベにしか出せない音ですよ。僕が女だったらかなりいかがわしいことになりそうだ。僕は男なので多少股間がいかがわしくなるだけで済みました。済んだのか?

06.Beyond the moon

苫小牧に入港するさんふらわあ号を見た山中さわおがその美しさに心奪われ書いた曲というのはもちろん嘘で、本当は「Lemon Drops」と並ぶ僕のお気に入りナンバー。綺麗なモヤのかかった森を思わせるギターにベースが続き、ドラムのフィルインでパッと一気に情景がクリアになる。そしてツインギター! もうここでノックアウトされちまいました。くわえて歌詞の内容が山中さわお丸出しの究極・後ろ向きソングとなれば、好きにならない理由がありません。自分を三日月にたとえて、「キミ」であるヒマワリとは決して一緒に輝けないと歌っているんですが、「星に励まされ今夜も青く光るよ/振り向かれないけれど」て。振り向かれないけれどて。あっさりと言いやがる。ギターソロから途切れず「涙を見せずに〜」の部分を彩るギターが非常に美しい。三日月君の気持ちがあふれ出してしまったかのようなフレーズ。ラストの「ビューリホーサーンフラワー」もキマってますね。カタカナで書くと非常にカッコ悪いけれども。ちょっと早めのフェイドアウトが残念です。もっと聴かせてくれと。あと5分くらいやってもいいよと。

07.ジョニー・ストロボ

静と動がはっきりして単純にカッコイイ曲です。「一瞬で燃え尽きる流れ星でも/何かを照らしたんだ/ストロボのように」って歌詞がありますが、曲全体がまさにその言葉を表現しているかのよう。シンプルなバンドサウンドの中でちょこっとだけスパイスを効かせているベースのフレーズがいいですね。ギターのアルペジオで終わるのってピロウズにしては珍しい気がする。新鮮です。

08.雨上がりに見た幻

ベストアルバムはおろかシングルさえ買ってなかったので、初めてこの曲をきちんと聴いたのは9月16日、日本武道館でのライブ演奏でした。正直に言うと、あまりピンとこなかったんですよね。「俺らの歴史ソング!」の匂いが濃すぎて。でもライブが終わって、アンコール時のお決まりで客がピロウズの曲を合唱するじゃないですか。もちろん僕はそういう慣わしが嫌いなので顔を歪めかけたんですが、その時流れたスタジオ録音版「雨上がりに見た幻」は、不思議なことにちょっと前ライブで聴いたものより良かったんですよ。「叶ったら/叶ったら」のとこでグッときたりなんかして。ある意味“体温の低い”スタジオ版が僕のテンションにはしっくりきたんでしょうか。「ハイブリッドレインボウ」もテンポが速くてノリノリのライブより、地に足がしっかりついているスタジオ版のほうが好きですしね。何が言いたいかというと、この曲、嫌いじゃないです。

09.LIFE SIZE LIFE(The bag is small,and I don't enter)

さあ皆、アゥイエーの時間だ。にしてもこのアルバムは前置きが長い曲多いな。

10.Primer Beat

「LIFE SIZE LIFE」から間髪いれずに軽快なスネアの音。いいじゃん。アルバムを締めるのにふさわしいアップ・テンポな小品ですね。小品なんて言ったら失礼かもしれませんけど。わざと舌っ足らずに歌ってる山中ボーカルが、なんつーかロックンロール。「黄昏てんだ」のあとのドラム・ソロ&ジャジャジャジャがカッコイイ。サビのランニング・ベースが疾走感をより高めてますな。ジ・エーーーーンド。

終わりに

以上10曲37分のいいアルバムでございました。3分半以下のポップ・ソング目白押し。やっぱり10曲入りのアルバムって好きです。ウィーザーの1stとかもそうですけど、ポップ・ロック・アルバムにちょうどいい曲数ですよ。いい意味での軽さ。自分にとって「特別」である時期のピロウズ作品とはやっぱり比べられないけれど、今のピロウズもやっぱりいいもんです。機会があったらツアーに行ってみたくなりました。久しぶりの更新なのにこんな長くなってしまい、腰が若干痛いです。なぜ腰にくるのか。歳か。TOSHIなのか。そんな僕に1日遅れの誕生日プレゼントをくれたピロウズ、ありがとう。

MEN AT WORK

今日も今日とてラーメンである。さきほど贔屓の店で食べてきた。近ごろ食いすぎている気がしないでもない。なにせ三日で四食ペース、それもほぼ同じ店の同じラーメンを注文するのだから始末におえぬ。このままではいかん。栄養バランスが云々とかそういう問題ではなく、新陳代謝がおかしくなって髪の毛の代わりにドタマからラーメンが生えかねない。毎朝枕元に散乱する抜け毛ならぬ抜け麺をじいと眺め、はあ、俺もそろそろハゲるのかなあなんて暗い気分になりかねない。今日の朝飯はつけ麺ならぬ抜け麺だチックショーなどと腹を満たす羽目になりかねない。美味しい、味をしめかねない。もっと美味しくせねば。さっそくつけ汁の研究を始めねばなるまい。自分だけで楽しむのはもったいないな。ゆくゆくは「正真正銘自家製麺」をウリにしたラーメン屋をオープンしよう。独特の食感が話題になり行列が絶えない店になる。雑誌の取材も来る。「この麺は何をベースに作っているのですか?」「そうですね……言うなれば、僕自身、カナ」「ワア職人発言カッコイイ」「ははっ大げさですヨ」などといったインタヴューが二万字掲載されるのだ。僕らのラーメンは、僕ら自身なのだ――なんてキャッチコピーつけられて表紙まで飾っちゃって。飾っちゃったりなんかしちゃって! フフフフ馬鹿か! 僕はじつに馬鹿か! 麺がドタマから生えてる男が営むラーメン屋なぞ誰が行くものか。僕だって食べたくない。こんなことを書いてたらさっき食べたラーメンすら不味かったような感覚に陥ってきた。ああ麺屋嘉助の店主よ、許したもれ。あなたの作るラーメンはとても美味しい。うどんに喧嘩を売るかのような太い麺を、濃厚な魚介トンコツスープでさりげなく、しかし力強く彩る――ああ、たまらない。お腹はいっぱいであるはずなのに、また行きたくなってきた。ごちそうさま、と伝えたときの店主のはにかんだ顔。微笑もてラーメンを為せ! 爽快な言葉だ。また明日も行こう。

『高校球児 ザワさん』三島衛里

[rakuten:book:13175471:image]
ビッグコミック・スピリッツで連載が始まってから、地味ぃーに読んでいたこの漫画。単行本が出ると聞いて、ふうん出るんだよかったねなどと冷めた反応を示していた僕はいったい何だったのか、発売日に本屋に行って新刊コーナーへ直進していた。ミヤコザワさんという女子野球部員の日常を第三者視点から(作中に登場するミヤコザワさん以外のキャラクター視点)眺める漫画だ。自分で書いてて「あ、そうか」と思ったのだけど、まさに「眺める」だけ。女子野球部員が色々な苦難を乗り越えて男を打ち負かす! 的なストーリーは一切ない。たとえば野球部が練習しているグラウンドの一角にカメラが置いてあって、録画されたものをボーっと見るような感じ。それおもしろいのかいなと問われれば、わかりませんと答えるほかない。萌えとはなんか違う。フェチがどうとか宣伝文句にあったけど、それもしっくりこない。もちろんミヤコザワさんという女子野球部員がフィーチャーされてなかったら、作品の魅力は半減していただろうけど。「この漫画の一番の魅力はこれです!」っていうのが浮かんでこない。最近の僕が好む漫画ってそんなのばっかり。歳をくったせいだろうか。『らいか・デイズ』にしろ『ひなちゃんの日常』にしろ、これこれこう面白いから読んでみて、という勧め方ができない。まー、おれは好きだけど。くらいのテンション。その辺歩いてても色んな人々が織りなすなんでもねー光景にふと心を打たれたりするし、ただ僕が他人の日常マニアなだけか。って書くと変態度が大幅にアップして困った。